Tony LeMans 「Tony LeMans」(1989)

 打ち込みテクノ・ソウルな一枚。プリンス色は希薄だが、微妙な影響も確かに滲む。

 ペイズリー・パークから発表したトニー・リーマンズのデビュー盤。92年に夭逝したため、本盤が唯一のアルバムとなる。男なせいかプリンスの扱いも冷たく、楽曲に作曲クレジットは無い。最終曲(11)でFred Astaire IIIとクレジットされたギターが、プリンスとも言われる。

 全編に漂うのはデジタル・シンセの硬い響き。メロウさもあり悪くはない。当時のプリンスっぽさを凄く色抜きした仕上がりだ。
 当時のプリンスの未発表曲に"Fuchsia Light"があり、これは本盤に向けて収録したとも言われる。だから全く無関係で終わらせる気もプリンスは無かったろう。ならばわざわざ、自分のレーベルから発売する必然性もないのだから。

 "Fuchsia Light"にはリーマンズ自身がボーカルをダビングしたとの情報もある。ならば単に、リーマンズのわがままでプリンス色を減じさせたか。もったいない話だ。
 とはいえ本盤の収録曲はどれも、プリンスの色も凄く薄いが漂う。多重録音されたボーカル、メロウなムード。リズムが硬質なのと、リーマンズの歌い方があっさりしており毒気は無い。だからプリンスの曲ではないのか。うーん、才能に惚れてペイズリー・パークが契約したということか。

 とにかくこの盤はリズムがメカニカルだ。プロデュースはスクリッティ・ポリッティのDavid Gamson。それを知って「なるほどなあ」と思った。いかにもスクリッティらしいシンセ使いであり、テクノ寄りのサウンドだもの。(5)あたりが典型だ。
 でも微妙にプリンスっぽさもあるんだ。ギターのカッティングや、ちょっとしたハーモニーの味わいに。楽曲とデモをプリンスが作って、リズムをGamsonが差し替えたとか、そういうオチは無いものか。
 例えば(6)。ギターのカッティングや鍵盤リフ、ハーモニーで聴こえるシャウトとか。プリンスっぽくない?

 やたらあちこちのスタジオで録音したクレジットになっている。
 プリンスの視点では(8)と(11)に当時のプリンスのバンドにいたBoni Boyerがコーラスで参加した。ペイズリー・パークでの録音クレジットは、この曲や(11)でのフレッド・アステア三世の録音のことか。たしかに(11)は本盤で毛色が違う。ギターは薄め。でも楽曲まで含めてプリンスが関与してるかもって、思わせる。他の曲に比べると、ぐっとファンキーだ。

 他には元アトランティック・スターのPorter CarrollやPlushのSiedah Garrettがコーラス、あとは鍵盤をDavid Gamsonが弾き、ホーン隊はLAのスタジオ・ミュージシャンで固めたっぽい。クレジット上は。

 プリンスは文字通り、全く参加してないのだろうか。David Gamsonまで巻き込んで、嘘のクレジットをしたとは考えづらいが・・・。
 本盤の楽曲は薄味ながらも、じわっとファンクネスが滲む。リーマンズの歌声は硬くて生真面目のため、色味は単調だ。けれども、決して悪くない。毒気やグルーヴが妙に整然としてるけど、なんか惹かれる。

Track listing:
1 Higher Than High (Dedicated To Sylvester Stewart) 4:07
2 Itchin' To Be 3:54
3 Forever More 5:24
4 Real Thing 4:02
5 Good For You 5:09
6 Bundle Of Joy 4:50
7 Cookie Crumbles 4:02
8 Rhythm Rocker 4:39
9 By The Way 4:24
10 Paradise 5:15
11 Different Kinda Thing 4:11


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