ROVO 「Phase」(2012)

 終盤2曲の、のどかなスリルが堪らない。バラエティに富んだ傑作。

 ROVOは着実に歩みを進め、そして止まらない。結成15年を経て10thアルバムの本作は、改めて多彩な方向性を提示した。

 まず(1)からして、重なり合うリズムが空気を微妙にずらしていくROVOらしいカッコよさ。
 まっすぐ切り裂く勝井祐二のエレクトリック・バイオリン。ベースのうねりとダブル・リズムの打音が微妙にずれて、揺らぎながらつんのめり、なおかつ前へ疾走し続けた。シンセが穏やかに跳ねて、ギターはジワジワと存在感を出す。

 ROVOはさほど熱心に聴いてこなかったし、ライブも聴きそびれてきた。なんだろう、個々のメンバーの活動は非常に興味あるし、即興も大好きだ。けれど元気よくパワフルな勢いについていけてないだけ、か。

 そもそもROVOへの第一印象は、物足りなさだった。奔放なインプロの手練れが並んでるのになぜ、シンプルでミニマル寄りのダンス・ミュージックに行くのか。もっとズブズブに崩れたインプロがいいのに、と。
 しかしROVOは一過性の活動で終わらない。着実に動員を増やし、確実な活動を継続してきた。そしてもはや今年が結成21年目。なんという歴史を築いてきたのだろう。同時代で追っかけてこなくて無念な話である。

 単純にCDで聴いても楽しめる。しかしROVOの楽しみはそんなんじゃあるまい。リズムに身を任せるのが主眼だろう。複雑なビート展開とシンプルなミニマル性、相矛盾するはずの表現が同居する、不思議なサウンドはスピーカーの前に陣取ってるだけで、楽しみ尽くせてはいない。

 ならばスタジオ・アルバムって存在価値そのものが格落ちか。いやはや、言うまでもなくそんなわけもない。ライブ向けの楽曲ショーケースに留まらず、実験を繰り返してきた。
 時にライブ盤と違うドライな音作りに至りながら、ROVOは疾走し続ける。円熟というより、スマートさと大胆さを増しながら。
 特に本作は演奏のパワーを見事に封じ込めた。バイオリンが軋み、くるくると舞う。ボリュームを上げるほどに、スリルが団子となって高まっていく。

 (1)はある意味、これまでのROVOから期待を裏切らない展開だ。けれど停滞や二番煎じ感はまるでない。気持ちよく、ただただ高まっていく。テンションを上げたいときにROVOはぴったりだ。
 そして(2)はリズムが荒ぶったところで、するり粘る音像が出来上がる。バイオリンの切り裂きに、エレキギターが寄り添い揃ってメロウに展開した。ここでギター・ソロがたっぷり来るか。
 シンセ・ソロに繋がりセッション的なソロ回しをダイナミックに味わえる。

 本作は直近のライブでレパートリーにしてた曲を集めたという。PVで発表は(3)。本作の前に、ROVOでVJを担当した迫田悠が11年末に離れ、高田政義に変更。その時のアイディアだった電球がキーワードに鳴っている。


 この(3)もすさまじい。いきなり爆裂、トップギア。前置きなくエクスタシーだけを切り取ったかのよう。低音のはじけ具合が痛快だ。ベースが噴き出し、スパッと落ちてシンセのきらめきに入れ替わる。その跳躍観が聴きものだ。

 4分過ぎにスパッとブレイク、バイオリンと鍵盤がユニゾンでフレーズを繰り返し、ギターとベースがグルーヴを作る。もちろん、ダブル・ドラムも。正確無比な芳垣とタイトな岡部のビートが左右から煽り立てた。カットアップのように唐突な場面展開が勇ましくも鋭い。
 
 なお作曲クレジットは1,2,5が勝井。3,4が山本。録音とミックス、マスタリングは益子が務める盤石の態勢だ。なおアート・ディレクションは山本が担当してる。

 (4)はギターが中心の楽曲でフォークっぽい牧歌さをうっすら漂わせた。シンセがきらめき、バイオリンは一歩下がった。ダブル・リズムの妙味がひときわ際立つ。左右から沸き立ち、畳みかけるような対話のリズムが勇ましくもクール。
 積み重なる明るくも優しい旋律世界。じっくりふんわり高まったところで、ギターからバイオリンにアドリブが連なる。ミニマルさを生かしつつも(2)と同様にセッションっぽい。
 しかしこの滑らかなメロディで浮かんでいくさまは、ROVOの新機軸だ。

 最後の(5)も強力。これまで10分前後と比較的コンパクトかつトランス寄りにまとめてきたが、最後にアンビエント色を強めてふんわりと即興要素を濃くした。
 ROVOらしいテンポ感を作るのはシンセ、か。ドラムはテンポこそブレないが、小節感は非常に希薄だ。左チャンネルのドラムが刻む場面も、やがてもう一人のドラムがポリリズミックに揺らした。最初が岡部で、後から芳垣、かな?

 これこそROVOの6人がやってきた音楽でもある。これまでのROVOとは違うけれど。
 テクノ的な構築美は残る。おもむろにバイオリンがリフを奏でるROVOらしき盛り上がりも出てくる。けれどもこの雄大でふくよかな音像はROVOとして、耳馴染み良くも新鮮だ。
 そして中盤に再び冒頭と同じ夢想が広がる。やがてリフが高まり穏やかな世界に。(4)と同様、鋭いきらめきが特徴だったこれまでとは違う、幅のあるアプローチとなった。

Track listing:
1 Batis 13:11
2 Compass 9:49
3 D.D.E 10:03
4 Mir 12:23
5 Rezo 21:14

Personnel:
Violin, Viola - 勝井祐二
Electric Guitar, Acoustic Guitar - 山本精一
Bass - 原田仁
Drums, Percussion - 芳垣安洋, 岡部洋一
Synthesizer [Sh-101, Dx7, Mopho] - 益子樹

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