Acid Mothers Temple & The Cosmic Inferno 「Anthem Of The Space」(2005)

 インド、もしくはアジア風味。日本の雅楽に通じる荘厳さもうっすら透けるサイケ・ロック。

 アシッド・マザーズ・テンプル&コズミック・インフェルノのデビュー初年度6枚連続リリースの第三弾。フィンランドのレーベルから発売された。
 地獄組の常で冒頭は44分弱の長尺。逆におまけのように(2)で11分弱の楽曲がついてるところが、サービス精神か。あと10分だけ長尺の一本勝負で延ばさず、微妙に変化をアルバムとしてつけた。

 イラストのシタールを弾く女性は60年代の名もなきイラストレイターの作品を引用という。音楽の色合いに通じるジャケットだ。
 (1)はたぶん河端のブーズーキによる高音のフレーズが淡々と続き、さらにダビングされたエレキギターのソロが高らかに舞った。テンポは緩やかに。タンブーラが奥のほうでそっと鳴る。ドローンの要素を踏まえつつ、流れるサウンドは緩やかなサイケ・ロック。
 メロディやテーマは特段に無く、ブーズーキのループによるリフを軸に即興が展開していく。2ドラムのダイナミズムよりもギターの吼えるさまに着目したか。シンセがうっすらと隙間を縫い、音像をスペイシーに編んでいく。
 緩やかに高まっていくさまが(1)の聴きどころではあるのだが、テンション一発の電車道ではない。

 20分を過ぎたあたりで一呼吸置き、エレキギターはいったん身を潜める。フィードバックを余韻に置き、東のシンセがきらめいて静かな音像に変わった。
 エレキギターのノイズ、シンセの脈動、パーカッションのざわめき、ドラムの静かなばらつき。中盤でいったん、ノービートの混沌が現れる。
 この大きな変化を持つ構造が、この曲の特徴だ。完全な力押しではない。中盤でもマレット打ちのように2ドラムが左右でワイルドにタムを鳴らすけれど、根本は静かなひととき。
 一筋縄ではいかずメリハリを付けた長尺曲だ。
 そしてもう一度、冒頭のブーズーキがリフを奏で、エレキギターが高まる。いったん盛り上がって、沈んで浮かび直す。ドラマティックな展開を見せた。没入するには物足りない展開だが、逆に単調さはあえて外してきた。

 (2)はテンポ・アップしたロック。ギター・ストロークに導かれ、2ドラムが派手に鳴ってベースがブイブイ唸る。シンセがそっと吹き上がる、(1)よりぐっとわかりやすいポップな楽曲。
 取っつきやすさでは、圧倒的にこっちのほうが上。むしろこの曲で40分押したら、味わいは軽く薄いかもしれないが、ぐっと親しみやすい盤だったろう。その路線でいかず、影をまとう(1)を中心にするのが、地獄組のこだわりか。

 (2)は女性ボーカルっぽい声も聴こえる。加工されており、委細は不明。クレジットにも特段のゲスト参加な記載もない。メンバーが高い音域で歌ってるだけか。
 (1)と同様に明確なテーマのメロディは無いけれど、ギターのフレーズはあるていどくるくると似たようなメロディを奏で続け、ハーモニーの歌声も同じ旋律を瞑想的に歌い続ける。
 
 明らかにインドを意識してるが、インド音楽へ寄り掛かりはしない。本質はアシッド・マザーズ節。淡々と展開する混沌にインド要素を混ぜた、くらい。そしてうっすら漂う酩酊感には、雅楽に通じるおごそかな雰囲気もわずかに漂う。これこそが、日本人ならではの染み出す色合いというものか。

Track listing:
1.Anthem Of The Space (tabata / Kawabata) 43:54
2.Poppy Rock (tabata / Kawabata) 10:47

Personnel:
河端一 : guitars, bouzouki, tambura, percussion, RDS-900, speed guru
田畑満 : bass, vocals, percussion, maratab
東洋之 : electronics, dancin'king
志村浩二 : drums, latino cool
岡野太 : drums, god speed

recorded at Acid Mothers Temple, Mar.-Apr.05
produced & engineered by 河端一
degital mastered by 吉田達也

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