大友良英 & Kenny Millions  「Without Kuryokhin」(1999)

 電子音のカットアップと軋むサックスの荘厳かつ無機質な即興。ビート性は剥ぎ取られながら、ミニマルな電気仕掛けの小節感がうっすら漂う。

 ロシアの前衛ジャズ・ミュージシャン、セルゲイ・クリョーヒンの急逝を追悼して、96年のモスクワおよびサンクトペテルブルクで本盤の二人はライブを行った。
 本盤はその時の音源を主に大友が編集。クレジット上はモスクワ音源のみが使われている。
 
 基本はサックスとターンテーブルのデュオとなる。全7曲中、5曲の音源を大友良英がミックスした。
 楽曲ではなく、インプロが続く。断続的なカットアップのターンテーブルに、無秩序なサックス。欧州的なアプローチながら、どこか肉感さが残るサックスが、アメリカ人らしい音楽だ。

 サックスのKenny Millions(a.k.a. Keshavan Maslak)は、60年代から活躍するベテラン。大友のターンテーブルに釣られ過ぎず、奔放にサックスを軋ませた。編集のせいかもしれないが、メロディ感や流れは希薄で断続的に音が流れる。
 本盤の全体像は、コラージュめいた解体と断続を提示した大友の色合いが非常に強い。

 クリョーヒンの急逝が無ければ、そもそもは本盤の二人に彼も加えた3人での日本ツアーが計画されていたという。本盤のターンテーブルには、クリョーヒンの音も使われたのか。 

 追悼デュオ・ライブにおける実際の様子は22分余りの長尺な(6)で聴ける。
 そこでは抽象的ながら、音像の流れが確かにあった。生演奏ならではの、ひとつながりな時系列があった。
 最後はサックスとともに、男が弾くピアノと歌うロシア風の演奏がひとしきり流れる。これがクリョーヒンの音源か。

 ともあれライブ音源へ、大友が強くコラージュ性を載せたさまが興味深い。
 大友は音像の全体へノイズに加えて、ターンテーブルを駆使した異質な日常性とビート感を付与した。
 フリージャズの勢いでも、即興のダイナミズムや神秘性でもない。エレクトリックなループ性を持つノイズで、ノービートな音像に奇妙な時間構造と電気仕掛けの小節感を足した。

 このアプローチがクリョーヒンへのオマージュなのか、当時の大友のアプローチかは知識不足でコメントできない。
 少なくともライブ音源の録って出しにとどまらぬ、新たな価値観を大友のリミックスが産んだと言える。ノイズと時系列の断続性がリミックス音源の全編にわたって貫かれた。
 率直なところ、Millionsは音素材の一つであり、かなり大友の色が濃いサウンドだ。ターンテーブルのサンプリングにとどまらず、大友に寄るハーシュ・ノイズがばらまかれるシーンもある。
 追悼盤と先入観持って聴いてるせいもあるが、音像の全体は物悲しく切ない。ともかく良質なノイズ的ジャズとして味わえる盤。

Track listing:
1 Live & Remix 1 9:04
2 Live 1 3:31
3 Live & Remix 2 0:53
4 Live & Remix 3 6:03
5 Live & Remix 4 3:57
6 Live 2 21:59
7 Live & Remix 5 3:59

Personnel:
Producer - Nick Dmitriev
Remix - 大友良英 (tracks: 1, 3 to 5, 7)
Saxophone, Clarinet, Voice, Guitar [Miniature Guitar], Composed By - Kenny Millions
Turntables, Electronics, Sampler, Edited By, Mixed By, Composed By - 大友良英

Recorded live at Central House of Artist, Moscow on November 5th, 1996
Edit and Re-mix at A-102 Studio in Tokyo on February-March 1998

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