Colin Hay 「Wayfaring Sons」(1990)

 改めてコリン・ヘイのファンになった傑作アルバム。冒頭曲の爽快さに、やられた。

 メン・アット・ワークの2nd"Cargo"(1982)は大好きなアルバムだ。だが続く"Two Hearts"(1985)がどうにもパッとせず、彼らから興味は失っていた。だが92年にレコ屋でふと見かけた本盤。「へえ、ソロで活動してたんだ」と思い入手、一曲目を聴いてぶっ飛んだ。なんてカッコいいんだ、と。

 メン・アット・ワークを86年かそこらに解散後、ヘイは"Looking for Jack"(1987)でソロ・デビュー。どの程度、売れたかは知らない。今は廃盤で入手もできない。一部はYoutubeで聴けるけど。ぼくはまだ、持ってない。だがビルボードで126位といまいちの売り上げ。コロンビアから契約が切れたか、表舞台から消え去った。

 そして数年後、メンバーをすべて仕切り直して、故郷であるスコットランドの要素もぎゅっと押し詰めたロック・アルバムが本盤だ。

 Paul GadsbyはMen at Workの3rdにしてラスト・アルバム"Two Hearts"の"Everything I Need"の一曲だけで、ベースを弾いていた。
 Gerry HaleやRobert Dillonは豪のスタジオ・ミュージシャンかな。二人はZydeco Jumpってバンドのメンバーでもある。
 この3人でツアー・バンドを組んだみたい。
 全面参加のRobby Kilgoreはスタジオのゲスト参加扱いか。彼は名うてのサポート・ミュージシャンとしてミック・ジャガーや坂本龍一とも共演歴ある。

 vo,gのヘイにb,ds,vlnとちょっと変わった編成。トラッドとは言わないが、豪州のロック・バンド路線から少し塩辛いイギリス風味に味を寄せた。

 とにかく(1)が素晴らしい。バイオリンとアコギのかき鳴らしで爽やかにイントロが始まる。ボーカルが素朴に歌い、ハーモニーが色を添える。ワンコーラス歌って、ブレイク。"Oh yeah"ってヘイのシャウトに導かれ、ドラムとベースが加わる。なんていかしたブレイクだ。できるだけ、大音量で聴いて欲しい。
 鍵盤もアコーディオンみたいな音色を使って、スコットランド風味の渋さを漂わす。

 思い返すとメン・アット・ワーク時代も、似たようなテイストはあった。だが若さゆえと豪州風のライブで鍛えられるタイトなアンサンブルに埋もれてた。けれども本盤でヘイはあっけらかんと、自らのルーツを表現した。
 
 アルバムに通底は爽やかでちょっと苦い風合い。シンプルなバンド・サウンドが産むドライブ感が基本だが、少し切ないが乾いたメロディ・ラインが持つ引っ張り具合が全編にわたって披露した。
 強烈なキャッチー感は無いけれど。まさに"Cargo"に通じる、ほろ苦いメロディ・センスや、いきなりハイトーンに飛ぶ歌いっぷりがそこかしこで楽しめる。

 ただし興味深いのは、バンド・サウンドのみにこだわっていないところ。鍵盤をふんだんにダビングに加え、ヘイの多重ボーカルを駆使した。バンド結成が先か、本盤がきっかけかはよくわからない。
 けれどもとにかく、本盤でヘイはライブの名刺代わりなバンド・サウンドの構築でなく、アルバム単独で成立しうる音像を目指した。その象徴が(5)だ。女性コーラスを含み、ゴスペル風味を漂わせて伸びやかで雄大な世界を作った。

 ライブとスタジオ、双方で別の世界を成立する路線を狙ったか。
 いずれにせよ本盤は高い完成度を産んだ。いたずらに多重ダビングに溺れることもない。ギターのかき鳴らしを軸に、かっちりしたリズム隊を配置。バイオリンにリードを任せ、シンセが太くオブリを奏でる。
 やりすぎず、それでいてみっちりサウンドは詰まった。いい感じのバランスで出来上がってる。

 シングルは(2)。PVも作られた。


 これは本来、ヘイの代表作になるべき盤だった。それだけのクオリティもある。タイトな演奏はしっかりプロデュースされた。
 自らをプロデュースにクレジットは、Men at Workの"Two Hearts"ぶり。さらにエンジニアのElliot Scheinerを共同プロデューサーに立てた。グラミー賞も取得した評価の高い人。だが、やりすぎない。
 地に足の着いた、英国風味の見事なロック・アルバム。甘さを廃し、乾いた大人の世界を描いた。
 
 だが、売れなかったらしい。結局本盤のMCAとはワンショットのリリース契約で終わった。
 曲作りの充電か、それともツアーを繰り広げていたのか。アルバムは二年間、間が空いてしまう。そしてまたもやレーベル移籍。簡素な弾き語りの"Peaks And Valleys"(1992)がリリースされた。

 本盤は廃盤だがプレミアはついてない。ぜひ、聴いてみて欲しい。今ほど枯れていない。次の大ヒット目指しつつ、無理に背伸びしすぎない。自然体のコリン・ヘイが聴ける。

Track listing:
1 Wayfaring Sons 3:31
2 Into My Life 4:20
3 Storm In My Heart 3:33
4 Dream On (In The Night) 4:56
5 Not So Lonely 4:17
6 Don't Drink The Water 3:43
7 Help Me 3:04
8 Dreamtime In Glasgow 3:51
9 Back In My Loving Arms 3:31
10 Ya (Rest In Peace) 3:35

Personnel:
Colin Hay - vocals, acoustic 12-string guitar, acoustic 6-string guitar, electric guitar, E-Bow
Gerry Hale - violin, mandolin, background vocals
Paul Gadsby - bass guitar, background vocals
Robert Dillon - drums, percussion
Robby Kilgore - keyboards
Jann Karam - background vocals ("Not So Lonely")

関連記事

コメント

非公開コメント