TZ 8002:Zeena Parkins "Necklace"(2006)

 美しく張りつめた弦の室内楽が封じ込められた。

 ハーピストのジーナ・パーキンスだが本盤では作曲家に軸足を置いた。(1)でエレクトロニクス、(3)でハープの独奏は聴かせるが、メインは弦楽四重楽団The Eclipse Quartetをフィーチャーした。
 ところどころ実験的な奏法や構成はあるし、耳ざわりは現代音楽。ただし聴きやすくメロディックな作品ばかりだ。

 The Eclipse Quartetのメンバーは、Sara Parkins, Sarah Thornblade, Joanna Hood, Maggie Parkinsと全員が女性。パーキンス姓が二人いるがジーナと血縁かな。
 ハイテクニックで硬質だが滑らか、とげとげしさの無い演奏だ。

 実質的に本盤は4曲を収録した。最終曲のみが3トラックに分かれてる。
 (2)がThe Eclipse Quartetのチェリストによる独奏、(3)がジーナの独奏。残りはThe Eclipse Quartetの演奏になっている。

 (1)は振付師Emmanuelle Vo-Dinhの委嘱でダンス公演用の音楽らしい。フランス語がよくわからず、対象の「Compagnie Sui-Generis for Croisees」が訳せない。
 エレクトロニクス部分は、残響の処理などを後でダブ加工してる。リアルタイムで処理しながら実演奏とかぶせてるっぽい。
 美しく幻想的で涼やかな風景である。スピーディな展開が広がった。
 17分弱の作品で、04-5年にかけ作曲された。

 (2)は05年の作曲。8人のダンサーによる足音とチェロの独奏という、変則的なアンサンブル。冒頭から床をゴムの靴底で擦るような音と、弦を軋ませる音が重なった。
 ダンサーは Compagnie Sui-Generisの面々。前曲のユニットで、ダンス集団の名前かな、これが。
 じわじわとチェロが軋む音に音像を混ぜてくる。即興的な演奏に聴こえるが、たぶんかなりの部分が譜面だろう。整ったムードが全編を覆い、探りや急な転換は全くない。

 いわゆるきれいな音楽ではないが、ノイズも含めて不思議と滑らかに聴こえる。
 ただ、足音は録音ノイズっぽい響きなのが惜しい。いまひとつ、何をやってるかわからない。映像付きで聴きたいな。終盤は前衛テクノみたいで面白かった。

 (3)は冒頭から低音のハープが響き、楽器の幅広さを感じさせる。確かなテクニックで琴みたいな東洋風エキゾティシズムも漂った。複弦奏法で、独奏でなく伴奏とソロにも聴こえる。ハープの独奏曲は聴いたことがほとんどないため、他の演奏と比較できないが、少なくともこの曲はアンサンブル的な構築度がある。
 舞踏家Neil Greenbergの委嘱で、公演"Partial View"に使われた。ここにレビューと映像がある。公演は50分程度だが、ここでは4分弱の小品だ。
http://www.neilgreenberg.org/partialview.html

 最終曲の"Visible / Invisible"はスリリングな弦楽四重奏曲。特殊奏法もそこかしこにあるけれど、まっとうなクラシックの現代音楽。実験が主でなく、音色の突飛さを狙うため。あくまで主体はメロディであり和音だ。
 そろって上下降する音程の蠢きが、張りつめた退廃性を演出した。崩れない。けれど華やかさが渋く濁り溶けていく。美しさの構築よりも、衰えを受け入れる美学のように、一ひねりした価値観を感じた。きれいだ。

 第三楽章で本盤のタイトル"Necklace"の演奏風景がYoutubeにあった。


 大真面目に丁寧に、崩しの美学を演奏した楽曲集、の印象だった。良さは聴き返すほどに滲んでくる。

Track listing:
1 Persuasion 16:47
2 16 Feet + Cello 5:21
3 Solo For Neil 3:47
Visible / Invisible
4 Part I: The Hand 5:44
5 Part II: Anamnesis 6:43
6 Part III: The Necklace 4:42

Personnel:
Electronics - Doug Henderson (tracks: 1), Zeena Parkins (tracks: 1)
Harp - Zeena Parkins (tracks: 3)

Footsteps - Eight Dancers from Compagnie Sui-Generis

Ensemble - The Eclipse Quartet (tracks: 1, 4 to 6)
Viola - Joanna Hood (tracks: 1, 4 to 6)
Violin - Sara Parkins (tracks: 1, 4 to 6), Sarah Thornblade (tracks: 1, 4 to 6)
Cello - Maggie Parkins (tracks: 1, 2, 4 to 6)

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