James Brown 「Nonstop!」(1981)

 五目味で迷走中のアルバム。ただしやっつけではない。

 ポリドール時代の末期。ステージでの評判は知らないが、少なくともヒットチャートでは往年の勢いが無く、ロートルだった時代のJB。いまだにCDの再発は無い。ただ、i-tunes storeではさっくり配信再発されていた。Amazonではカタログに見当たらず。いまだにこの辺は、配信プラットフォームで聴ける音楽に温度差がある。

 CD化でメディアの変化をきっかけに、過去の資産をリイシューでフラットに再評価する、90年代前半。この時代があってこそ、JBは生き返ったか。
 少なくとも87年位だと、日本の若者はJBをろくに知らなかった。ぼくは達郎のサウンド・ストリート特集で往年のJBを聴けたくらい。
 でもJBはいろんな分野に影響を与えてた。たとえCD時代の再評価が無くても、ヒップホップのサンプリングで生き返ってたかもしれない。しれっと"Living in the America"の大ヒットを、周りの影響が一切なく飛ばしてたかもしれない。

 ダンス・ビートの快楽要素だけを抜き出したJBは、ある意味で普遍性がある。けれど80年代前半は、まだそこまで割り切れず。流行を取り入れつつ、過去の蓄積を踏まえつつ、自分の立ち位置を探す。そんなマーケティング・センスで本盤は作られた。
 プロデューサーの弱気が裏目に出てる。すがすがしく自分の音楽のみを追求したら、もっとすっきりと鋭い盤だったろう。それならば売れてた・・・?かはわからないけども。

 本盤のプロデューサーはJB自身。弱気、だったのかな。腰を引かせつつ、それでも自己模倣などさまざまなアプローチを本盤で試してる。
 81年にリリースのスタジオ録音のLPは、本盤以外にない。何枚もばらまく余裕はなく、それなりにじっくり作ったっぽい。

 なおシングルは(2)をA/B面振り分け。イギリスではB3/A4のシンブルも発表された。
 全7曲中、JBの作曲でないのはA2とA4のみ。A3とB2はJB単独でなく共作名義になった。
 A2のSusaye Brownと、A4のL. Rhodesは詳細不明。B2のSt-Clair Pinckneyは、当時のJBバンドのメンバー。

 冒頭(A1)からいきなりファンキーが炸裂。60年の自作"Popcorn"を焼き直しではある。だが軋むパーカッションなどクリアなミックスで、分離良く仕立てた爽快さはけっこう気持ちいい。冒頭からフルスロットル。ホーン隊が威勢よく炸裂し、むしろシャウトはトラックへ埋め込み気味にした。ディスコ的なのどかさから、もう一歩アップ・テンポに踏み込んだ攻めのアプローチだ。
 途中で"Sex Machine"風の掛け声を入れるなど、新曲へ煮え切らないところが玉に傷。

 (A2)もファンキー寄りだが、もう少し重心を低くしテンポを落とした。女性コーラスと掛け合いのクライマックスのみが延々と続く。途中で男性コーラスに相手が変わったり、ベースやギター・ソロを入れるなど、JBシャウトのファンク一辺倒では進まない。12"シングルのロング・ミックスを先取りっぽくも聴こえるな。
 隙間をおかず詰めた仕上がり。さらにコーラスやホーン隊がダブ処理風に揺れるのが特徴だ。ヒップホップやレゲエをJBなりに解釈かもしれない。
 
 (A3)はフィラデルフィアかシカゴあたりのメロウなソウルに。むわっとスイートな雰囲気が盛り上がった。JBは気持ちよさそうに歌ってる。これも悪くないが、ちょっと時代遅れではなかろうか。70年代にこれなら、ドンズバだった。21世紀になって聴いてる今は、その10年位の流行の差はどうでもいいが。
 ただしファンキー寄りで2曲攻めたあとのこれは、ちょっと中途半端。もっとファンクで押してくれよ、と思うのは贅沢か。

 (A4)はチョッパー・ベースが重たくはずむファンク。インストでディスコ寄りのノリだ。むわっと響くシンセに、何とも時代を感じてしまう。R&Bスタイルを生かしながら、当時の流行を取り入れたふう。
 なんだろう、B級のソウルなBGMに聴こえてしまった。カラオケだけ、みたいな。ボーカルをハナからJBは入れてない。ちょっとシャウト入れたら、締まったかも。

 (B1)も焼き直し。自作の"Super Bad"(1971)が下敷きで、あまりひねりなく素直にセルフ・カバーした。(A1)と同様にパーカッションがうねうね聴こえるクリアなミックス。
 すっきりと演奏はタイトになっている。この辺は時代の流行を経て、よりまとまりあるサウンドになってきた。
 ただこの曲、いまいちJBのボーカルに覇気がない。流してる。パワーが足りない。

 そして腰砕けが(B2)。いきなりソウル・バラードが始まる。この味わいはNYっぽいが、シャープなギターはシカゴ風味なような。
 タイトな演奏でホーン隊が甘く揺れ、オルガンが温かく支える。いや、気持ちいいんだけど。あえてJBがやるかって話。

 昔からJBは甘いバラードもステージのアクセントに入れてきた。そのノリと思う。歌でなく語りでJBはしっとりとこの曲をまとめた。まさにペース・チェンジのつもりだろう。
 テナー・サックスが熱くソロを取る。ムーディで悪くない。タイトル"Love 80's"からして、これも過去曲の焼き直し?よくわからない。
 
 アルバム最後の(B3)も焼き直し。この曲はなんだっけ?思い出せない。
 とにかく演奏スタイルそのものが、KING時代のJBをほうふつとさせる、怒涛のR&Bなノリ。ファンキーにJBがキレッキレになる前に、一般的に流行ってたR&Bのムードだ。
 焼き直し以前の、過去回帰に近いぞ。身体に入ったサウンドのため、演奏とノリはさすがの安定っぷりだが。
 最後にぶわっとエコー感を残して終わるのは、まさに80年代風。最後に時代の帳尻を合わせてきた。

 とにかくトータル・バランスを無闇に考えなくてもいいのでは。
 当時はLPの片面って長く聴こえた。しかしCDの長時間演奏に慣れた今の耳だと、LP片面はもっとスピード感持ったひとつながりで進んでも大丈夫に感じる。
 これはJBの弱気でなく、サービス精神かもしれないな。

Track listing:
A1 Popcorn 80's 3:43
A2 Give That Bass Player Some 6:27
A3 You're My Only Love 4:56
A4 World Cycle Inc. 3:01
B1 Super Bull/Super Bad 6:59
B2 Love 80's 9:57
B3 I Go Crazy 3:35

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