河端一 「Private Tapes, Volume 7」(2002)

 エレキギターがそっと漂うドローン・アンビエント。河端が得意のミニマルでサイケな風景が、長尺でたっぷり楽しめる爽快な盤。

 "Acid Mothers Temple Private Disc Series"から全10枚にわたったシリーズの第7弾で、200枚限定のリリース。
 ディレイを駆使したエレキギターの即興で、オーバーダビング無し。しかし聴こえる音は幾層にも重なっている。

 楽曲は約40分の一曲で一本勝負。静かな世界観だ。フレーズを弾いてはディレイでループさせ、さらに別のフレーズを重ねていく。
 無限に音が足されるわけではない。充満しそうで飽和しない。すべての音が残響を持つのでなく、ペダルでサンプリングするフレーズを取捨選択してるかのよう。

 スピードは緩やかでぶれない。過去のフレーズが次第に消えるため、新たなフレーズで加速はする。この一丸となる流れが、独奏にもかかわらずアンサンブル風のノリを作って興味深い。しかも和音感がほぼ濁らない。即興とは言え計算しながら音楽が作られた。音像は一本勝負で区切りは無い。一回の演奏を丸ごと封じ込めた。

 ストロークよりも爪弾きを優先させ、リズムは譜割で作る。サンプリング・ディレイが中心なために、四拍子で固定されているがフレーズの長短で、テンポは一定ながら音像全体が緩急の揺らぎを感じる時もある。世界が一気に伸縮するかのように。

 フレーズはごく短い。数音で組み立てられた音が小刻みに持続する。押し迫る圧力が美しく描かれた。
 フィードバックやノイズは音使いに使わず、あくまでふんわりリバーブのかかって軽く歪む、明るく響くエレキギターの響きだけで音楽が作られた。

 基本的には高い音域を中心に形作られるが、時たま低音をふっと入れる。その構成が見事。世界が一気に高低差を増す。視野が広がるような爽快さ。

 寛ぎ、ではない。瞑想性や酩酊感による揺らぎだ。幻想的なふくらみが繰り返しで強調されるが、ぴりっと張りつめた空気が清らかに響いた。
 そして最後はクラスターのように高まった音像が延々と楽しめる。不穏な緊張が一気に押し寄せた。
 パイプオルガンのような高揚と音圧の圧巻さ。それがすうっと一気に消えて幕。


Track listing:
1.I Want You To Want Me (38:16)

Personnel:
河端一 : electric guitar
the music was completely improvised, no over dubbed.
recorded at Acid Mothers Temple, Aug.2002

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