Bob Dylan  「Street Regal」(1978)

 ゴスペル風の熱気を漂わせ、物語をバラッド風に歌い上げたポップなアルバム。

 ボブ・ディランの中ではポップなアルバムと言われてるらしい。初手から女性コーラスがゴスペルっぽいコール&レスポンスで応える。曲調は平歌からサビ、みたいな構成を取らず、ひたすらフレーズを歌い継ぐ印象あり。
 つまりブルージーな展開。展開を起伏させずイマジネーションをどんどん膨らませていくかのよう。

 そもそもディランを聴くのに歌詞を全く参照しないってのも、何も意味がない。とはいえとりあえず音楽聴いた感想だけで本項は書いている。

 ディランはこのとき、ライブが乗りまくっていた。2/20から武道館公演("At Budokan"(1978)の元だ)を皮切りに、ニュージーランドからオーストラリアまで。4/1のシドニー公演でこのレグは終わり、一息ついた同月の4/25からスタジオに入る。5日間、ほぼ毎日の一週間で本盤の録音を追えてしまった。

 本盤はフェイドインで始まる。流転して駆け続ける気持ちの表出では、と思う。次々に溢れる言葉を膨らませてまとめた。アメリカ音楽をがっちり踏まえ、フォーク寄りの楽曲に仕上げる。しかしバンドは好調。両方の要素を勢いのまま封じ込めたかのよう。

 日本公演で(5)は既に披露していた。あとはすべて新曲。書き下ろし、かな。メロディはシンプル、詩の連がどんどん続く。滑らかなメロディが口をつくまま、練らずに曲を仕上げて歌詞を重ねていったんじゃなかろうか。

 76年のローリング・サンダー・レビューが終わって離婚。二年たったのがこの年になる。本盤録音前の極東公演で、メンバーの変遷はいかに。Guamと呼ばれたローリング・サンダー・レビュー時から顔ぶれが変わっている。
 というか、ほぼ総とっかえだ。Steven Soles(g),Rob Stoner(b)と骨子のリズムだけ残した。
 
 その極東公演から本盤のメンバーでも、またメンバーが変わった。興味深いのはベースがJerry Scheffへ変わったこと。プレスリーと共演のベテランなScheffに変えて、あっさりと自らの過去をディランは捨て去った。
 Steven Soles(g)を据え置きで、バンドの色を伝達役か。あとは極東ツアーのメンバーをそのまま引き継いだ。
 3人の女性コーラスは極東公演から一人入れ替わり、Debbie DyeからCarolyn Dennisへ。よほど気に入ったのかCarolyn Dennisはそのまま結婚にまでディランはこぎつけた。離婚早々、お盛んなことだ。

 極東ツアーからのミュージシャンで、目についたのが二人。

 まず元キング・クリムゾンを割ってアレクシス・コーナーと活動後、スタジオ・ミュージシャンな活動のIan Wallace(ds)。やたら重量級のリズムをかます。アメリカーナな志向で、敢えて英国人を採用がディランのこだわりか。
 もう一人がSteve Douglas(sax)。フィル・スペクターなど西海岸のセッション・ミュージシャンでは凄腕。60年代のロックンロール要素を盛り込みか。本盤でも大きく彼のサックスがフィーチャーされている。

 アルバムの香りは埃っぽい南部の香り。ロックンロール、カントリー、テックス・メックス。ブルーズの要素を下敷きに、奔放でしたたかなノリを感じる。女性ボーカルも華やかさの象徴か。当時のライブの評判はさておいて、少なくとも本盤ではディナーショー的な浮つきは無い。もっと泥臭いアプローチだ。

 しかし音楽面でスワンプ路線を突き詰めず、バンドのノリを優先してこだわらない。逆にJerry Sheffの低音で色合い違いを試したのかも。
 取っつきやすいが、いわゆるポップ・ソングとは無縁な詩の連を続ける構成。ディランは本盤で、とにかく歌い続けた。演奏へ気持ちよく乗っかって。

 アレンジはウォレスのドラムを筆頭に、少しばかり野暮ったい。タイトさよりガタガタと震える力任せな様子の演奏と、今の耳では感じる。まだ80年代のジャストなビートが流行る前のサウンドではあるが。
 オルガンが温かさを作り上げる。カリフォルニアはサンタモニカの海が近い比較的都会なスタジオで、アメリカンな田舎の風景をディランはさくっとアルバムに封じ込めた。
 開放的なのどかさと、語り続ける持続性が、本盤のキーワード。

Track listing:
1 Changing Of The Guards 6:36
2 New Pony 4:28
3 No Time To Think 8:19
4 Baby Stop Crying 5:17
5 Is Your Love In Vain? 4:30
6 Senor (Tales Of Yankee Power) 5:42
7 True Love Tends To Forget 4:14
8 We Better Talk This Over 4:04
9 Where Are You Tonight? (Journey Through Dark Heat) 6:16

Personnel:
Electric Rhythm Guitar & Lead Vocals : Bob Dylan
Drums : Jan Wallace
Bass Guitar : Jerry Scheff
Lead Guitar : Billy Cross
Keyboards : Alan Pasqua
Percussion : Bobbye Hall
Tenor and Soprano Saxophone : Steve Douglas
Rhythm Guitar (Background Vocals) : Steven Soles
Violin & Mandolin : David Mansfield
Background Vocals : Carolyn Dennis, Jo Ann Harris, Helena Springs
Trumpet (Is Your Love in Vain?):Steve Madaio

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