【Disc 3】Prince 「Crystal Ball」(1998)

 そして3枚目。3枚組蔵出し音源集の感想を曲ごとに書いてみる。

 特にディスクごとにテーマ性を変えてないと思うが、本盤ではファンクさやライブ性をさらに強調した印象あり。
 プリンスの音源をすべて追ってる人がいるとしたら、発売時点で完全な初出は(3)(4)(9)(10)あたり。やはり「レアテイク集」って趣きで「知らない曲ばかり」ってかたちにならない。むしろプリンスをよく知らない人のほうが、斬新に当時は楽しめたろう。そのわりに取っつき悪い楽曲ばかりだが。

Disc 3:
1. Days Of Wild (9:19)
2. Last Heart (3:02)
3. Poom Poom (4:32)
4. She Gave Her Angels (3:53)
5. 18 & Over (5:40)
6. The Ride (5:14)
7. Get Loose (3:31)
8. P. Control (Remix) (6:00)
9. Make Your Mama Happy (4:01)
10. Goodbye (4:35)

1. Days Of Wild (9:19)

 いきなり長尺の9分にわたる95年12月9日のライブ・バージョン。94年以降のライブでは披露済みのナンバーだった。シンセがベタッと鳴るリフが安っぽくて当時は苦手だったが、今聴くと悪くない。
 シンプルなサビを軸にして、プリンスがラップ風に語り掛けて盛り上げる曲。黒々と粘っこいノリが特徴だ。まさにライブ演奏が映える。

 多分僕は無意識に、アップ・テンポか甘いバラードのプリンスを求めていたのだと思う。だがプリンスはこのころ、ミドル・テンポのファンクへ特にこだわって面白い曲を次々に発表していた。ぼくのリズムの好みが当時、ピンとあっていたならなあ。もっとプリンスをリアルタイムで楽しめていたろう。ライブを見てたら、感想は大きく変わったかもしれない。そうそう、ぼくは結局プリンスを生で見ることは叶わなかった。

2. Last Heart (3:02)

 ブートで流出済みだった86年頃の曲。"Dream Factory"収録候補曲でもあった。うわずるアップテンポが心地よい。多数のボーカルを足し、ホーン隊を加えてゴージャスに仕上げる。
 力押しでなく抜きもアレンジに入れ、指数多いベースがアクセントをつけた。サックスも軽やかに鳴り、ポップで親しみやすい。キャッチーさが敢えて地味かも。当時のプリンスは公式発表アルバムが冴えわたっており、なまじの曲だと抑えて聴こえてしまう、えらくレベル高い話だが、当時のプリンスはそれくらい期待値が高かった。

3. Poom Poom (4:32)

 サビで弾む"Poom Poom"って響きの面白さのみで作ったようなファンク。単色でシンプルな構造が当時は単調に聴こえてしまった。今聴き直すと、シンプルなアイディアを飽きさせないよう、語りや合いの手を工夫して決して一本調子ではない。
 ほんのりとユーモラスなノリで、飛びかうプリンスの多重録音が効果的だ。どこか重心低く、雑駁なパワーを漂わす。

4. She Gave Her Angels (3:53)

 キャッチーで感動的なバラード。当時、この盤で好きな曲だった。泣きのギターがわかりやすいかっこよさで吼える。ピアノを中心の甘やかなムードがストリングスで補強された。
 "Emancipation"時代の曲で、当時の完全に未発表曲。マイテの妊娠を受けて歓びに溢れた気持ちで作ったらしい。その後の悲劇を思うと、何とも痛ましいが。
 なにはともあれ、ギターが高らかに歌い上げる大胆に鮮やかな曲。

5. 18 & Over (5:40)

 これも95年以降のライブで定番の曲だった。ループするミニマルなファンクネスを追求した曲で、正直当時は単調だなと思っていた。繰り返しこそが狙いだ、と気づいて聴き方を変えると、逆に面白い。単純なループに留まらぬよう、微妙な音像の出し入れで違いを毎回微妙に変えてる、プリンスの工夫が分かる。
 アイディア一発のファンクをいかに変化つけるか。3分あたりの和音がぐにゃっと変化する色合いがこの曲の最も強いアクセントだ。

6. The Ride (5:14)

 これもライブ・テイクで、録音は(1)と異なり95年10月29日のペイズリー・パークでのライブより。プリンスにしては珍しく、もろにブルージーさを出した曲で、プリンスが歌いながら自分のエレキギターでオブリを出す。一人で成立しそうなアンサンブルを、リズム隊がガッチリ支える構造。
 ホーン音色は鍵盤が担当し、もう一人の鍵盤はオルガン音色でオブリを出す。さらにもう一人、別のオルガン音色もいるように聴こえるが、ホーン音色の奏者が合わせて担当かな。

 NPGのグルーヴとプリンスのノリをがっつり封じ込めた曲。メロディはシンプルだが味は濃い。

7. Get Loose (3:31)

 "Come"(1993)の曲をDJメガ・ミックス風に切り刻んだ曲。なぜ収録したか、なぜこんなテイクを作ったかが謎だ。オリジナルも同様の味わいがあったけれど、さらにドライで骨格のみを強調したかのよう。いまいちこの曲は、プリンスの狙いがピンと来てない。もう少し、聴きこんだら感じるものがあるかも。

8. P. Control (Remix) (6:00)

 これも"The Gold Experience"収録曲のリミックス。もう少し軽くイメージを変え、スクラッチ音色でヒップホップ寄りか。もしかしたら当時の売れ線狙いの工夫か。オールドタイム扱いされてたプリンスとしては、最先鋭の音も作れると自負もあったろう。
 とはいえ敢えて本盤に入れる必然性も不明。これまた、謎が続く。上手く解釈できていない。

9. Make Your Mama Happy (4:01)

 86年頃の作品。ブートで流出してたかはよく知らない。ホーンが軽快に鳴り、リズムも跳ねる。次々に溢れるグルーヴを噴出させた一曲であり、だからこそ突出したものもなくボツったのではないか。
 いきなりフックから始まり、ときおりの場面展開を挟みつつもしなやかに疾走する。硬質で鋭角なプリンスのドラムを軸に、ギターとベース、鍵盤でプリンス特有のノリを作った。
 これも聴くほどに、いくつもアレンジの技に気づく。まだまだぼくはプリンスの既発曲に新鮮さを感じる。

10. Goodbye (4:35)

 91年の録音で、他の曲とはちょっと違う時期の作品。これもブートで流出あり。"Red"というブートに同名曲があるけれど、これはマーガレット・コックスが歌うゴスペル風の全く違う曲。
 "Emancipation"のアウトテイクで、しっとりしたミドル・テンポの佳曲。クレア・フィッシャーのストリングスが柔らかく飾った。生々しいプリンスの歌声が、繊細で柔らかな響きで迫る。切ないメロディが美しい。本ボックスをそっとふくよかにまとめた。
 こういう綺麗な未発表曲も、プリンスのVaultにはいくつも眠っていそう。いつか、明らかになって欲しい。

 ということで3枚目の感想はここまで。いわゆる蔵出しとは少し違う中途半端なコンセプトながら、プリンスの多様な才能が味わえるボックスなのは間違いない。じっくり聴くほどに、ふっと気づきがある面白い盤だ。

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