Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O.  「Nam Myo Ho Ren Ge Kyo」(2007)

 抹香臭さをサイケに込めた、ユニークなアプローチのアルバム。

 "Crystal Rainbow Pyramid Under The Stars"と同時期に録音の一枚で、メンバーも全く同じ。北川 ハヲや小埜涼子も引き続き参加している。Haoと違ってツアーに帯同ないだけで、小野もメンバー扱いだったのかも。

 タイトルはもちろんお経の"南無妙法蓮華經"から。しかし仏教帰依や宗教要素はまるで無いことは、日本人なら聴けばすぐわかる。単にお経の単調さを面白さと取り、ドローンめいたループに採用した。異文化の人が聴いたら、感想は違うと思うが。
 さらに後半のアコースティックな場面では、英トラッドと通底する重厚さを出した。
 
 無闇に茶化してはいない。連呼される南無妙法蓮華經のフレーズにベースの単音を合わせ、合いの手でコミカルな津山のボーカルが左右を飛び交った。シンセは怪しく蠢くが、最初はギターのわかりやすい炸裂は無い。
 淡々とひたすら続く音像が、たとえば付き合いで出席した法事での単調さを連想させる仕組みだ。

 そんな前半を続けて、河端はまず一歩引きプロデューサーに徹した。リズムが消えてアコギにハヲの歌が乗るブレイクを挟み、ギター・ソロがじっくり聴けるのだけれど。
 幾度も場面展開あるように、ジャム一辺倒のアルバムではない。河端と津山が各種楽器をダビングして、起伏あるメリハリを付けた。

 小野は最終部分の疾走で暴れる程度。あまり目立たない。フルートも吹くが、津山もone-legged fluteとクレジットあり。この辺が大ざっぱで奔放なアシッド・マザーズらしい。
 津山のほうはジェスロ・タルを意識して一本足で吹いたってこと、なんだろうな。
 北川も全体で言うとあまり前に出ない。野太いお経の連呼を男衆に交じって低い声で唱えたり、合いの手を飾ったりと声域の多彩には貢献したが。

 アルバムそのものは65分にもわたる長尺。しかしトラック分けが長尺1曲なため、AmazonのMP3では150円で買えるという、皮肉な値段付けになっている。
 缶ジュース一本分だ。もし宗家を聴いたことない人なら、ちょうどいい入門盤かもしれない。ただ、冒頭の単調さはアシッド・マザーズをある程度慣れた人でないと、戸惑うだろう。

 まずは最後の10分を最初に聴いて、そのあと「この混沌は何だ?」と冒頭から聴き返すのも面白いのでは。いや、邪道な聴き方なのはわかってる。しかしカタルシスの存在を踏まえた上で、冒頭の揺らぎから改めて味わうのもあり、では。
 そのくらい本盤は冒頭と最後の落差が激しい。サン・ラに通じる混沌さが、そこら中に溢れたアルバムだ。



Track listing:
1 Nam Myo Ho Ren Ge Kyo 1:05:15 

Personnel:
河端一 : electric guitar, voice, hurday-gurdy, acoustic guitar, glockenspiel, tambura, sarangi, speed guru
津山篤 : monster bass, voice, acoustic guitar, one-legged flute, alto recorder, cosmic joker
志村浩二 : drums, latino cool
東洋之 : synthesizer, dancin'king
北川 ハヲ : voice, hot spice & alcohol
小埜涼子:alto sax, flute, aesthetic perverted karman

Recorded at Acid Mothers Temple, Oct.06 - Jan.06
produced & engineered by 河端一
digital mastered by 吉田達也

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