Kramer and Daved Hild 「Rubber Hair」(1996)

 ほんのり切なさが漂う、シンプルでふくよかなサイケ・ポップ。

 "Happiness Finally Came to Them"(1987),"Black Power"(1994)に続く、クレイマーとDaved Hildのコラボ作品。本作で初めてRalph Carneyとのトリオでなく、クレイマーとデュオになった。
 とはいえこの時期は、冴えわたってたクレイマー。全曲を作曲して、演奏もほぼすべてを自分で担当してしまう。ヒルドは歌詞と歌、一部のドラムのみ。音楽の観点ではクレイマーの独壇場だ。
 ようはヒルドの歌を素材にクレイマーがサイケ・ポップを仕上げたアルバム。あまりテクニカルな歌い方ではないが、ポエトリー・リーディングで無くメロディアスなため聴きやすい。

 数曲でGaro Yellinの奏でるチェロが、サウンドの良いアクセントになっている。いっぽうでリズム・ボックスでスカム寄りに、はしゃぐチープな楽曲も入れて混沌さも演出した。

 2曲でエレキギターのゲストも招いたが、あとは鍵盤とギター関係をクレイマーが多重録音した。コラージュよりも楽器演奏に重きを置いてる。リコーダーなども使い、メリハリも忘れない。
 ヒルドのドラムは比較的野太く、シンプルなビート。どの曲でもテンポはさほど上げず、緩やかなムードでアルバムを包んだ。

 ほとんどワン・アイディアのメロディを、一曲に膨らませた作品が詰まってる。
 つまり平歌とサビ、と分かりやすいポップ構造を取らず。だから単調というか、そっけない味わいともいえる。
 しかし演奏に耳を傾けるとギターや鍵盤を多層に配置し、丁寧で奥行きある音像をクレイマーが作った。だから、聴きごたえはある。むしろシンプルな楽曲だからこそ、アレンジの妙味を楽しめた。

 この作曲スケッチ集なフレーズで、よくヒルドは歌えたと思う。曲先で歌詞を当てはめたか。
 (1)の畳みかける勢い、(4)での鮮やかかつ瑞々しい香りたち、したたるような多重録音のチェロとギターの饗宴(9)などが印象に残る。
 激しさや危うさよりも全体的に整った印象だ。クレイマーのプロデュース力がきれいにハマった。少しばかり成熟した空気が吹く。



Track listing:
1 Photograph
2 The Cat In The Window
3 Masonic Hardware
4 The Veronica Building
5 Bargains Night Bargains
6 Cold Air
7 Vegetables Do
8 Mr Ryder On The Beach
9 X Is The Sign
10 Distress In The Dixie Girls
11 The Ballad Of Veal
12 Rubber Hair

Personnel:
Daved Hild - vocals, drums, cover art
Kramer - instruments, production, engineering
Garo Yellin - cello
Billy West - guitar (1, 12)

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