Mazarati 「Mazarati」(1986)

 "Kiss"を取られたローカルなファンク・バンド。ミネアポリス・サウンドでありつつP-Funkの影響も強い。

 "Parade"の製作時期に並行して録音された。レボリューションズのベーシスト、ブラウンマークに音楽を教わってた学生連中のバンドらしい。
 通説ではプリンスが本盤へ"100 MPH"を提供し、"Strawberry Lover"と"I Guess It's All Over"の作曲に協力、と言われる。ただし真偽は怪しいのが、当時のプリンス。実際、クレジット上は"Strawberry Lover"と"I Guess It's All Over"にプリンスの名前が無い。
 
 プリンスは当時、イケイケの真っ盛り。体力充実、膨大な仕事をこなしてた。本盤を聴いててミネアポリス・サウンドがドップリだが、プリンスにしては大味だなって思う曲がほとんど。
 しかし別の曲でも(4)のシャウトの感じや、(5)の乾いたギター・カッティング、他の曲でも鍵盤のちょっとしたニュアンスへプリンスの色も感じる。

 クレジット上は作曲、プロデュースはブラウンマーク。エンジニアや共同プロデュースにDavid Zの名前あり。プリンスの身内で揃えてる。
 そもそも当時、マザラティがプリンスの影響なしに演奏は不可能だ。ブラウンマークの影響だって強かろう。程度の低いから、これはプリンスではないと決めつけるのもしっくりこない。
 実際、プリンスにしては詰めが甘いのだれど。いやいやしかし、プリンスだって完璧じゃあるまい。・・・妄想はきりがない。

 さて、本盤。プリンスは"Kiss"を提供した。しかし出来栄えを聴いて、引き上げて自分のアルバムに入れてしまったのは有名な話。
 "Kiss"のマザラティ版が流出してる。いかにも野暮ったい。これをスルリとクールにまとめたプリンスの手腕はさすが。マザラティのテイクなら、ここまで歴史を超えた名曲と言われなかったろう。
 しかし2番でのハーモニーのタイミングがプリンスの版と全く変わらない。これも書き譜状態まで煮詰めたデモで、マザラティは製作してたらしい。しかしギターソロはいまいちしょぼい。これはプリンスじゃなさそう。

 他にも"Jerk out"も提供したが、マザラティ側がボツらせたらしい。贅沢な話だ。この曲は4年後にThe Time"Pandemonium"(1990)に収録された。意外とプリンスはこういうふうに、過去の曲を無駄にもしない。
 マザラティの"Jerk out"デモは流出あり。ハーモニーはプリンスだがリズムは打ち込みでまさにデモの音だ。

 となると、プリンスも当時のマザラティに対して、完全なる支配はしなかったのか。スタイリッシュでシンプルな"Parade"への移行や"Under the cherry moon"の製作など多忙を極めて、どうでもよかったのか。
 ならば"Kiss"を引き上げる前に、マザラティの録音を聴く暇は、どこにあったんだって気もする。

 マザラティの演奏技術は意外としっかりしてる。エイトビートとホーン隊をシンセで代用するミネアポリス・サウンドはそのままに、フレージングや展開のノリにP-Funkの雑駁さもあり。
 むしろプリンス作の(3)のほうが違和感ある、華やかなプリンス流ファンクだ。ボーカルから何からすべて作りこみ、カラオケ状態でマザラティへ渡したのがありあり。

 (3)はPVが存在する。ハーモニーにもプリンスの声が一杯だな。The Time式に傀儡状態でマザラティが本曲に声を足しただけなのが、ありあり。マザラティの当時のライブ映像もあった。演奏はしっかりしており、野暮ったいがきちんとこなしてる。
 

 本盤から(1)(3)(5)がシングル・カット。(3)と(5)のB面はアルバム未収録だった。(1)のB面は(8)だった。
 (3)のB面がこちら。洗練されつつ、プリンス的なファンクネスが滲む。喉を絞るシャウトってプリンス流そのまま。ようはこういうスタイリッシュな色合いがブラウンマークの特徴かも。

 これは(5)のB面。シンプルで爽やかなフュージョン風のインスト・ファンクだ。さっぱりしてて悪くない。これも70年代のプリンスが作った曲でもおかしくは無くもない。あまりプリンス臭はしないけど。


 なおマザラティはこの4年後になんとモータウンへ移籍し"Mazarati 2"をブラウンマークのプロデュース/作曲でリリースし活動停止した。
 2ndは未聴だが、A面1曲目の音源をYoutubeで見つけた。この曲だけの印象だが、プリンスの色を脱して、キャメオ風のメロウさが強まって聴こえる。


 逆に1stはプリンスの色があまりに強い。
 本盤も2ndもCD化はされたが、廃盤が長くレアな状態になっている。隠れた名作とまでは言わないが、入手しづらいってのはいかん。伝説ばかりが先走る。聴いたら「こんなもんか」って拍子抜けもつまらんし。

 契約の問題あるとは思うが、B面のレア・テイクやデモも全部まとめて、サクッとリイシューして欲しい。
 ちなみにマザラティは2009年に再結成。きりがないのでこの動画だけにするが、細かくYoutubeを検索すると他にもいくつか再結成マザラティの映像がある。しみじみ、今は恐ろしい時代だ。知識が情報量に追いつかない。


Track listing:
1 Players' Ball 4:40
2 Lonely Girl On Bourbon Street 4:46
3 100 MPH 7:23
4 She's Just That Kind Of Lady 4:31
5 Stroke 4:30
6 Suzy 4:28
7 Strawberry Lover 5:30
8 I Guess It's All Over 4:56

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