John Coltrane 「Kulu Sé Mama」(1965)

 新たなる助走か、それとも場繋ぎか。混沌な一枚。

 他界した時点で、最新のオリジナル・アルバム。だが実際の録音は2年前だった。発売順に並べると、どうやらこんな感じ。
65/2 A Love Supreme
66/2 Ascension
66/9 Meditaitions
67/1 Kulu Sé Mama
 そして67年6月17日に没。

 コルトレーンは決して晩年に録音をさぼってたわけじゃ無い。だがなぜ、この順だろう。そしてなぜ、そこまでリリースを絞ったのだろう。
 完全に後追いでジャズを聴いており、当時の空気感は分からない。けれど2年間で4枚。しかもがんがんフリージャズ色っぽいが、きっちり構築を意識した盤が並ぶ。このリリース感覚や音源の取捨選択は、コルトレーンとインパルス!側、どちらの意向かは分からない。
 けれども実際は、本盤発売の時点でコルトレーンはぐんっと先へ進んでいた。

 そもそも音源録音の観点では、"Kulu Sé Mama"のほうが先。なのに"Meditaitions"が先に出てた。"A Love Supreme"、"Ascension"と続いてなぜ、"Meditaitions"をリリース?セッションにまとまりあったから?
 ならばなぜ、過去音源の発掘寄せ集め風に"Kulu Sé Mama"をリリース?もしコルトレーンが生き続けたら、インパルス!はどのように彼をプロデュースしたのだろう。興味深い。

 本盤は65年6/10,6/16と10/14のセッションから一曲づつ選ばれたオムニバスのような盤。メンバーも曲によって異なる。コルトレーンの実験性を集大成なアルバム、ともとれる。しかし発売の一年半前。彼はもっと先に進んでいたはずだが。

 録音は3→2→1の順になる。すなわち最も混沌した曲が、一番最後に録音された。
 なおそれぞれこの曲以外にも録音は行われており、死後に発掘された。今は本盤CDのボートラに3曲が収録あり。それ以外にも録音あるらしいが。

 メンバーで見るとギャリソン、タイナーとジョーンズのカルテット編成で3を録音。だが満足せず、約一週間後に同じメンバーで2を録音。
 そして数か月後、2サックス、2ドラム、2ベースにピアノ、パーカッションのダブル・カルテット的な編成で1を吹きこんだ。

 似たような編成での"Ascension"は、65年6/28。つまり1の前。妄想するならば"A Love Supreme"で手ごたえを得るも、続編は収録が難航。
 "Ascension"で新たなアイディアを形にして、改めてもう一度(1)を4ヵ月後に録音した。
 ところがそれもいったんはお蔵入り。カルテットにラシッド・アリとファラオ・サンダースを入れた"Meditations"を発表。

 そしておもむろに本盤が、過去の蔵出し集大成としてリリースって格好だ。なんとも中途半端。迷いの過程にいたかのよう。レコード会社がコルトレーンの売り出し方を迷ってたのかね?当時の内情を知りたいものだ。

 アルバムとして、本盤は異様なストーリー性を持つ。混沌でアフリカ風の熱狂を炸裂させる(1)のみなA面と、タイトなカルテット編成のB面。(2)は吹き荒ぶ嵐をシンプルに表現し、(3)で雄大なピアノを幕開けに懐深く感情を受け止めた。
 構成の妙味が実に効いている。消化不良に疾走で幕を開け、見事な大団円だ。

 (1)はごっちゃりミックスされ、団子で爆発する凄みをたっぷりはじけさせた。ソロ回しではなく、同時並行でアドリブが進む。無造作に挿入されるボーカルが異様にオンマイクでリーダーめいた存在感を出した。
 "Ascension"同様に本盤も、でたらめではなくコルトレーンの指揮なり仕切りが明確にあったとも推測される。同時進行しつつもサウンドは崩れていない。
 今ならば無秩序にとどまらぬ、骨太なグルーヴィさも聞き取れるだろう。

 だからこそ、(2)での落差が凄い。方向性はサックスを筆頭にフリーな勢いあるけれど、楽器編成が半分になって見通しは急に明瞭になる。(1)の夾雑物を削ぎ落し、骨組みの確かさを示した。
 なのに(3)でさらに音楽は分かりやすくなる。ロマンティックなピアノの頼もしさが強い印象を植え付けた。

 コルトレーンは求道者って思いこみがどうしてもぬぐえない。死後のブランド・イメージが強すぎる。
 けれども本盤では胎内回帰のように聴き進むにつれて、音楽は分かりやすくなっていく。実際に録音時間も遡る。
 
 多面性の表現か。高まりすぎた方向性を地平へ引き戻しか。次なるステップに向けて仕切り直しか。もっとシンプルに、最初は混沌でも最後で安楽に聴き終わろうってコンセプトか。
 深読みもできる。そして聴き進めるにつれて文字通り、心穏やかになっていく。
 圧倒的な名盤ではない。けれども「生前のオリジナルアルバム」って観点で聴くと、色々と生き様やコンセプト戦略に考えが広がる、興味深い盤だ。
 表情が読めないジャケット写真。コルトレーンは、何を思っていたのだろう。
 
Track listing:
1.Kulu Sé Mama (Juno Se Mama) - 18:50
2.Vigil - 9:51
3.Welcome - 5:34

Personnel:
John Coltrane ? tenor saxophone

Pharoah Sanders ? tenor saxophone, percussion (on 1)
McCoy Tyner ? piano
Jimmy Garrison ? double bass
Donald Rafael Garrett ? bass clarinet, double bass, percussion (on 1)
Frank Butler ?drums, vocals (on 1)
Elvin Jones ? drums
Juno Lewis ? vocals, percussion, conch shell, hand drums (on 1)

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