河端一 「Inui.4」(2007)

 きらめくノイジーなアンビエント・ドローン。長尺で酩酊感と緩やかなドラマが展開される。

 多重録音で内省的なドローンをしみじみと演奏する"Inui"シリーズ。第4弾で現状のところ最終作は、67分の長尺で放たれた。

 Acid Mothersとは別に河端はソロ活動も行っており、全10作の"Private Tapes"を自主製作で99年から発売していた。50部限定の極少量にて。
 それと並行し更にパーソナルなドローンに埋没が本シリーズ。第一弾は300枚限定LPで米Siwaから00年に発売された。
 第二弾からは米VHF Recordsに場を移す。なお第一弾も06年に本レーベルから再発あり。

 第二弾が00年、第三弾が05年。そして本作第四弾が07年。あくまでじっくりと作りこみ、リリースに至っている。どのアルバムも多重録音が特徴で、ライブのようにディレイ・ループではない。
   
 本作でもギターとハーディ・ガーディを幾層にも重ねた。メロディや起伏が音楽の骨子ではない。ギターの爪弾きとハーディ・ガーディのうねりで音像を作り、電子音が中を転がる。水がぶくぶくいう音など、サンプリングも混ぜた。
 ループも使っているため、小節感はある。それがギターの爪弾きと譜割がずれてポリリズミックな感触もするが。

 淡々と透き通り、スペイシーで浮遊感ある。酩酊する穏やかであやふやな世界が、ひたすら心地よい。特に本盤では一時間以上に音楽が続くため、心底どっぷりと浸れる。至福のひとときだ。
 繰り返すギターが紡ぐミニマルな色合いの合間を、電子音やハーディ・ガーディが緩やかにうねっていくさまは、雄大で色鮮やかな風景を描く。リズム楽器は無く、譜割でビート感を演出した。
 バッキングとソロの構造ではなく、つぎつぎにさまざまな音が浮かんでは沈むイメージ。何も変わらないが、常に変わり続けている。その点ではミニマルとは言い難い。

 電気的な音触りだが、演奏はアコースティックかつ生演奏。ループの重なりであっても、打ち込みは無い。たぶんベーシックを作り、そこへハーディ・ガーディや電子音を次々ダビングではなかろうか。

 そしてじっくり、じわじわと世界は加速していく。テンポがせわしなくなるのではない。フレーズが次第に熱を帯び、緩やかにスピードを上げた。

 楽曲自体は46分過ぎにいったん、明確な切れ目がある。多層構造がすべて消え、ハーディ・ガーディのロング・トーンのみに移った。ここで曲を変えず、あえて大きな一つの曲にしたのが河端のこだわりか。
 残響を持って震えるハーディ・ガーディ。そこへグリサンド・ギターが重なっていく。
 次第に音圧を増し高らかに響くさまは、巨大な鐘の残響のみを聴いてるかのよう。美しく透徹で、どこか寛いだ抜け感がある。
 終盤でさらに音が整理され、持続音のみが響く。これもハーディ・ガーディかな。余韻がじわじわと引き延ばされ、続いた。
 河端の音への愛情とこだわりが、素晴らしく気持ちいい。

Track listing:
1. Ryo 旅 67:51

Personnel:
Acoustic Guitar, Electric Guitar, Electronics, Hurdy Gurdy, Music By, Producer, Engineer, Photography By 河端一

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