TZ 7243:山本精一 "Nu Frequency"(2003)

 比較的静かなアンビエント・ノイズ寄りの、あまりにも自由で優美な多重録音の即興が楽しめる。

 TZADIKからの初ソロ名義な本盤は、1, 6, 8の3曲でチャイナがドラムを叩く以外、全て山本の多重録音で製作された。ドラム、シンセ、ギター、ベースと様々な楽器をダビングしてインストを作ってる。

 即興っぽい作りで、コンボ編成のアレンジではない。精神世界をスケッチしたかのよう。とりとめなく音が溢れ、沸き立って沈む。むやみにノイズに走らない。構成や展開も気にしない。そもそもリズムと弦楽器が混在しており、どういう順で録音したかも想像できない。
 
 リズムが奔放に揺れ、低音が淡々と動いてギターがくるくる舞った。鍵盤は淡々と鳴る。轟音やハイテンションとも違う。全体的なイメージは静かで、淡々としてる。けれども音列は突飛で、構造を容易に分析や定義ができない。

 まったく滅茶苦茶に録音した様々な楽器を、ランダムにミックスしたわけではなさそう。リズムや断片の旋律はわずかに連結性を持つ。何かの楽器をまず録音して、次にそれを聴きながら別の楽器を重ねる。それをミックスで取捨選択だろうか。

 アプローチは凄く前衛的。アレンジの類型性は皆無で、聴きやすいと思わせて(2)の終盤でいきなりハウリングっぽい響きが淡々と続いたりする。しかもそのあと、(3)はフリーでゆったりしたジャズ風の演奏だ。
 曲間無く落差激しい楽曲変化による跳躍と、曲の中で方向無縁に漂う危うさ。このつかみどころ無さが、すごく気持ちいい。

 突拍子ない展開ながら、乱暴でスカムなむちゃくちゃさが主眼ではない。無造作に、無軌道に音楽を追求してる。起承転結も構造からも解放された本盤の音楽は、押しつけがましさもない。
 音数を詰め込まず、すっと抜いた見通しのよさがある。
 どんな想像も呑み込み、あらゆる解釈も放棄させる自由な創造性が本盤に詰まった。
 あえてギターのみのダビングでなく、リズム楽器やベース、鍵盤など楽器の多様性を施したがゆえの、音色の多彩さと多層性がこの盤を色鮮やかにした。

 楽曲のメッセージ性や核はつかめない。響きの気持ちよさを追求でもなさそうだ。
 一発録音で時空を切り取っただけではない。何度も音が足されている。ループをいくつも並べて、同時演奏ではなさそうだ。
 にもかかわらず、音が飽和せず寛いだ混沌で魅せる。凄い。

 チャイナを呼んだのは、単にテクニック的な問題かも。ドラム・ロールやビートの刻みを山本がドラム演奏できれば、全て自分で行ってた可能性あり。チャイナとはデュオ演奏って位置づけでなく、あくまで楽曲の一部分として参加してる。
 しかしタイトなチャイナのドラムが加わった(6)(8)が、間をあけてアルバム収録されることで、きっちりしたビートの締め付けがキュッと全体の構成を引き締める大きな要素になっている。山本がテクニックやメロディ追及のアプローチを行っていないだけに、チャイナのドラムが加わった曲が、良いアクセントだ。

 複数の楽器を重ねながら破綻をさせない音像バランスの構成力が驚異的だ。思い切りぶっ飛んだアルバムではあるが、聴きやすい。

Track listing:
1 Convergence 0:38
2 Acceleration 9:52
3 Seed 4:41
4 Hopi 4:04
5 Glorious Farm 6:11
6 No Side 6:57
7 Yarn 5:58
8 Movin' 8:22

Personnel:
Composed By, Producer, Synthesizer, Bass, Guitar, Drums, Percussion By 山本精一
Drums, Percussion by China (on 1, 6, 8)
Recorded at Cooper Studio in Osaka, 2001-2002.

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