Itellu 「Planets」(2015)

 おっとりしたフュージョン風味のポップス。歌モノと演奏のバランスが揺れる。

 生演奏のダイナミズムは洗練され、ファンクっぽさもきれいにまとまった。基本はピアノレスのカルテットだが、ゲストに鍵盤が加わりそつのない出来。本来はBGMに似合いのソフトなポップス、で終わってしまうのだが。不思議な抒情性が本盤から滲む。

 京都あたりのバンドを連想する、センチメンタリズムとメロウな柔らかさ。あくまでも歌が主役だ。
 16ビートでシャープなビートを刻むドラマーが、本盤の音楽性で主軸を担った。けれども歌へ大きく比重を置いており、リズムの突飛さや技を前面に出さない。

 本盤が1stになる。留学中にアメリカで知り合ったメンバーが、鎌倉で2014年にバンドを始めたのがきっかけらしい。菊地成孔がらみの盤でICI名義で活動する、市川愛がボーカルを務めてるのがきっかけで聴いてみた。

 楽曲はドラムの桃井裕範が(1)~(3),(5),(6),(8),(10)と過半数を提供。(7)は金澤悠人(g)、(9)は片野吾朗(b)の曲。
 そして(4)はハース・マルティネスのカバーで75年のデビュー作に収録の有名な作品。ポップス好きにはウッドストック系で知られた名曲だ。

 本盤はジャズに引きずられず、ポップス寄りに収斂もしていない。ふわふわとジャンル感を漂い、耳触りの良い音像を作る。演奏テクニックはばっちりで、毒気の無い世界。
 ゲストの鍵盤をふんだんに取り入れたため、バンドのサウンド・イメージも今一つ掴みづらい。

 爽やかな午後に、のどかな気分で寛いで聴ける音楽。爽やかで情感滲む旋律は耳へ優しく馴染む。ちょっと鼻にかかった市川の歌声が、すこし引っかかる味となって聴き流しはしない。
 けれども突き抜ける激しさはない。安定した穏やかな世界に安住し、毒や汚れを感じさせない。タバコの煙も酒も似合わず、ドーム公演でコブシ突き上げ叫ぶ熱狂とも違う。

 すみずみまで破綻無さを目指した、きれいなアルバム。演奏に隙は無い。
 箱庭のような世界観だ。無菌室、とは言わない。それならそれで、個性になる。



Track listing:
1. Jet
2. 惑星
3. コルクの中で
4. Altogether Alone
5. Undo
6. Homecoming
7. Shielded By the Winter
8. When the Moon is Square
9. サブマリン
10. Among

Personnel:
市川愛(Vo) 金澤悠人(G) 片野吾朗(B) 桃井裕範(Ds)
guest: 大林武司(P,Key)

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