Momus & Anne Laplantine  「Summerisle」(2008)

 抽象的で素朴、つかみどころ無い繊細なエレクトロ・ポップ。

 08年のモーマスがリリースしたのは、フランスのミュージシャンAnne Laplantineとのコラボ。詳しいクレジットが無いが、楽曲は共作し演奏はアンが行ってるらしい。モーマスは歌だけってクレジットだが、ギターなりを弾いてる可能性もある。

 サウンドは抽象的な電子音が散発的に鳴る、不思議な空間。水墨画みたいなジャケットとエキゾティックなムードが漂う音楽から、中国に影響受けてるのかと思いきや。アンはクサキ・ミチコの別名でアルバムを発表するほど日本びいきらしい。
 そういわれるとこのジャケットの風景は日本庭園か?どっか違うけどもなあ。

 ローファイでひねった電子音楽が、アンの持ち味らしい。モーマスの投げっぱなしな一筆書き楽曲とあいまって、何ともつかみづらい危うく退廃的な世界がアルバムに広がった。
 電子音だけでなくギターなども使い、アコースティックな色合いもある。

 ポップさとは全く違う世界。(4)のように滑らかなメロディが現れたとしても、サウンドは危なっかしく崩れ落ちそうな怪しさが漂う。そもそもきれいなポップスを全く狙っていなさそう。

 モーマスの安直ともいえるシンプルなアレンジと、アンの不安定な世界は全く違う。モーマスは形だけでも整えようって気概があるけれど、アンのサウンドはアイディアの断片を継ぎ合わせ、ぎりぎり形に精一杯仕立てたって程度。

 (6)のようにモーマスが主導権を取ったポップスも聴こえるが、全体的にはダウナーな沈むムードのアルバム。シンプルな音をてきとうに重ねる無造作を楽しむことはできる。
 けれども全体はスケッチをそのまま並べたかのよう。非常に内省的で、アイディアの羅列のごとき飾りっ気のなさだ。物語性や構築美もほぼ、放棄してる。

 前衛の尖りっぷりとは違う。もっと穏やかな風合い。酩酊して爪弾いた音の破片が、そのままランダム再生されてるかのよう。
 本盤は、怪盤だ。代表曲とは言い難い。聴くのにテンションがいる。落ち込んだ時だと、そのまま音像の闇に絡めとられズブズブと沈む。

 へにゃへにゃで曖昧な浮遊性の音楽を笑って呑み込み、懐深く味わえた時に本盤の魅力に気づけるだろう。
 モーマスの堕落な美学を笑って楽しめ、テクノの危さを気軽に咀嚼。そんな気概と体力を備えて本盤を聴いたら、へんてこな世界での夢幻さを楽しめるはず。

Track listing:
1 Fur Ming Felt Hunt 3:32
2 Black Earth Buzz 3:11
3 Go Fishing Willy 2:43
4 Spin Thread Annie 4:17
5 McKenzie Fling 1:54
6 Fingal Martin's Mistress 1:31
7 The Tailor Of Dunblane 3:28
8 Manty Kelin 1:45
9 A Spratch O' Thyme 4:55
10 Trilly Birthphone 2:32
11 Johnny Jump Up 1:23
12 Seakliff Kragg 2:32
13 Ossian May 1:57

Personnel:
Instruments - Anne Laplantine
Voices - Momus

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