Momus 「Hippopotamomus」(1991)

 エレクトロ風味がひときわ強まった。テクノ・ポップで盛り上がり、耽美さを減ずる。隠れたモーマスの代表アルバムだ。
 

 あんがい凝ったアレンジがそこかしこに施されながら、音色が妙に単調に聴こえてしまう。アルバムの仕上がりは妙にシンプルな印象。聴きこむと、細かい技があちこちにある。
 さらに楽曲もゲスト・ボーカルをいっぱい配置し、ボーカルの音域も極端なウィスパーを取り入れ、ポップなのに語り口調という不思議な世界観を作った。歌詞にはとりあえず言及を避ける。不気味っぽいので。

 本盤発表の年に亡くなったセルジュ・ゲンズブールに捧げられた。ジャケットにもこもこダウンジャケットなイラストを使い、ミシュラン社よりクレーム。変更を施して首から上だけを切り出して、カバの顔だけが2ndプレスとなる。

 はっきりとクレジットは無いが、おそらく演奏はほとんどがモーマスの打ち込み。チェロなどのゲスト・ミュージシャンもいそうだが、これもシンセかな。リズムもビート・ボックスに任せてタイトながら抑えた。
 
 バリトン声が畳みかける(1)を幕開けに、収録曲のメロディはすこぶるポップ。この(1)は単音フレーズを、つい口ずさみたくなるキャッチーさだ。
 特に印象深いのが(4)。女性ボーカルにメインを任せつつ、サビはモーマスが低音で語る。メロディが存在するのに、えらく超低空に沈むとこが冴えたアイディアだ。

 リズムはチープ、音色はデジタル・シンセの硬い音色。デモテープ並みと思わせるが、ヘッドフォンで聴くと幾層にも鍵盤が重ねられ、定位の変化も含めてミックスは凝っている。
 エレクトロな路線で、なおかつビートを強調した。極初期のギター弾き語りとは違う、クラブ志向のサウンドだ。ビートが効いてるってだけで、ダンサブルさにはモーマスがさほど気を配ってなさそうだが。

 小気味よいビートと、伸びやかなシンセの渦。そしてささやき気味にメロディをジワッと紡ぐ歌声。開放的だが性根は陰ってる。幾層にも屈折して、ポップの骨組みで曇った空気を漂わせた面白い盤。
 きちんと音域上げて歌えば、切なくセクシーなポップスに仕上がる。しかし安易なわかりやすい道は選ばず、細くくねった茨の道をモーマスは進んだ。

Track listing:
1 Hippopotamomus 4:23
2 I Ate A Girl Right Up 3:17
3 A Dull Documentary 3:13
4 Marquis Of Sadness 3:32
5 Bluestocking 3:11
6 Ventriloquists And Dolls 3:56
7 The Painter And His Model 4:29
8 A Monkey For Sallie 2:44
9 Pornography 3:05
10 Song In Contravention 4:37

Personnel:
Studio and engineering: Doug Martin at The Spike.
Hippo Baritone: Preacher Harry Powell on 1
Wiggly electronic noise: Lovecut DB.
Little girlish singing: Vicky Cassidy. on 4
Girlish back-up singing: Tammy Yoseloff. on 4
French girl whispering Marguerite Duras: Zoe Pascale. on 5
Manly electric guitar solo: Noko. on 6

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