Acid Mothers Temple & The Cosmic Inferno 「Journey Into The Cosmic Inferno」(2008)

 プログレ的な組曲形式で開放と怒涛、ミニマルとジャムを混ぜ合わせた一枚。ユーモアもうっすら漂い、地獄組の入門編にいいかも。

 長尺は(3)の23分弱くらい。アシッド・マザーズ・テンプル&コズミック・インフェルノの延々と続くジャム・セッションから少し路線が違う。よりアルバムとしての構成度が上がった。

 怒涛の連続6枚リリースによる05年のデビューからいったん落ち着き、ドラムが岡野からピカ☆チュウに変わっている。彼女が参加して初のスタジオ盤がこれ。
 録音は08年2月14-17日、そして同年6月4-12日。断続的におそらくダビングに時間をかけて製作された。3月に米加で"Recurring Dream And Apocalypse Of Darkness Tour"、録音が終わった8月には英にて"Hotter Than Inferno Tour"とハードにツアーをこなしながら。後者の物販で本盤が売られていたのかもしれない。

 インドっぽいミニマルな展開の(1)で幕を開けた。最初、機械かと思う抽象性。聴いてると様々な楽器をダビングして厚みだしてるとわかる。いかにも肉感的なサウンドなのだが、最初はジャストな鋭利さを感じてしまった。
 充満する高音の響きでインドっぽさを感じるが、実際はブーズーキやハーディガーディ西洋音楽の匂いもある。滲みだす抒情性には日本の情感もある。要は、無国籍。貪欲に咀嚼し開放する河端の才能が溢れた。本盤は津山がいないため、よりドローンやサイケ・アンビエントな河端の色が強い。

 (2)でドラムが加わり怒涛のジャムへ。ピカの歌う五十音を並べる無意味な歌詞の連続が、日本語の明確な意味を持つ言葉と交錯し、シャウトがダビングされる。甲高い彼女の歌声が、音楽の持つ混沌に輪をかけた。
 左のシンバル連打が東で、右のタイトなドラムがピカかな。ベースが重たく着実にドライブさせ、ギターが左右で数本吼える。即興的だが一発録りでなく、丁寧にダビングが施されて厚みある音像に仕上がった。
 疾走に向かわず、どこかゆとりをもってどっしり構えてる。

 (3)のバグパイプみたいな音色とシンセ、鉄琴とパーカッションの溢れる雑踏がしたたかでつかみきれない混沌を作った。リズムが小刻みにばらまかれ、明確なリズムや構成は無い。しかし強固に成立している。混沌はでたらめでなくパルスや各種ビートの混交なためだ。
 東南アジアのざわついた幻想の市場を歩いてるかのよう。

 (4)は再び地獄組のジャム。軽快なビートがベースで補強され、着実にドライブしていく。エレキギターがフィードバックを撒き散らし、シンセと混ざって即興に雪崩れた。
 じわじわっと加速する、かっこいい骨太さが味わえる。中盤でピカの(2)に似た五十音を操る歌が多重録音で出てきて、サウンドがユーモラスに広がった。
 やはり一発録りにとどまらず、ミックス定位にもこだわる。この辺が河端の細やかなところ。

 (5)は軽快なカントリー風のフォーク。シンプルなメロディをピカが歌い、田畑と河端が極低音のハーモニーを入れる。何ともヘンテコな空気感が面白い。このあたりのセンスは地獄組というより宗家に似ている。
 ボーカルの多重録音はどんどん増えてサイケな味わいを楽しく増した。

 最後の(6)は地獄組のジャム。リフが明確にシンセとベースで綴られて、高らかにピカと男性陣のハーモニーが歌われるドラマティックな展開だ。左右のドラムが微妙に打点をずらしながらリズムを荘厳に勇ましく盛り立てる。
 おもむろにギターが炸裂した。一本だけでなく複数。終盤は讃美歌的なコーラスの熱狂から、寂し気なシンセの動きへ落下して幕。
 最後まで河端は垂れ流さず、構築美を意識したアルバムを作りあげた。

Track listing:
Journey Into The Cosmic Inferno Suite
1 1st Movement: Cosmic Inferno's Gate 8:53
2 2nd Movement: Master Of The Cosmic Inferno 22:53
3 3rd Movement: Cosmic Blood Feast 4:33
4 4th Movement: Ecstacy Into The Cosmic Inferno 15:05
5 5th Movement: Usisi 8:20
6 6th Movement: Shalom Cosmic Inferno 8:33

Personnel:
河端一 : guitar, hurdy gurdy, bouzouki, sitar, electric sitar, organ, glockenspiel, ney, hyotan shamisen, percussion, voice, speed guru
ピカチュウ : drums, voice, taiko, percussion, keyboards, acoustic guitar, bouzouki, cosmic shaman
田畑満 : bass, voice, acoustic guitar, tortoiseshell guitar, percussion, maratab
東洋之 : synthesizer, voice, alto recorder, percussion, dancin’king
志村浩二 : drums, voice, latino cool

recorded at Acid Mothers Temple, February 14-17 and June 4-12, 2008
produced & engineered by 河端一
digital mastered by 吉田達也

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