New Power Generation 「Newpower Soul」(1998)

 コンセプトが少し甘いが、ファンクを様々に表現したアルバム。

 ひょこっとリリースされたNew Power Generation名義の3rdアルバム。ジャケットにはプリンスがしっかり映っており、なぜプリンス名義じゃないのか首をひねった記憶あり。アウトテイクというか、一段落ちた没曲を発表の受け皿ではと邪推もしたような。
 プリンスの死後に改めて彼の魅力へ気づいた今となっては、本盤もきっちり手をかけたアルバムと分かるのだが。いかに当時、聴き流してたかだな。

 本盤のリリース・タイミングは、ひょこっと。前情報を知らず、輸入盤屋で見かけたのがきっかけだった気がする。今みたいにネットは無く、よほど金かけたプロモーションか敏感な情報アンテナでもないと、細かなリリース情報なんて入らなかった。
 98年と言えば、ようやくプリンスの音楽を咀嚼しかけたころ。どんだけ出すんだ、と思った。96年のワーナー移籍から"Emancipation"(1996)に至る怒涛のリリース・ラッシュから一息つき、この98年の頭に"Crystal Ball / The Truth"の4枚組が出た。

 ほとんど間をおかず98年の初夏に本盤が出た。ニュー・パワー・ジェネレーション名義にしたのは、少し線の細いファンク・アルバムで弱いと思ったか、レーベルとして幅広さを盛り上げ狙いか。色んな想像が膨らむ。

 Prince Vaultによればこの当時、プリンスは自己のアルバム企画をいくつも頓挫させていた。
 "The Dawn"、"Beautiful Strange"、"Roadhouse Garden"と。詳しい曲順は伝わっていない。だが本盤を前ふりに"Roadhouse Garden"につなげるのが、当初のプリンスの戦略っぽい。
 しかしリリース企画は熟さず。本盤のあとはチャカ・カーンやGraham Central Stationのアルバムを矢継ぎ早に出し、裏方的な立場が強まって見えた。新作アルバムは"Rave Un2 The Joy Fantastic"(1999)まで待つことになる。

 CDリリースのみならば、このときのプリンスはパッとせず見えてしまった。とはいえライブ活動まで見ると着実にコンサートを続けてる。
 まず97/7~98/1がJam of the year 北米ツアー。
 本盤発売を挟んで98年4月~8月まで断続的にNew Power Soulツアーで米欧、続けて9月から12月までNew Power Soul Festivalツアーでも米欧と、きっちり本盤に絡めて活動を行ってた。単に日本へ目が向かなかっただけか。

 さて、本盤。10曲が収録されたあと、数分の無音があり。49曲目に隠しトラックの"Wasted Kisses"が現れる趣向だった。クレジットはNPGのメンバーだが、さてどこまでほんとうやら。全編がプリンス印で、ほとんどがプリンスの多重録音かもしれない。
 アルバムの印象はなまめかしくも軽やかなファンク。派手なメロディやアップテンポでなく、地味な雰囲気だった。当時はバラード曲を中心に聴いてたな。どうもプリンス流のファンクはあの時、ピンと来なかった。ライブを見てたら、評価も大きく変わってたかもしれない。

 ただし。この印象はマスタリングのせいもある。芯はしっかりしてるが、なんだかゴチャッと詰まったサウンドだ。90年代初頭のデジタル臭い硬質さから、アナログ風の太いサウンドに移行してきたはずだが、どうも本盤は抜けがいまいち。"Rave Un2 The Joy Fantastic"で急に音圧にメリハリがつく。録音環境の再構築過程が本盤だったのかも。

 幕開けの(1)は打ち込みドラムに生演奏の硬質なビートが重なる。サンプリング・ヒットと生のホーン隊が絡み、わさっとハーモニーが盛り上げた。雑多なムードが絡むファンクネスは、地味だがじわじわくる。凄みや鋭さより気軽な単純な親しみを持たせた。
 テンポは緩めで、CDよりライブで映えそう。ただし一発押しではなく、曲が進むにつれ細かい構成は変わっていく。次第に密室性を増すかのよう。改めて聴くと、凝ってるな。
 (2)も当時はサビ連呼の単純なファンクに聴こえてしまった。平歌はポップ性を下げ、語るようにプリンスが歌う。時々ぴたりと吸い付くような多重コーラスが入り、音程はさほど動かないけれど、カッチリとコントロールされたメロディだとわかる。
 ドラムは打ち込みかな。DJスクラッチも重ねて不穏な混沌を演出した。

 きれいなバラードの(3)は前から好きだった。震えながら弾けそうなプリンスの歌声がオーケストレーションに飾られ、じわじわ盛り上がっていく。地声からファルセットに繋がりサビへ向かう流れは、さながら男女デュエットのよう。サビではハーモニーを多重に重ねるプリンス印のアレンジで華やかに。
 リズムを打ち込みでクリアに留めて、過剰な感情移入はしないけれど。メロディがきれいで親しみやすい良い曲だ。

 続く(4)もポップ。シンセと生ホーンの重ねで、くいくい軽快に刻む。平歌での簡素な空気感がクールさを演出した。サビはメロディアスだが、今一つはじけないアレンジがもどかしい。
 がっつりリズムで煽ったら、ポップさを増す。大サビっぽいブレイクもキャッチーな旋律が連発される。もっと派手に行ってくれよと思った。
 けれど安易にプリンスはその方向性を狙わない。と、当時は歯がゆかったけれど。今聴くと、そもそもスカスカ感がプリンスの狙いかな。
 
 より密室性を増した(5)で本盤の印象は、バンド名義よりプリンスの個人性がどんどん強まった。オンマイクの多重録音でねっちりとプリンスは歌う。これもサビの軽やかに弾むが粘りを保つ色彩感が癖になる。じわじわとファンクの毒が身体に回っていく。
 かすれ気味な歌声がざらつき、不穏さを演出した。声質一発で雰囲気を作るところが凄い。とことんコントロールされている。

 (6)は"Emancipation"(1996)収録の"Jam Of The Year"が歌詞に織り込まれる、バリエーション見たいな曲。ぐいぐい押すファンクにヒップホップ色が強まる。Doug E. Freshのラップと、プリンスが様々な声域で歌をかぶせた上に、チャカ・カーンやラリー・グラハムまでコーラスのダビングあり。
 まさにNPGの総力線みたいなテーマ曲。これをアルバム一曲目に持ってこず、B面1曲目あたりに配置が、プリンスのこだわりか。
 打ち込みビートを一定に保ち、上物の目先を変えて音絵巻をさりげなく編んだ。

 そのまま流れをつなぐようにタイトル連呼のサンプリングからホーン隊へ。P-Funk直結の大人数ファンク風な賑やかさを出したのが(7)。観客に叫ばせて盛り上げにぴったりな曲。
 敢えて乾いたリズム・ボックスを複数鳴らしてリズムの打点をばら撒き、ころころとはじける賑やかさあり。
 
 本盤からシングルで切られたのが(8)。(5)に通じるメロウなファンク色で、カミールみたいなピッチを上げたボーカルをプリンスは操る。実際にテープ加工じゃないかな。
 ドラムは打ち込みながら、シンセは手弾き感が強い。鍵盤をちょこちょこ足して、NPGメンバーのコーラスで飾る。コード展開がほとんどない、プリンス流のファンクが展開された。実際は新曲かもしれないが、"Sign O' The Times"(1987)時代のアウトテイクと言われても違和感無い。

 再びバラード路線ながら緊張感を切らさない(9)は7分にもわたる長めの展開を見せた。ストリングスがふんだんに鳴って涼やかな美しさを演出した。
 打ち込みビートは硬く、タイトに刻む。弦のふくよかさと対比構造を、ファルセットと地声を奔放に行き来する、リバーブを効かせたプリンスの歌声が粘っこく連結させた。
 
 クレジット上は最終曲の(10)はロックにちょっと寄ったファンクネス。これもカミール声で軽やかに踊った。ギターやホーン隊を中盤に配置して、ラップへ繋げる。
 これも(7)同様に、リフレインを観客に叫ばせる演出にぴったり。
 
 隠しトラックの(11)はこれまでのムードから一転して、サイケな雰囲気を強めた楽曲だ。アルバムの統一性はここで大きく崩れる。だからこその隠しトラック。よほどプリンスはこの曲に思い入れありか。ちょっとこの曲だけ、音の質感が違う。"Roadhouse Garden"で披露する方向性の、予告編なノリだったのかもしれない。"Roadhouse Garden"がボツった今、この妄想を確かめるすべはない。

 たんたんとビートは流れていく。軋むように絞るように曲調が漂う中、プリンスは淡々と多重ボーカルを提示した。うねるベースの高速オブリや雑踏みたいなムードなど、硬質だがむしろシンプルなアルバムとは一線を画す曲調だ。
 そもそも"Roadhouse Garden"はレボリューションズとの再結成って触れ込みだった。そのわりにこの曲はバンドっぽさは希薄。でも"Around The World In A Day"(1985)直系のサイケ寄りなムードはある。

 いずれにせよ本盤は、どうも埋もれがち。大傑作とは言わないが、聴いてたらじわじわ来る良さは、確かに持っている。新たな音世界の開拓よりも、ライブでの盛り上がりを意識していそう。
 
Track listing:
1 Newpower Soul 5:02
2 Mad Sex 5:14
3 Until U're In My Arms Again 4:47
4 When U Love Somebody 5:57
5 Shoo-Bed-Ooh 3:24
6 Push It Up 5:29
7 Freaks On This Side 5:43
8 Come On 6:00
9 The One 7:05
10 (I Like) Funky Music 4:32
11 - 48 無音トラック
隠しトラック:
49 Wasted Kisses 3:00

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