朝日のような夕日をつれて2014

見に行った。17年ぶり。もうそんなに時間がたったかと、愕然だ。以下、細かいことも書くけれど、いちおう、見たことない人には分かりづらく書いておく。

今回公演はもちろん第三舞台でなく、Kokami Network名義。大枠を残しつつノスタルジー色をきっぱり削った清々しい改訂版だった。

"朝日"を初めて知ったのは87年。公演目線だと4回目の再演のころ。とはいえずっとチケット入手のチャンスが無く、実際に"朝日"は97年の6回目、サザンシアターが初体験。でもビデオやDVDは何回も繰り返し見て、戯曲は何十回も読んだ。冒頭の立ち方はマネしたし、セリフの構造や流れも大まかは頭に入ってる。

そのせいで97年に実際の"朝日"の感想は、もちろんべらぼうに楽しんだ一方で、息苦しさを感じていた。戯曲の構造は見せ場に満ちており、エンタテイメントをなぞるだけで時間が過ぎてしまい、改訂の箇所は間違え探しの気分だったため。

だが今回、7回目の再演は見事に時代に寄り添っていた。ギャグは全て入れ替えられていた。ゲームはきっちりと、進化していた。
歳の流れも感じる。ダーツの距離は半分で、ミュージカル病はすっぱりカット。ニューアカや左/右翼のちゃかしも消え、自衛隊ネタは会社に変化してた。

DVDで見た汗まみれのスーツも、ぐっとトーンダウン。ダンスも簡略化された感じ。
大高と小須田の体力持つかと心配してたが、見事な改訂だ。"朝日"が魅せるハードさは、藤井隆の熱演で往年の汗まみれを伺わせた。

大きなセリフ構造も細かく改訂。"みよ子の遺書"って言葉が耳に入った時は「そこまで丁寧にやるか」と驚いた。小須田が最後にゲームの名前をトチりは・・・台本?もし台本なら、すさまじい構成力と小須田の演技力だ。

いちばんの変化点は、丁寧な画面補足の分かりやすさ。背後のスクリーンを観ながら、数十年前とは違う、テロップまみれなテレビ番組の分かりやすさを連想した。
"千のナイフ"までもテロップが入っててビックリ。もちろん演劇的な演出の観点では、ギャグが分かりやすく強調され、とても楽しかった。

以上、不満に思える書き方かもしれない。とんでもない。ムチャクチャ面白かった。しばしば入るキメの場所では、ゾクッときた。尻ふりに鳥肌が立つ。短く終わっちゃたけど。
とにかく隅から隅まで役者も演出も、すごくシャープだった。

冒頭から演出の新味が光る。ノイズ交じりの"End of Asia"とスクリーンの対比は素晴らしくスリリング。天井から落ちるボールが鳥に食われて一呼吸置くのも面白かったし、さらにボールも大量落下する。お約束を守りつつ、テンポを明らかに変えた。

大高と小須田をそのままに、他3人はネットワーク人脈。したがって舞台の濃密さは明らかに第三舞台と違う。特に我愛?のシーンはもどかしい。あの部分は筧のイメージが強く、もっと伊礼や藤井が前に出て凄んで欲しかった。唯一、不満はあそこかな。

とはいえ他3人の魅力は、他にあった。迫力は藤井隆が圧倒的。キャスティングはぶっちゃけ、藤井が少年と思い込んでいた。ゴドー1とはね。汗と唾を飛び散らせ、ぐいぐいと舞台を駈けた。

伊礼彼方は唄もすごい。おかげで学校の印象がガラリ変わった。"グッドナイト・ベイビー"カットも納得だ。
さらに藤井との座り語りで、伊礼の魅力にやられた。第三舞台でのきっちりと構築され、緊張と弛緩のバランス、ごく滑らかに伊礼は描く。伊礼は寛ぎ、優しく、温かく語りかけた。
玉置玲央の少年もスピード感あり。いちばん少年イメージが変わらず、それでいて最終シーンの心細げな医者の振り幅が、とても懐深く響いた。緊張から不安、さらにスリルにと演じる。

DVDで何度も見た刷り込みから、至高の"朝日"は91年の印象が強い。勝村政信と筧利夫、京晋佑の公演。
"朝日"の良さが映えるには、第三舞台でこそ上演可能な演劇と思ってた。当て書きを漂わせ、鴻上の価値観が滲む戯曲として。だが本改訂版で"朝日"はウェルメイドに仕立てたと思う。
サブカルチャーだった鴻上が、今や小劇場界の権威になった今にして。

第三舞台の戯曲や舞台を見るたび、何か言いたい思いが頭にぶわっと膨れ上がってきた。思春期や20代の何か喋りたい、もどかしい頭のスイッチを思い切り押されてきた。40歳を軽く超えた今でも、まだちょっと余韻が残ってる自分に気づく。枯れるわけにはいかないぜ。

鴻上の芝居は刺激スイッチと感じてきた故に、"今の"鴻上である虚構の劇団は、一度も見たことが無い。自分の枯れや錆びを知りたく無かったから。とはいえ"今の"朝日を見た今回、改めて今の価値観で虚構の劇団を観たくなった。

しかし公演始まった今でも"朝日"のチケットが、普通に少々残ってるんだ。ぴあとか見て、驚いた。さすがに平日公演だけだが。瞬殺だった当時から隔世の感だ。
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