TZ 7180:Borah Bergman "Meditations For Piano"(2003)

 断続的なフレーズで階段のように静けさを出す、ピアノ作品。

 瞑想のためのピアノ曲、が標題。瞑想、とは自分の心へ潜っていくイメージがある。それに似合った音楽は、気持ちの動きを邪魔しないほうが都合良い。あまり変化が無く、静かな連続性あるほうが、ぼくは好みかな。ピアノよりシンセの白玉が良いかも。

 と思いながら、本盤を聴いた。思いのほか、角ばって断続的。こういう感覚なのか。
 決してリズミカルではない。音も派手に動かない。だが、連続性はない。ペダルを踏んで、残響はいっぱいに広げる。だが、静と動。常に動きと流れを意識させた。

 静寂から流転、持続から停滞への急速な変化。変な話、瞑想というより風流さを持つ風景を連想した。俳句みたいな。ひとつながりの流れから、一瞬を切り取る。素早い動きに静寂を見る。現象へ異なる価値観を添え、時間軸を動かす、そんな価値観。
 つまりヒーリング的でなく、もっとストイックで抽象的な心象風景を描いた。瞑想のため、でなく瞑想の心を音楽へしたかのよう。

 本盤での音楽は4拍子で単純に切れない。溜めて、動く。動きがふっと残響に続く。
 フレーズは激しさを持たないが、寛がせない。予定調和から微妙にずれ、間を外す美学だ。
 
 ぼくはこの音楽を聴いて、内にはこもれない。時にミニマル、時に濁った響きに耳を傾けてしまう。惜しむらくは、ちょっと単調。これが瞑想を意識してだろう。
 硬質で凛とした音像は、色気やグルーヴを削ぎ取った。断続するフレーズの積み上げが、ピアノの残響で細く緩やかに繋がれる。

 トラックは7つに切られ、ほとんどが7分ぐらい。12分の長尺を冒頭に、2分弱の小品を最後に配置した。
 曲ごとで大きく表情は変わらない。どこで切っても成立し、どこまでも続きそう。そんなつかみどころ無い、かといって喧しくもない。とはいえ心落ち着くのも難しい。
 浮遊感を常に提示し、引っ掛かりを頻繁に配置する。けれども静けさは保つ。こうして印象を言葉にすると、非常に奇妙で面白い音楽だ。
 06年12月6日にNY Stoneで本盤を演奏したライブ映像があった。本盤発売の3年後になる。


 奏者のボーラ・バーグマンは1926年生まれ。コルトレーンやマイルスと同い年だ。だがミュージシャンとしては晩成で、クラブでも演奏は行わず教師をしてたという。
 オーネット・コールマンに影響を受け、フリージャズのピアニストで演奏活動を始める。レコード・デビューは"Discovery" (1975)、49歳のとき。ペーター・ブロッツメンらと共演歴あり。2012年に85歳で世を去った。
 世代にしてはずいぶん頭が柔らかく、かっとんだ価値観のミュージシャンだったのでは。ちなみにブロッツメンは1941年生まれ。バーグマンの15歳年下だ。

 TZADIKにおけるバーグマンのリーダー作は本作のみ。09年にジョン・ゾーンやグレッグ・コーエン、ケニー・ウールセンらとのセッションで"Luminescence"を残した。

 

Track listing:
1 Meditation 1 3:08
2 Meditation 2 12:46
3 Meditation 3 7:04
4 Meditation 4 7:29
5 Meditation 5 7:24
6 Meditation 6 6:53
7 Meditation 7 1:34

Personnel:
Piano, Written-By – Borah Bergman
Recorded February 2003 at Hit Factory, NYC

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