【Disc 2】Prince 「Crystal Ball」(1998)

 2枚目。3枚組蔵出し音源集の感想を曲ごとに書いてみる。

 アルバムごとのテーマ性は不明だが、この盤では15分にわたるセッションが目玉だ。まさにこんなの、本盤みたいな企画でないとリリース無いだろう。よく残してた。よくリリースしてくれた。
 プリンスの音源をすべて追ってる人がいるとしたら、完全な初出は(2)(10)のみか。やはりこのボックスは、ライブ演奏のみでCDにしそびれたレア・テイクやブート流出曲をまとめてみたって側面が強いのかもしれない。

Disc 2:
1. Interactive (3:04)
2. Da Bang (3:20)
3. Calhoun Square (4:47)
4. What's My Name (3:04)
5. Crucial (5:06)
6. An Honest Man (1:13)
7. Sexual Suicide (3:40)
8. Cloreen Baconskin (15:37)
9. Good Love (4:55)
10. Strays Of The World (5:07)

1. Interactive (3:04)

 当時CD-ROMゲームがわずかに流行ってた。いろんなところをクリックして、映像や音源などを楽しむって企画。当時はパソコンを持っておらず、楽しめなかった。プリンスは"Interactive"(1998)を本盤の前年に発表、そこでの新曲がこれだった。当時は聴けなかったからね。本盤での収録は嬉しかった。
 シンプルなファンクでリズムがバタつく一方、シンセできっちりタイトに締め上げる。ギターソロもあり、ポップに仕上がりながらも妙にモッサリ感じる。なぜだろう。今回も繰り返し聴いたが、今一つ理由がうまく説明できない。
 オーケストラ・ヒットの大仰な響きがやはり、時代だな。アコースティックなら古びないのに。

2. Da Bang (3:20)

 最初は緩やかにうねり、サビから軽快にBPMを上げてく曲。裏拍でスネアがきっちり鳴り、タンバリンが振られプリンスは喉を絞る。一気に盛り上がればいいものを、ふたたび平歌で緩めに落とすという。もどかしい上下の振れを楽しませる曲。
 94年頃はプリンスもすっかりガードが固くなり、ブートに未発表曲の流出は無かった。少なくとも、ぱっとブート屋を眺めるくらいでは。
 その意味で95年録音というこの曲は、本盤で初お目見え。すれっからしのマニアならば、本盤で最初の「初めて聴く曲」だったのではないか。ぼくはそこまでマニアじゃなかったので、既にDisc 1で新鮮な曲もあったけど。

3. Calhoun Square (4:47)

 93年頃からライブでは披露済みの曲。野太いムードでライブ演奏風のダイナミズムが漂う、重たいファンク。甲高く線の細いプリンスの歌声の馴染みはじわじわっと。やはりこういう曲と、プリンスの声質が生み出す違和感は独特だ。
 ダビングは一部のパーカッションとキーボード、ギター。ボーカルの一部も後でかぶせて聴こえるけれど。本質は骨太な一発録りの迫力がこの曲の魅力。
 発売には至らなかったが、1テイクのセッションをそのまま封じ込めたコンセプトのアルバム企画、"The Undertaker"の予定曲で、93年6月14日にペイズリー・パークで収録という。

4. What's My Name (3:04)

 これも93年頃にライブで披露の記録あり。スクラッチがそこかしこに入る、ヒップホップ風味を足したスタジオ録音。プリンスは囁くようなゆっくりした朗読を載せて、特段のメロディは無い。
 バンド演奏のうねりに言葉を合わせたプリンス流のラップか。特にフロウは意識せず、淡々と声がかぶさった。
 ベースの派手なスラップや高速フレーズが聴きもの。プリンスでなくNPGのソニー・Tが演奏してるらしい。

5. Crucial (5:06)

 これもブートでおなじみの名曲だ。"Parade"ツアーのあとに録音と言われるが、当時の"Dream Factory"や"Crystal ball"の収録曲候補にはならなかった。"Purple rain 2"みたいな自己模倣のアルバムを作るならまだしも、いまさらこの手の楽曲で押す気はプリンスに無かったのだろう。それくらい、"Purple Rain"に直結する路線のポップなミドル・テンポの名曲。
 ブートでは2分半ほど長い7分越え。さらにエリック・リーズがサックスを載せたバージョンもある。ぼくはどちらかと言えば、こっちのほうが好き。

 本盤でリリースはエレキギターのバージョンを主軸にして、ソロは最後にあるけれどキュッと縮めた。
 斬新さ、とは違う。そうではなく、プリンスが"Purple rain 2"を作っていたらって世界観にぴったりハマる観点で、良い曲だ。

6. An Honest Man (1:13)

 "Parade"セッションのアウトテイクで、ブートでは流出あり。いかにもそれっぽい耽美性が漂う。テープ劣化をごまかすため?なんだか雑踏のざわめきがかぶさっている。
 冒頭はプリンスの多重録音アカペラ。終盤でサイケなクレア・フィッシャーのストリングスがかぶる。そうはいっても一分強の小品。
 アイディア一発で、意外とゴージャスな作品。GbVファンのぼくとしては、こういう短い曲も違和感ない。むしろ一筆書きのようにさらりメロディを作り、整える発想は興味深い。

7. Sexual Suicide (3:40)

 これも"Crucial"のブート盤で合わせて流出してた曲。ベースをがっつり利かせ、エリック・リーズのサックスが多重録音でホーン隊を作る。鋭く畳みかける勢いを持ちつつも、ぐっとリズムを係留させ重たく絞った。
 中盤からシンセがさりげなく出てきて、じわっと彩りを増やす。
 
 ばらつくドラム、うねるベース、さりげなく響く鍵盤。Madhouseに通じるジャズ風のグルーヴを持ちながら、プリンスのボーカルががっつり乗る路線。クールで良いね。
 未発表アルバム"Dream Factory"の収録候補曲でもあった。

8. Cloreen Baconskin (15:37)

 もっとも異色な収録曲で、本ボックスの目玉でもある。当時の時点で完全未発表、でなくPrince Vaultによれば83年5月16日にミネアポリスのライブハウス、ファースト・アベニューでジェリービーン・ジョンソンと演奏した、ともあるが。
 ここではモーリス・デイのドラムと、プリンスがベースにボーカル。喉を潰してJB風のセッションを延々15分にわたって繰り広げる。

 スプラッシュ・シンバルがプリンスの掛け声に合わせて打ち鳴らされるあたりが、いかにもJB風。特段の打ち合わせは無い、ジャム・セッションではなかろうか。
 
 メロディや展開はほぼ無い。ドラムのビートを軸にプリンスがベースを唸らせ、キューを飛ばしながら盛り上げる形だ。The Timeの3rd"Ice Cream Castle"の頃に録音という。
 LP時代に15分の録音はほぼLP片面を締めてしまう。当然、発表を目論見でなく遊びのセッションだろう。にもかかわらず、きっちり残してリリースしてくれたことが嬉しい。

 逆にこういう荒っぽいセッションを無造作に乗っけるあたりが、この"Crystal Ball"の自由でこだわらない面白さだろう。ワーナー所属では発売に至らなかったのではないか。
 本当はこういう気軽なセッションもどんどん生前にリリースして欲しかった。

9. Good Love (4:55)

 これは別にレア・テイクでもなく、単純に再録。映画"Bright Lights, Big City"に提供曲で、同盤のサントラに入ってたため容易に入手できた。本曲が新曲をサントラに提供した初めての曲という。
 カミール声で歌われる小粋なポップスで、前のめりのせわしないファンキーさが素敵で、当時から隠れた名曲と思っていた。未発表盤の"Camille"にも収録予定だった。

 舌足らずっぽく聴こえる早回しの歌声が、子供っぽい無邪気さやいたずらっぽさを演出する。打ち込みビートを多用したリズム・トラックも華やかだ。
 ギターやスクラッチ音色も飛び出し、実に丁寧なアレンジとダビングが施されている。公式に既発曲なだけあり。

10. Strays Of The World (5:07)

 ドラマティックなミドルテンポの盛り上がりを見せる大仰な曲。完全未発表な曲で、93年の録音だそう。中盤でスッと抜いてきらびやかな浮遊感を出し、続けてもう一段上げて崇高なムードを出す。
 シンセの音色が少しばかり今だと安っぽいけれど、拍頭をきっちり叩くビートを軸に階段状な盛り上がりを見せる、礼儀正しいゴスペル寄りのファンク。鍵盤の重ねやギターでフレーズをなぞるところ、エンディングのブギ風に加速する展開など、投げっぱなしでない凝りっぷりもみせた。

 というところで、ディスク2の感想はここまで。

関連記事

コメント

非公開コメント