Pete Namlook 「Air II」(1994)

 DJ式に世界各国の風景をまとめた一時間の音絵巻。

 膨大なリリースを誇ったドイツのテクノ魔人ピート・ナムルックが94年に発表したアルバム。彼のレーベルFAX +49-69/450464の立ち上げは92年頃で、比較的初期の作品にあたる。94年1月24日の発売で、1000枚限定。
 ただしFaxの再発用サブ・レーベルAmbient Worldからリイシューもされ、00年代初頭はそれなりに入手できた。

 副題に「Travelling Without Moving:移動無しの旅行」と銘打たれ、楽曲そのものは1時間の長尺だが場面転換ごとに風景が変わる組曲形式を取った。トラックも11個に切られてる。

 電子音楽が基調ながら、サンプリングなのかパーカッションやギターらしき音色も時に流れる。女性の朗々たるアラビックな歌声も挿入された。
 その観点で本盤はテクノとは言い難い。ミュージック・コンクレートっぽい手法だ。

 テンポ感はポリリズムやシンコペートは少なく感じられた。インダストリアル要素にアンビエント風味を足した格好。ただしビートの刻みを拍頭か裏で取るかによって本盤のノリが変わる。普通に聴いてると、ついフレーズを頭で取ってしまう。けれど拍裏で解釈したら、けっこうグルーヴィだ。

 強圧的に踊らせるテンションではなく、穏やかなムードに包まれた。サンプリングやアイディアを詰め込まず、順番に提示していくかっこう。その観点で本盤はスリルや個性的な構築美を狙うよりも、楽想を順番に組み合わせたDJ的なアプローチと感じる。

 ナムルックはどこまで考えて本盤を作ったのだろう。直感的にアイディアを順番に並べて仕上げたようにも聴こえた。ドラマやストーリー、意外性は読み取れない。アラブやアジア、アフリカのエキゾティックさを主軸に、西洋の直線的なリズムで強引にまとめ上げた。 
 芳醇なリズム・アプローチが取れそうな題材なのに、どこもかしこも整然とタイトなビート感で埋め尽くされてる。全編に漂ううっすらとしたスペイシーさが、本盤の特徴か。

Track listing:
Travelling Without Moving (60:00)
1 Trip 1 11:45
2 Trip 2 5:59
3 Trip 3 2:23
4 Trip 4 4:30
5 Trip 5 7:37
6 Trip 6 3:52
7 Trip 7 0:59
8 Trip 8 4:34
9 Trip 9 8:22
10 Trip 10 4:31
11 Trip 11 5:43

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