灰野敬二/Barre Phillips  「Etchings In The Air」(1996)

 透徹でアイディアに満ちた共演。灰野の叫びが多彩に絡み、頼もしくウッドベースが受け止める。

 ゴリゴリのフリー・インプロ奏者で60年代後半から活躍する、ベテランなバール・フィリップスとの共演盤。灰野敬二から一回り半くらい上の世代だ。
 灰野はボーカルで立ち向かった。フィリップスは特殊奏法をふんだんに使い、小節線や音列から解き放たれた自由な演奏を繰り広げる。さらに灰野と同様にボイスも提示した。
 無闇に釣られず、独自の世界をフィリップスは作る。そこへ金属質なシャウトを中心に、抽象的に喉を絞って灰野は絡んだ。

 全5曲入りで(2)は組曲形式。すべてが即興で、鋭さと緊張が全編を覆う。轟音や塗りつぶしを使わず、むしろ隙間を生かした。
 灰野の声は時に楽器のごとく太さや質感を変える。叫びや言葉でなく、喉を震わせる手法を様々に使い、ハイトーンと鈍い叩きつけが入り組んだ順列で現れる。

 バールのソロは単独で成立する。さすがの貫禄。いっぽうの灰野も臆せず次々と技を繰り出した。
 ウッドベースに声が二人。持続性あるアプローチでなく隙間が多いため、むしろ静かな印象あり。完全にアコースティックなバトルだ。

 ユーモアが皆無で真剣な対峙が特徴。だが破壊や解体といった立ち位置や歴史の撤廃ではなく、互いに自由な音楽を絡ませることで、刺激いっぱいの次に何が起こるかわからぬスリルを作った。
  
 二人とも構成や流れはさほど考慮しない。瞬発力でアイディアを出す。フィリップスは演奏と声の二役なぶん、時に抑える。だからなおさら、灰野の潔い暴れっぷりが引き立つ。

 今の耳で聴くと、無秩序さは刺激的。いっぽうで余裕ないまじめさが、堅苦しいところもあり。フィリップスは選択肢の一つとしてグルーヴィな技も使う。二人とも引き出しが多彩だ。

 音盤での共演は、本盤に先立つ94年に豊住芳三郎を加えた"Two Strings Will Do It"ぶり。その後、灰野とフィリップスでの吹きこみは存在しない。
 

Track listing:
1 Reading The Net 10:16
2 Etchings In The Air Deep to Steep 16:31
  Possibly
  Diamond Dust
  Shadow Hand
  Where?
  It may be
  Extensions
  Hands and Feet
  Shoe Lace Tango
  Tighten your belt
  Sealing Wax
  Rolling Waters
  The Calender
3 Back To The Earth 13:13
4 Like A Light 3:18
5 Key Finder 3:13

Personnel:
灰野敬二:voice
Barre Phillips:acoustic bass, voice
Recording date: February 1, 1996.

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