TZ 8336:John Zorn "Inferno"(2015)

 コンパクトでパンチの効いた、バラエティ豊かなプログレ寄りの熱いインスト・トリオ。

 15年に稼働したジョン・ゾーンの疑似バンドによる3作目。
 メンバーはM,M&Wのジョン・メデスキ以外は、ジョン・ゾーン界隈で名前を聴かない二人。若手導入ってことか。ギタリストはペンシルベニアのメタルコア・バンド、Cetusに所属。ドラムはジャズ・ロック・バンド、Dapp Theoryのメンバーらしい。

 アルバムのテーマは19世紀後期に活躍したスウェーデンの作家ヨハン・アウグスト・ストリンドベリに影響受けたという。とはいえ脈絡も音楽との関係性もよくわからない。
 譜面化されたペインキラー、整えられたムーンチャイルドって印象だが。

 即興要素を減らし、がしがしに変拍子の譜面を元な演奏に聴こえる。アドリブ要素はあるが、それよりもキメをびしばし合わせるダイナミックなスリルのほうが上だ。
 冒頭のハードな曲の印象に引きずられ、ジャズ寄りもプログレ的な構築美を感じる。ゾーンは指揮をしてるけども、それより譜面のほうが大きな役割をしめている。

 最初こそ高速フレーズの連発で剛腕に決めるが、アルバムが進むにつれて緩急や自由度を増しサウンドにバラエティさを持たせた。
 ただし即興よりも譜面の構築美を優先させる方向性は変わらない。
 
 音数が多く聴こえるが、たぶんダビングは無く一発録りではないか。オルガンが左右のチャンネルをせわしなくパンしたりと、ミックスにはそれなりに気を使っている。
 サウンドの軸は強力なオルガンの太い音色だが、エレキギターやドラムも強烈に自己主張を行う。ゾーン流の是巨人って気もしてきた。

 ただ、迫力あるのは主に音色のせい。歪んだエレキギターと弾むオルガン音色、太くはじけるドラムの音色ゆえにハードコアな印象を受けるけれど、楽曲的にはまっすぐでシンプルなメロディが詰まった。たとえ変拍子だとしても。
 不協和音やノイズ要素は薄く、しごくまっとうな楽曲が並んだ。

 ギターもドラムも確かなテクニックがあり、メデスキは派手にオルガンを唸らせる。痛快なアンサンブルと、タイトに決めまくるフレーズの痛快さが本盤の聴きもの。
 ジャズ要素はすっかり抜き去った。ゾーンはまだまだ枯れない。そして自らの軋むサックスを混ぜずに、流麗で骨太なアンサンブルを、今になって志向するのが興味深い。
 
 この路線は、今後どのように発展するのだろう。今はまだ実験段階、ゆくゆくはゾーンも加わるのか。逆にゾーンがフラジオを載せると、典型的なゾーンのインプロになりすぎるかな。
 
 楽曲はどれも短く、高速に疾走する。(4)だけ20分越えの長尺で、中盤に静かな中近東風のアンサンブルを入れるなど幅の広さを作った。


Track listing:
1 Dance Of Death 5:53
2 Pariah 3:15
3 Ghost Sonata 6:25
4 Inferno 20:57
5 Blasphemy 2:01
6 The Powers 2:51
7 Dreamplay 3:50

Personnel:
John Medeski: Organ
Kenny Grohowski: Drums
Matt Hollenberg: Guitar
Composed By, Arranged By, Conductor : John Zorn

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