The Rolling Stones 「A Bigger Bang」(2005)

 "現役感"をくっきり出し、コンボ編成のロックにこだわったアルバム。

 60歳以上の人に、若者が現役感を求めるのは間違ってる。「Don't trust over thirty」の精神はどこへ行った。相応に歳取った人が、年配の人に"現役感"を求めるのも、ちょっと違うだろ。
 だがストーンズは本盤で、きっちり期待に応えた。

 ストーンズが想定する顧客層はどの世代だろう。いずれにせよ全方位のビジネスを視野に入れ、老いてなお盛んなスタイルを崩さない。本盤は今から12年前に出た、スタジオ・アルバム。"Blue & Lonesome"(2016)は昨年出たが、それでも「オリジナル曲集」って観点では本盤が、未だに最新作。
 そのわりにあまり今、語られてないのか。中古盤も思い切り値崩れしてる。
 

 本盤は"Bridges To Babylon"(1997)以降、8年ぶりのアルバム。だがすれっからしのストーンズ・ファンならともかく、ストーンズが沈黙のイメージは無かった。97年以降、企画盤が色々とリリースされている。
1998 No Security (Live - From The Bridges To Babylon Tour)
2002 Forty Licks
2004 Live Licks

 ツアーも怠らない。
97/9 - 98/9 Bridges to Babylon Tour
99/1 - 99/66 No Security Tour
02/9 - 03/11 Licks Tour

 忘れ去られることなく、きっちりとブランドを作品で守り続ける戦略が凄い。放蕩と無軌道の象徴だったロックの先頭を走りながら、80年代以降のストーンズは隙が無い。
 いまさら新曲をありがたがらずとも、名曲はいっぱいある。そんな理由で本盤をリアルタイムで聴かなかったのだが。今回聴いて、面白かった。
 
 きっちりストーンズ節を守り切ったアルバムだ。サウンドの質感も、雰囲気も。
 逆にミックの声の衰えが分かる。それが切ない。けれどメロディやアレンジ、リズムがストーンズしてる。3拍目のハイハットを抜くというワッツのドラミングが、妙につんのめるノリを本盤で通底させた。

 達郎のFM番組で、ワッツの3拍目抜きシンバルの話を知った。それから気を付けて聴いてるのだが、初期のストーンズ盤は普通にすべての拍でシンバルを叩いてるように聴こえる。本盤でも抜いてるのかな?叩いてるようにも聴こえるような。コンプのかかったスネアが前面に出て、よくわからない。ただ、ノリは3拍目の前でいったん抜いて、ドドドドでなく、ドドッドドってつんのめる感じを全編で受けた。

 本盤は16曲入り。全曲がミックとキースのオリジナル曲。キースは(16)で歌う。けれどしめて一時間ほど。LP一枚には収まらないが、さくさく曲を並べてむやみに尺を稼がない。この辺もサービス精神というか、きっちり戦略めいて感じるのがストーンズらしいところ。

 創作力は確かにあるのだろう。けれど10曲へコンパクトにまとめるでもなく、旺盛なきっちり15曲と並べ、70分近くの尺に延ばさぬところ。
 この辺のバランス感覚がサービス精神というより、戦略に感じてしまう。新曲が溢れたので録音したってムードより、「そろそろスタジオ盤新譜を出すタイミングだ」と、敢えて判断して作ったような。
 いや、これも思い込みで実際のところは知らないが。

 ロニーの体調不良のうわさもあり、ほぼミックとキースの二人がダビングで作り上げた。
 チャック・リーヴェルの鍵盤を筆頭に、数曲でゲストはいる。しかしホーンも弦もない。例外としてMatt Cliffordが(5)で弦を足してるのみ。
 ベースだって半数はダリル・ジョーンズだが、残りはミックやキースがベースを弾いてる。ミックとキースの蜜月ぶりを見せつけた。60歳過ぎて円熟というべきか。

 さらに。バンド・サウンドのアレンジながら、バンド的な勢いじゃないのがミソ。爽快感ある曲も、実際は密室的に二人で作られた。
 ここではミックとキースの世界観のみが描かれた。むしろ孤高寄りなアルバムだ。敢えて夾雑物を削ぎ落してる。

 迫力あるストーンズ的なミックスが施されてるけど、アコースティックなアレンジで聴くとむしろカントリー的なほのぼのさもあり。
 例えば(8)。こういうアコギのカバーでも自然に成立するのが面白かった。

 
 いまさら豪華なアレンジや新機軸は選ばない。新曲を作り上げることが、十二分に現役感になる。ライブにも織り込みやすいし。そんな戦略も伺える。

 どうも素直に本盤を受け止められないな。ただ、内容は悪くない。期待通りのストーンズ節が詰まった。ギター主体でコンプ効いたサウンドで、グランジやローファイなど余計な色気を出さない。
 メロウな節回しがひんぱんに飛び出したり、得意のブルージーな空気を漂わせたり。60歳過ぎて、このなまめかしい脂っ気を漂わすところが凄い。

 横綱相撲の鷹揚さでなく、もっと地に足がついた着実なスタイル。少なくとも本盤では、ストーンズは前を向いて派手でなく、地味にも陥らない。いい感じのバランス感を保った現役っぷりを魅せた。

 本盤からのシングルは3枚。(5)/(1)の両面シングルと、(4),(8)。カップリング曲はオリジナルでなく、リミックスやライブ・テイク。この辺の使い分けも戦略か。
 イギリスのシングル・ビジネスなら、B面や時にA面もアルバムに未収録曲をあてがいがち。しかしストーンズは新曲をアルバム一枚で全部楽しめるようにした。
 商品を分散させずまとめる。しかし購買グッズは多様化させる。この辺の戦略、練ってるのは誰だろう。
 ビジネス書の観点で、ストーンズの戦略を分析した本や、スタッフ群像の本を読んでみたいものだ。

  

Track listing:
1 Rough Justice 3:12
2 Let Me Down Slow 4:16
3 It Won't Take Long 3:55
4 Rain Fall Down 4:54
5 Streets Of Love 5:10
6 Back Of My Hand 3:33
7 She Saw Me Coming 3:12
8 Biggest Mistake 4:06
9 This Place Is Empty 3:17
10 Oh No Not You Again 3:47
11 Dangerous Beauty 3:48
12 Laugh, I Nearly Died 4:54
13 Sweet Neo Con 4:34
14 Look What The Cat Dragged In 3:57
15 Driving Too Fast 3:57
16 Infamy 3:50

関連記事

コメント

非公開コメント