Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「LA NÒVIA」(2001)

 南仏トラッド曲をアシッド・マザーズ流に解釈した一枚。 AMTらしさを特にボートラで演出しつつも、トラッドやプログレ、ロックなどさまざまな切り口で楽しめる。むしろロック好きだがAMTは未聴って人の入門盤に向いてるかも。

 津山篤のトラッド好きが強く出た選曲か。タイトル曲は00年頃のAMTライブで定番のレパートリー。オクシタンと呼ばれる南フランスでのロマンス語の一種を使う13世紀ごろの文化圏で歌われた伝承歌らしい。

 もとは00年にLP一枚で(1)が米Eclipse Recordsから発売された。録音は00年の5月。これが01年に英Swardfish RecordsからCDで再発。このとき、2曲のボートラが付与された。
 (1)は小泉一がドラム担当の初期メンバー。だがボートラの(3)は録音時期が不明だが一楽儀光にドラムが変わってる。(2)も河端一、コットン・カシノと津山の3人による録音。このためまさにボートラが2曲ついた格好となっており、何も知らずに本盤を聴くと今一つバランスが悪い。冒頭に40分の楽曲がブチかまされたあと、3分の小品と17分の中編って配置だから。
 じゃあボートラがいらないのかと聞かれたら、もちろんいる。貴重なAMTの当時のスタジオ音源だ。
 
 ということで、ちょっととっつきは悪い。

 タイトル曲(1)の冒頭はトラッド色たっぷり、津山の多重ボーカルによるアカペラ・コーラスで始まる。高音はコットン・カシノも歌ってるかな?渋く鈍い響きが充満し、じっくり匂い立つ世界が披露された。
 5分間と充分な時間を取って歌が続いたあと、いよいよ演奏へ。35分以上にもわたるジャム・セッションが繰り広げられた。

 シンコペートしない上下降するフレーズを軸に幾層にも重ねられた河端のギターが吼える。この曲では東洋之もエレキギターを担当し、シンセは河端が重ねてるとのクレジット。
 スタジオ録音の重層性を生かし、河端はブーズーキやバイオリンなど弦楽器を複数重ねて分厚い混沌とした音像を作った。津山やコットンがボーカルをかぶせて彩りを複雑に描き、小泉のドラムが力強く煽る。

 欧州トラッドの硬質で強固なムードに加え、インドあたりのしぶとい持続性の双方を感じさせるのが、AMT流だ。
 基本的なテンポは大きく揺れずとも、メインをはる楽器がひっきりなしに入れ代わる。普通に聴き流すとシンプルなグルーヴだが、細かく耳を澄ますと実に丁寧なアレンジで手が込んでいる。左右に細かく降るパン操作を中心のミキシングも、サイケっぷりに拍車をかけた。

 長尺を力技一辺倒ではない。13分や20分過ぎにはリズム楽器を消してテンポを落とし、煙った幻想性を表現するブレイクを入れた。そしておもむろに再加速する。
 この辺のドラマティックな演出もかっこいい。基本はジャムと思うが、むしろプログレ的な構築美が根底に存在する。
 河端流のギターソロやシンセが飛び交うAMTの祝祭感よりも、まさにトラッドを題材にじっくりとスタジオで音を重ねた緻密な作品だ。
 
 (2)はサイケ・フォーク色の強い楽曲。津山の歌を配置し、静かで美しい風景が描かれた。エコー満載のコットンの声や、バイオリンをドローン楽器に仕立てた河端の演奏で、雰囲気は一気に妖しく膨らむのだが。
 勢いによる熱狂でなく、酩酊感が心地よく膨らむ小品。

 (3)も実験的なアレンジだ。最初は抽象的な音やノイズが延々と漂う。暗く硬質なアンビエント。鐘の音に誘われる荘厳な空気が、次第にギター・ノイズに塗り替えられ、テンポが加速して疾走に向かう。
 17分のコンパクトだが濃密なドラマが演出された。シンセが飛び交いギターが暴れ、リズムはせわしなく後押しする。そしてベースはしっかりアンサンブルをドライブさせた。
 AMTのサウンドに慣れると、長めな冒頭の助走も含めて、加速する怒涛の構成を楽しめる佳曲。
 さんざん盛り上がった挙句にエンディングがカットアウトで、唐突に放り出されて現実へ戻る喪失感が凄まじい。
 
Track listing:
1.LA NÒVIA 40:40


2. Bois-tu de la bière? 3:49
3. Bon Voyage au LSD 17:26

Personnel:
河端一 : electric guitars,violin,bouzouki,bowed peacock harp,synthesizer,electric sitar
津山篤 : bass,vocals,acoustic guitar,recorder
東洋之 : electric guitar,synthesizer
Cotton Casino : vocal
小泉一 : drums,percussion (on 1)
一楽儀光 : drums (on 3)

Recorded at at Acid Mothers Temple, May.2000
Engineered ,Produced by 河端一

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