Momus/Joe Howe 「Joemus」(2008)

 チープなエレクトロ・ポップ路線を軸に、耽美な工夫をそっと施した。

 "Ocky Milk"から2年ぶり、珍しくちょっと間を置いてリリースした本盤は、Joe Howeとのコラボ。なんともゲイゲイしいジャケットだ。

 収録曲は共作で、対等な立場にてコラボした。カバーが2曲あり、坂本龍一(4)、クリフ・リチャード(6)。
 前者は坂本の2ndソロ"B-2 Unit"(1980)に収録。ライブで坂本はずっと演奏しつづけたらしく、"Media Bahn Live"(1986)ではライブ・テイクが聴ける。
 後者はクリフの主演映画"Summer Holiday"(1963)の曲で、全英1位らしい。英国人の二人には懐メロなのだろう。

 Joeは本盤で初めて知ったが、イギリスのブレイクコア系ミュージシャンだそう。Discogsにも単独リリースは数枚しか無く、モーマスと知り合った経緯もよくわからない。

 なおブレイクコアとは電気仕掛けのダンス・ミュージック、いわゆるEDMの一派で、ハードコアな打ち込みビートを強調したブレイクビーツらしい。今いち、よくわっておらず。とりあえず激しく派手なテクノ、でいいのかな?

 とはいえ本盤は全体的に見たら、そこまでBPMが厳しくない。モーマス流の耽美な世界観を、ねっとりと打ち込みで表現した。演奏は二人だけで行ってるようだ。(10)にはKyoka Kyoka(vo)が参加したが、経歴の委細は不明。

 硬質で平板なデジタル・シンセの音色が全編を覆う。けれどリズムとバッキングをとりあえず作った、みたいにやっつけではない。細かくアレンジされて奥行きを意識した音像なのが特徴だ。
 むやみにビートを強調させず、穏やかめな印象あり
 ボーカルは時に思い切り加工され、プラスティックな危うさを表現した。生々しい躍動感よりも、作り物っぽさを強調に感じる。

 メロディはどれもセンチメンタル。キャッチーさよりも想いを滴らせたかのよう。
 全体像はチープでシンプルな雰囲気、じっくり聴くと丁寧さがわかる構造だ。

 取っつきにくく、放りっぱなしなメロディが続くなかを、カバーの2曲がうまく締めた。のどかな(2)や(14)と、例外もあるけれど。全体の雰囲気は暗め。
 加工されたモーマスの歌声が、なおさら欝々としたムードを加速させる。その意味で、本盤はモーマスの色が強く出ている。

 ジョーはアレンジの色付けに貢献したが、ボーカルでデュオの方向性で目立たない。モーマスに吸い込まれた格好だ。
 (8)や(11)のようにビートが強く鳴る場面はジョーの役割と思うが。ところどころで聴こえる線の細いファルセットがジョーかも。
 ボーカルは細かくダビングされている。全部、モーマスの声色か電子変調と思ったが、たしかにジョーの声が含まれててもおかしくはない。

 聴き流しそうな一枚。代表作とは言い難い。丁寧な作りも、繰り返し聴くとそこかしこに感じるんだよな。もう少し時間置いて、聴き直してみようか。

Track listing:
1. Birocracry
2. Widow Twanky
3. Mr Proctor
4. Thatness and Thereness
5. Jahwise Hammer of the Babylon King
6. Next Time
7. Cooper O'Fife
8. Ichabod Crane
9. Strewf!
10. Dracula
11. Goddiepal
12. Fade to White
13. Mouth Organ
14. Man You'll Never Be
15. Vaudevillian
 
当時のライブ映像がYoutubeにあった。08年7月28日のグラスゴー公演。しめて20分ほどになる。
  

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