灰野敬二/Zeitkratzer 「Electronics」(2008)

 前衛クラシック・アンサンブルと灰野敬二の饗宴。

 Zeitkratzerはドイツの現代音楽アンサンブルで、ノイズ系の活動に親しい。各メンバーもざらっとDiscogsで検索したが、それぞれにキャリアを持つそうそうたるメンバーの集合体みたい。1997年に設立後、ルー・リードの"Metal Machine Music"をカバーしてメルツバウやホワイトノイズらとも共演をしてきた。
 

 自らのレーベルzeitkratzerを持ち、リリースまで含めた独立独歩の活動だ。主催はピアニストのReinhold Friedl。本盤ではミックスも担当した。
 かなり団子なミックスで、個々の音を聴き分けは難しい。そうとうにボリュームを上げる必要があるし、それでも分離は弱い。

 Zeitkratzerはこのとき、"Electoronics"のタイトルでCD3枚組をリリース。バラ売りも存在する。共演者はTerre Thaemlitz、Carsten Nicolai 、そして灰野敬二。独米日のミュージシャンとZeitkratzerのやりとりを音盤にした。ぼくはバラ売りで聴いており、灰野以外の盤は知らない。
 少なくとも灰野との本盤は肉感的なノイズが漂い、あまりタイトルで言う電気仕掛けな感じはしない。

 灰野は本盤でゲストとして真っ向からZeitkratzerと共演した。05年11月11日のベルリン、06年4月21日のオーストリアでのライブ音源から本盤は作られている。
 当時のライブ映像が短いながらもYoutubeにあった。
 

 灰野は(1)~(2)では歌声を操る。抽象的なZeitkratzerは譜面というより段取りを決めて、後は即興だろうか。多人数のアンサンブルだがコントロール不能で崩壊はしない。なんとなく重厚かつどんよりとZeitkratzerが奏で、灰野の声が絡んでいく構造だ。灰野はたぶん、インプロだろう。灰野はゆらゆらと声を絞る。甲高く高らかに。残響がうっすら付与された。生演奏と同時にループも使ってるようだ。

 (3)では灰野がエレキギターを持った。叫びも入る。(1)や(2)の崇高さとはうってかわり、激しい音塊を叩きつけた。Zeitkratzer側はあまり変わらないが、灰野の出方一つで風景が一気にシビアな緊張感を増した。前半は発信機かもしれない。いきなりトップギアではなく、24分ぐらいの曲の中で、じわじわとじっくり激しさが加算される。
 10分過ぎからはドラムもZeitkratzer側から現れ、テンションが増した。抽象的で奥行きが詰まった混沌さはそのままに。一気にロック寄りの空間に向かう。
 ただし強気一辺倒ではない。18分ほどでいったんテンションは落ちる。やがて灰野が強烈にシャウトをはじめ、大人しくなることを安易に許さないのだが。

 最後(4)は灰野がドラムを叩く、デュオ形式。Zeitkratzer側はMaurice De Martinかな。
 パーカッション・デュオの赴きからドラム・セットの対話へ向かう。
 前半は間を生かした灰野流のリズムで、次第に手数多いテクニカルなパーカッションが前面に出ると、整然たるリズムと灰野のアクセントが強くついたパルスの揺らぎで世界が歪む。単なる連打合戦ではなく、場面をくるくる変えながら展開する面白さあり。
 やはり籠ったミックスで細部がもやけてもどかしい。ホール鳴りの臨場感はあるのだが。

Track listing:
1 Aria I 10:09
2 Aria II 13:19
3 Sinfonia 24:52
4 Bonus: Drum Duo 8:35

Personnel:
Guitar, Voice, Electronics,Drums - 灰野敬二

Directed By, Piano, Piano [Inside-piano], Producer, Mixed By, Mastered By - Reinhold Friedl
Cello - Anton Lukoszevieze
Double Bass - Ulrich Phillipp
Electronics - Marc Weiser
Percussion - Maurice De Martin
Trumpet - Franz Hautzinger
Tuba - Melvyn Poore
Violin - Burkhard Schlothauer
Bass Clarinet - Hayden Chisholm (on 1)
Bass Clarinet - Frank Gratkowski (on 2)
Bass Clarinet - Hayden Chisholm (on 3)

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