Christy Moore  「Voyage」(1989)

 シンセが漂うポップさを踏まえ、カバー集で歌手に寄ったアルバム。

 14thソロ。膨大な彼の作品を体系立てて聴けておらず、印象論になってしまう。
 クレジットを見ると、メアリー・ブラック、シニード・オコナー、エルヴィス・コステロがゲスト参加。別に象牙の塔に住んでるわけもなし、英国ではごく普通にポップ・シーンと交流あるだろう。とはいえトラッドの頑なな世界から、ちょっと抜け出て親しみを狙った盤かもしれない。

 アルバムの味わいは硬いアイリッシュのムードがたっぷり漂いながら、生楽器に合わせてシンフォニックな白玉シンセが目立つ。ドラムもタイトさが妙に硬い。この辺の電気仕立ても、ポップ路線を狙っていそう。決して売らんかな、の立場な人ではない気もするのだが。

 穏やかな歌声はいつも通り。ゲストの扱いもむやみに派手にせず、着実な音楽だ。
 公式Webのディスコグラフィーにある本人コメントによれば、本盤はリミックスをレコード会社からムーアが強いられたが、うまくいかず内容は気にくわないとある、だがこの辺のニュアンスはよくわからない。

 楽曲でムーアのペンが入ったのは(12)のみで、後はすべて他の人が作った曲を歌ってる。歌うことに集中、か。
 Jimmy McCarthyの作品を(1),(3),(7),(8)と4曲も取り上げたのが目立つ。トラッドは(5)。
 コステロの曲として"Goodbye Cruel World"(1984)から(4)をカバーした。変なとこから引っ張ってくるな。渋い選曲だ。なおコステロがゲストはこの曲ではない。Jimmy McCarthyの曲、(7)で歌を務めてる。ただし言われないとわからないほど、さりげない歌でなんとも贅沢な参加だ。
 なおメアリー・ブラックは(2)、シニードは(3)と(12)でボーカルを足した。

 プロデュースはPlanxty時代の盟友ドーナル・ラニー。鍵盤やギターを操ってる。シンセを足してるのもラニー自身。
 楽器編成のアレンジは楽曲ごとに違うが、アコースティックな伸びやかさを強調した。ドラムは元The Bogey BoysのPaul Moran、ムーヴィング・ハーツ時代の仲間から、Eoghan O'Neill(b),Declan Sinnott(g)と地に足の着いた人選をしてる。
 チーフタンズのPaddy Moloneyは(8)でバグパイプ演奏のゲスト参加あり。
 
 アイリッシュ・フォークの伝統性と現代的なバランスを上手くラニーが操った、とみるべきか。低く頼もしいムーアの歌声は楽しめつつ、ポップさに少し戸惑いもする。


Track listing:
1 Mystic Lipstick 4:02
2 The Voyage 3:51
3 The Mad Lady & Me 3:05
4 The Deportees Club 4:29
5 The Night Visit 3:22
6 All For The Roses 3:57
7 Missing You 3:48
8 Bright Blue Rose 4:50
9 Farewell To Pripchat 4:37
10 Musha God Help Her 3:59
11 The First Time Ever I Saw Your Face 4:17
12 Middle Of The Island 4:08

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