Acid Mothers Temple & The Cosmic Inferno 「Pink Lady Lemonade ~ You're From Outer Space」(2008)

 代表曲であり素敵な名曲をテーマに、自由かつ奔放に展開した傑作。剛腕炸裂路線を少し抑え、穏やかな揺らぎを丁寧に表現した。

 本盤は前作"Journey Into The Cosmic Inferno"と同時期の音源で、ピカチュウが参加した編成でのスタジオ盤。アシッド・マザーズ・テンプルが95年の稼働初期から演奏してる、代表的なこの曲を全面的に取り上げた。

 テーマとなった"Pink Lady Lemonade"はAMTのレパートリーで、ひときわメロディアスで寛いだ名曲。酩酊感が溢れ、鮮やかで柔らかい世界が広がる。シンプルな二つのメロディが上下する一方で、加工するアルペジオが静かに聴こえたり、ディレイで揺れる風景がサイケデリックだ。チルアウトの穏やかさと、エレキギターが炸裂する激しさの双方を吸収する、ほんとうに素敵な曲。

 宗家の08年3月米加ツアー"Recurring Dream And Apocalypse Of Darkness Tour in US & Canada 2008"と同年7~8月にこの地獄組で"Hotter Than Inferno UK Tour 2008"の合間にレコーディングされた。
 AMTのWebにあるライブ履歴によれば、05年の地獄組結成から年に1回はきちんとツアーも含めて本ユニットを稼働させている。

 本盤は"Pink Lady Lemonade"でサンドイッチする格好で、大きな一つ流れを作った。しかし一筋縄ではいかないアレンジ。(1)は冒頭のギター・カッティングは、言われたら"Pink Lady Lemonade"ながら。ピカチュウの多重ボーカルをフィーチュアして、明るくポップに進行する。ボーカルではゲストでAudrey Ginestetも参加した。

 (1)は小気味よい切り込みで、表題曲を解体し世界観を広げた。おもむろに現れるギター・ソロ。カッティングは並行して続く。ソロをダビングというより、ギター・リフをループさせてアドリブを弾いてるかのよう。
 そしてひとしきりのギター・ソロのあと、アップテンポで素晴らしい"Pink Lady Lemonade"のリフが現れる。ピカと志村のツイン・ドラムは軽やかで、ベースがカウンターで動きながらシンセが静かに漂う。ふんわりとAMT世界を鮮やかに描いた。
 そのまま歪んだギター・ソロに向かう。河端のセンスが美しくもかっこいい。

 充満するエレキギターのきらびやかな独演アンサンブルでスルリとフェイドインした(2)。やがてジャムに突入するが、逼迫感は希薄。どこかリラックスしたムードを香らせる。
 バイオリンめいた音色なギターのリフはミニマルで、"Pink Lady Lemonade"と通底した路線を走った。

 (3)は歌モノっぽいフォーキーな曲。リバーブ感やシンセのきらめきがニューヨーク・サイケな味わいだ。開放的な演出ながら、完全な能天気に振り切れず。どこか冷静な視点と、ほんのり影ある楽曲のセンスが西海岸に留まらない。
 ばしゃばしゃとザラついたシンバル・ワークが荒く空気を刻む。ここでもシンプルなリフの進行が酩酊感を誘った。

 そして最後の(4)。冒頭からちょっとテンポを落とした"Pink Lady Lemonade"。初手からムードが完成されており、小細工無しでまっとうに表現した。表題を連呼する展開から、猛然たるサイケなギター・ソロへ。激しい展開ではあるのに、ミックスのせいか太っ腹な余裕あり。性急さややけっぱちでなく、懐の深さを感じた。
 数本のエレキギターが暴れ倒し、吼えまくる迫力が凄く聴きものだ。

 とにかく本盤は、アルバムの構成がばっちり。個々の楽曲を成立させながら、まさにトータル・アルバムな仕上がりで滑らかな流れを作った。 

 なお本盤と呼応するような形で本盤の3年後に、宗家名義にて"Pink Lady Lemonade ~ You're from Inner Space"(2011)もあり。
 

Track listing:
1 Pink Lady Lemonade - You're From Outer Space (Part 1) 24:07
2 Message From Outer Space 17:59
3 Take Me To The Universe 10:48
4 Pink Lady Lemonade - You're From Outer Space (Part 2) 10:56

Personnel:
ピカチュウ : drums, voice, cosmic shaman
田畑満 : bass, voice, maratab
東洋之 : synthesizer, dancin’king
志村浩二 : drums, latino cool
河端一 : guitar, voice, speed guru

Audrey Ginestet : voice, cosmos

Recorded at Acid Mothers Temple, February 14-17, June 4-12 2008.

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