Colin Hay 「Going Somewhere」(2000)

 再びギターと歌のシンプルな構成にこだわった。キャリアの経過点に見えてしまう。

 ルーツ帰りかパーソナルさを打ち出しか、それとも単に低予算狙いか。前作から2年ぶり6thソロの本盤は、3rd"Peaks & Valleys" (1992)に似てギターのみをバッキングのシンプルな構成を採用した。
 とはいえ"Peaks & Valleys"と異なりギターをダビングの箇所もあり、時にアコギとエレキを重ねるため、安っぽさやフォーキー路線とは少し違う。ファンの贔屓目かもしれないが、デモっぽい雑さもない。むしろスリルを強調のため、敢えて他の楽器を取り去ったと思える。

 しかしこのころのコリン・ヘイには迷いが見えてしまう。本盤では過去作のカバーを取り上げ、さらにのちの盤で本盤収録曲をセルフ・カバーする。15年以上たってキャリアを重ねた今の視点で見ると、振り返りと次への助走が混在しているためだ。
 リアルタイムでは、シンプルなアレンジで内省的に向かったかと思っていた。ただ、過去作のカバーはいただけない。スピード感を減じて大人しくなってしまった。守りに入ってるのかな、と感じた。
 少し寂しくもあり、等身大のヘイを楽しめもする。
 アレンジこそシンプルだが、喉は決して衰えていない。新曲群だって瑞々しい。要はアレンジだけ。ロック・ビジネスから一線を引き、穏やかに音楽へ向かっていたのかもしれない。

 なお、本盤の撮影とアート・ディレクションでのちに妻になるCecilia Noëlが初めてクレジットされた。プライベート的には、ヘイは充実してたはずだ。

 全13曲中、セルフカバーは3曲。(2)は1stソロ"Looking for Jack",(4)は"Wayfaring Sons" (1990),(6)は前作"Transcendental Highway (1998)"で発表済みだ。
 さらに4曲はこのあと、再演される。
(1)(8)(9)は次のソロ"Company of Strangers" (2002)にて。(7)は次の次、"Man @ Work" (2003)で。

 後追いでソロ作を一通り聴くと、ちょっと捉え方に戸惑ってしまうだろう。(11)のスライド・ギターなど、アメリカ風のカントリーに沿ったアプローチも聴ける。いっぽうで最終曲の(13)はライブ音源。無伴奏で淡々と緩やかにヘイは歌う。この朗々とした雰囲気は英国トラッドに通じる。敢えて楽器を構えず、なぜ完全な独唱で披露したのか。

 文化の混交をヘイは狙っていたのかな。
 英国生まれで14歳で豪州に住み、このころはアメリカに拠点を持ったヘイ。すべて同じ英語圏とはいえ、それぞれ異なる文化を持つ。この住み分ける感覚は、日本人な僕には実感できない。
 空想を逞しくすると、自分の文化的な居心地をどう保つか。パートナーたるCecilia Noëlと知り合い、夾雑物を廃したシンプルな世界観を本盤で素直に表現したのかもしれない。

Track listing:
1 Beautiful World 4:04
2 Looking For Jack 2:57
3 Going Somewhere 2:41
4 Wayfaring Sons 3:42
5 Children On Parade 3:38
6 My Brilliant Feat 3:26
7 Waiting For My Real Life To Come 5:46
8 Don't Wait Up 4:00
9 Lifeline 4:03
10 Circles Erratica 4:05
11 Water Song 4:10
12 Maggie 4:21
13 I Don't Know Why 2:53

Track listing:
Colin Hay:Vo,g

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