Godspeed You! Black Emperor 「Slow Riot for New Zero Kanada」(1999)

 じっくりと重厚なポスト・ロックを広げるEP盤。

 カナダのゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーが99年にリリースした2枚目のEP盤は、評価が高いらしい。何のタイミングで彼らのことを知ったろう。ぼくはいわゆるポスト・ロックって苦手で、あまり知識がない。"f#a#∞"(2000)をリアルタイムに聴いたが、全くピンと来なかった。
 だがアシッド・マザーズのあとに本盤を聴くと、妙に耳馴染みが良い。サイケ・インプロの文脈で耳に捉えればいいのだろうか。もっと理知的でプログレ寄りなのがポスト・ロックな気もする。

 こういう音楽を聴いてると、自分の趣味が分からなくなってくる。いわゆる初期衝動いっぱつのパンク的な音楽よりも、ぼくは上品に飾られたほうが好みと思っていた。だが本盤を聴くと、まだ頭でっかちに整いすぎた風にも思えてしまう。比較対象がAMTだけども。
 かといって今回、聴き返したら思った以上に楽しめた。聴きようによって音楽はずいぶん自己評価が変わってしまう。

 本盤は"f#a#∞"のあとにリリースしたEP盤。ツアーの空き時間にできたアイディアを曲にまとめた、とある。全2曲のシンプルな構成だ。各曲はソコソコ長い。LPには中途半端な長さのため、EP盤としたのだろう。もう数分、(1)を伸ばせばLPになったのに。この辺の微妙な時間間隔の潔さも、コンセプトか。

 ゴッドスピードは9人組の大所帯だが、あまり大勢いるって感じがしない。なんだか端正に楽曲が進んでしまう。ライブを見たら印象は変わると思うが。
 じわっと重たい音がおごそかに表れて、高まっていく。炸裂しそうではじけないところが、なんとももどかしい。この焦らし戦法こそが、彼らの味わいなのかもしれないが。

 サイケと捉えるには理知的で、プログレと括ってもいいが、少しばかり線が細い。シンフォニックに聴けないこともないが。
 個々の音は歪みも無く分離良く並べられた。整然と曲が進みながら、即興要素も若干あるような。ソロ回しではないけれど、役割分担をそれぞれ持つように、全員が同時に音を爆発させず、淡々とアレンジが変化していく。どこまでが譜面だろう。
 (2)は思い切りテンションを溜めた上で、がつんとバンドが弾けた。そのままカタルシスには行かない。
 終わりと思わせて最後は弦が高らかに響き、クラシカルな世界が端正に描かれた。

 なんともじっくり音世界を紡ぐ世界観だ。もっとスピーディな場面展開をしないこと、そのものがコンセプトなのだろう。

 うーん。やはり僕はまだ、このバンドの魅力をきちんと味わえてない。我慢して知らない音楽を聴き続けるには、すでに僕は歳をとりすぎた。聴きたい音楽は他にもいっぱいある。けれども分からないまま人生を終えるのは、やはり何か悔しい。

Track listing:
1 Moya 10:51
2 BBF3 17:45

Personnel:
Thierry Amar — bass guitar, double bass
David Bryant — guitar, tapes
Bruce Cawdron — drums, percussion, keyboards
Aidan Girt — drums, percussion
Norsola Johnson — cello
Efrim Menuck — guitar, keyboards
Mike Moya — guitar
Mauro Pezzente — bass guitar
Sophie Trudeau — violin

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