聖家族 「Out Takes '66 - '78」(1998)

 即興巧者トリオによるしたたかで混沌なユニットの1st。

 吉田達也、河端一、津山篤。ルインズmeetsアシッド・マザーズのドリーム・チームだった。帯には津山は想い出波止場、河端はムジカ・トランソニックとクレジットあり。いちおう96年にアシッド・マザーズは立ち上がっているが、この時期だとそこまで知名度はなかったかな。

 現在はAcid Mothers Temple SWRでの方向性なのか、三人の順列組み合わせ"Japanese New Music Festival"ユニットでも、今は聖家族の名前が出ない。
 05年にはユニットの一つでラインナップされていたし、05年頃には「聖家族祭り」と銘打って聖家族をメインライナーにAcid Mothers Temple SWR、Zoffy,赤天、津山篤/津山明子のメンツでライブ企画もあったようだが。

 本盤は聖家族名義での1st。フランスのレーベルFractalからリリースされた。
 特徴は音質が異様に悪いこと。機材の問題か。単にデモ的に取った音楽を、そのままマスターにしたのかもしれない。
 録音は吉田のお膝元、西荻区民センターで行われた。スタジオでなく公共施設を利用して製作費を安くあげる、吉田らしいスタイルが明確に出た。

 三人で単なるセッション垂れ流しでも成立しうるが、ここではそれぞれが様々な楽器を操った。まさにバンドの音をさぐる過程そのものを封じ込めたかのよう。ジャム・セッションの集合体であり、なおかつジャムに至る前の指慣らしではと思わせる曲すらもある。
 タイトルはアルバム・コンセプトから。欧州のプログレ・バンドが60年代後半に残した音源を発掘したって体裁を取ってるため。ジャケットには各局ごとに、何年に世界のどこで録音された、と緻密な嘘のデータがクレジットあり。凝ってるなあ。
 それによると66年頃からアメリカを中心に欧米やカナダをツアーの様子が伺える。後半(15)はスタジオ録音で、なんと69年に京都で収録。来日もしてたのか!

 ・・・いっぽうで正確な録音日付96年6月18日もしっかり記録し、騙しに徹しない生真面目なユーモアさも面白い。なお鍵盤などいくつかは、吉田が自宅でダビングを施した。

 日本では吉田が自レーベルの磨崖仏から帯付きで流通させた。当時の帯のアオリは「カテゴライズを破壊し、時間軸を奔放に疾走する『聖家族』のサウンドには、ジャーマンロックの究極が宿っている」。

 数分、中には一分足らずの短い曲もあり、ずらり16曲収録した。吉田のドラミングはむやみに手数に走らず、じっくり叩く場面もあり。津山の野太いベースがしぶとくサウンドを支えて、河端がギターやさまざまな楽器を操って楽しく遊んでる。

 録音の主導権は吉田だが、サウンドの多彩さは河端の才能がたっぷり。多彩な楽器を使い分け、ハードコアでサイケな空間を作った。すべて即興。リズムやメロディ、構成や和音から解放された自由さが一杯だ。逆にアシッド・マザーズに通じるギター・ソロの疾走感よりも、実験に走った無邪気さが強く出た。
 伸び伸びとした即興ジャムを楽しめる。繰り返すが、音質悪いのが玉に傷。

Track listing:
1 Krsnahasyamaj 4:10
2 Jatakastupa 2:46
3 Madhyamakamula 2:58
4 Vyavartanihstava 3:35
5 Dharmagujaparika 2:53
6 Prajnapraptati 6:03
7 Sambandhapariksaddhi 1:35
8 Pramanasiddhikarika 1:25
9 Panditananabhadra 1:07
10 Varatnavali 4:54
11 Anuruddhaccaya 0:37
12 Darasikuhyasi 4:00
13 Gurupabhadra 3:00
14 Gangadharayana 2:37
15 Ramanumalika 4:54
16 Brahmagnpatirana 4:05

Personnel:
Bass, Guitar, Violin, Drums, Kazoo, Piano, Synthesizer [Moog], Voice ;津山篤
Drums, Percussion, Oboe, Organ [Hammond], Electric Piano [Rhodes], Piano, Bouzouki, Voice, Artwork ;吉田達也
Guitar, Sarangi, Violin, Synthesizer [Moog], Electric Piano [Rhodes], Organ [Hammond], Shamisen [Hyoutan], Voice :河端一

Recorded in Tokyo, Nishiogi Kumin Center, 18th June '96
Mixed and some tracks overdubbed at Magaibutsu Studio, 19th June '96

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