Avishai Cohen 「Into The Silence」(2016)

 荒々しさを静謐に沈めたトランぺッターのリーダー作なジャズ。

 イスラエル出身のトランぺッター、アヴィシャイ・コーエンよる7枚目のリーダー作で、ECMからは初。南仏マルセイユ近くのスタジオで録音された。プロデュースはアイヒャー。
 強烈にプロデューサーの趣味が出た作りなのか、全編で強い印象を残すのはピアノ。さらに、手数多いドラム、リズム・キープでなく煽るようにフィルをつぎつぎ入れてくる。芯を支えるのはベースってイメージ。
 ピアノがソロをぐいぐい取るわけでなく、むしろ音を広げるようなアルペジオのほうが耳へ残るのだが。
 
 厳かなマイルス・スタイルのトランペットは、抑え気味に音を重ねる。いわゆるテーマからソロ回しでなく、中盤でもキメが入り細かくアレンジされた。曲によってテナー・サックスも加わり厚みを出す。

 サイドメンの経歴は、このタワレコの宣伝文がわかりやすい。
http://tower.jp/article/feature_item/2016/01/15/0102

 作曲はすべてアヴィシャイだが、あまり目立たない。サウンドの一要素として存在する。アグレッシブに弾けそうな場面もいくつかある。激しいタッチはエコーに囲まれ、牙は収められた。上品で穏やかな世界へ沈められたかのよう。
 特にドラムはここで、NYスタイルの乾いた要素をECM寄りのたゆたいに絡めとられたかのよう。

 本盤がアヴィシャイの持ち味、もしくは新境地かは知らない。ただし、本盤を引っ提げた16年2月のライブ音源や、音数多くファンキーにスイングする14年の音源をYoutubeで見る限り、少なくとも本盤とは微妙に立ち位置が違う。
 本盤は緊迫感を丁寧に残響でコーティングして、耳馴染み良く破綻しないスリルに変えた。ここには危うさが無い。フリーさもエコーがクッションとなって、やんわり包んだ。
 例えば(3)。かなり自由な動きをしてるけど、ときおり入るテーマの譜面要素や全編のエコー処理が涼やかなムードに整えられた。さすがはアイヒャーというべきか。若々しさが老成に寄っている。
 前半に長めの曲が並び、構築性を前面に出した流れのせいかもしれない。

 これが16年2月18日、伊ミラノのブルー・ノート公演。エコーが無い分、スリルが強調された。ピアノは一緒だがBarak Mori(b),Nasheet Waits(ds)にリズム隊が変わり、ワンホーン体制と、サイドメンは様変わりでサウンド変わっているけれど。
 少なくともドラムが4ビートを刻まないスタイルは、アルバム通り。アヴィシャイのペットはもう少しクレヅマー風のセンチメンタリズムを出した。


 こっちが14年のライブ。エレピとドラムがソウルフルに煽るせいもあるが、スタンダードを音数多く、アヴィシャイは吹きまくった。詳しい場所や時間がわからないが、放送用音源のスタジオ・ライブのようだ。


 これはスペインで13年5月5日のライブ、ワンホーン・トリオ編成。"チュニジアの夜"を着実かつメロディアスに吹いてる。ここでもにじみ出る抒情性あり。本質は熱いメロディ感の人か。クールに音数少なく前衛に行く、ってタイプではなさそうだ。


Track listing:
1 Life And Death 9:18
2 Dream Like A Child 15:31
3 Into The Silence 12:14
4 Quiescence 5:14
5 Behind The Broken Glass 8:14
6 Life And Death – Epilogue 2:44

Personnel:
Trumpet - Avishai Cohen
Double Bass - Eric Revis
Drums - Nasheet Waits
Piano - Yonathan Avishai
Tenor Saxophone - Bill McHenry

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