Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Cometary Orbital Drive to 2199」(2013)

 ライブでの定番曲の3バージョンでアルバム一枚に仕立てた。ミニマルな熱狂の魅力を、さまざまなアプローチで味わえるとは、まさにこのこと。

 "Cometary Orbital Drive"(2008)と似たようなジャケットで、ぱっと見で見分けづらい。アシッド・マザーズがらみのジャケットは区別しやすいのに、珍しいデザインの選択だ。
 ピラミッドの背景が白夜は"Cometary Orbital Drive"、星空の背景が"Cometary Orbital~"と覚えよう。テストには出ないが。

 CD、LPともに500枚づつ限定で、合計1000枚プレスのみ。同じ曲のバージョン違いなスタジオ録音で、(2)のみ山本精一がゲストの11年12/10に名古屋の得三でライブ音源を収録した。
 山本がゲストの"Mega Psychedelia:メガサイケ"(2011)でもこの曲を演奏してるが、こちらの盤は09年12/12と二年前の"AMT祭りvol.8"でのテイク。それと聴き比べもできる趣向だ。

 本盤に収録曲は前述の"Cometary Orbital Drive"(2008)が音盤では初出となる。ざっと調べた程度では、ライブでも08年までしか遡れず。実際のところは不明。

 階段状に上がる6音のリフがこの曲の特徴。特に本盤では40分弱にもわたる(1)が圧巻だ。最初は緩やかなテンポで始まり、15分位からじわじわと加速が強くなる。
 リフを刻むのは田畑のギター・シンセ。背後で河端が歪みまくった音色でギター・ソロを続ける。ソロの定位は左右を飛び交い、シンセが充満してサイケ度合いを煽った。津山のベースは力強くドライブし、志村のドラムは激しくシンバルを打ち鳴らす。

 ミニマルな展開ながら疾走し飛翔する解放感が本曲の魅力であり、テンポこそ高まるがきっちり着実に続くリフが確かな係留感を持つ。
 熱狂と理性を併行させ、ディスコ的な構築美と奔放なインプロの二面性を持ち続ける姿勢は、まさにROVOを連想する路線だ。
 "Pink Lady Lemonade"でもリフが重要な位置を示すし、アシッド・マザーズでリフ連続の構成そのものはさほど違和感ない。けれどもこの曲は、明確なリフの連続による快楽性をダンサブルに追求した。

 生演奏のダイナミズムによる自然な揺らぎが、AMTの魅力の一つ。だがここでは整然としたミニマル性を強調した。アタックが強くなったり、加速しても冷静さは常にどこか残っている。一歩引いた祝祭感が、歓喜の一方で静かに頭を冷ます。とはいえライブで聴いたら、このスピード感と電車道な勢いに燃え立つが。

 冷静さを追求が(3)。ここでは打ち込みビートでデトロイト・テクノ風の硬質さをぐっと強めた。むしろロボット的なAMTサウンドの異様さが面白い。

 間に挟んだ(2)では、山本精一の緩やかなフレーズ感と、混沌に煙るAMT側のソロが林立するさまがスリリング。リフは常に残し、猛烈に加速する。(1)の比ではない。
 まっしぐらに突き進み高まっていく。山本のほうがどちらかと言えば冷静だ。
 ギターソロは河端かな?右がAMT、左が山本だろう。うねりながらアドリブのフレーズを伸縮させる山本と、スコーンと痛快に舞うAMT側の対比が鮮やかに決まった。

 ベースは力強くドライブし、ドラムが威勢よく暴れる。そしてシンセが断続的に空間を舞った。AMTの酩酊感と、ある種クールでひとところに留まらぬ奔放さをもつ山本のセッションが、素晴らしくかっこいい。

 つまり長尺で連続と加速の電車道な痛快さの(1)、複数の個性が林立する(2)、メカニカルなクラブ仕様の(3)。どのテイクも収録時間はたっぷり。
 シンプルながら奥深く多彩な側面を持つ、AMTの異形さを味わえる傑作だ。
 
 限定盤のため入手は手間だが、見かけたらぜひ。


Track listing:
1 Cometary Orbital Drive To 2199 39:51
2 Cometary Orbital Drive To 2200 14:28
3 Cometary Orbital Drive To 2201 17:09
 
Personnel:
津山篤 : bass
志村浩二 : drums
東洋之 : synthesizer, dancin’ king
田畑満 : guitar, guitar-synthesizer
河端一 : guitar, makotoronics

山本精一 : guitar (on track2)

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