Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Does The Cosmic Shepherd Dream Of Electric Tapirs?」(2003)

 サイケ・トラッド寄りでアコースティックな方向性を強調した。

 P・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をもじったタイトルな本盤は、コットン・カシノが加わった5人編成な宗家の盤。津山のアコースティック・トラッドな要素が強まった。
 アシッド・マザーズが関西系のバンドと感じるのはアルバムの構成における丁寧なバランス感覚。すなわち良質なサービス精神の発露だ。コンセプトを敢えて絞り込まず、AMTに求められる痛快でロックな盛り上がりも忘れない。

 共通項を追いすぎると似通ったアルバムの連発になりがちだが、AMTは自己模倣にとどまらない。この辺が豊富な音楽的アイディアを持つ河端と、奔放な音楽的したたかさを発露する津山。双方の才能を並列させた盤と思う。
 ぶれずにシンセを漂わせる東の力ももちろん。本盤にのみ限ると、ドラムの存在感は薄い。

 (1)はシンセが漂い、コットンのつぶやきに導かれてAMTのジャムに突き進んだ。ギターが炸裂し、ボーカルのエコーが飛び交いシンセが蠢く。
 このあとは津山の要素が強く出た。(2)は津山の爪弾きに導かれ、多重録音のファルセットや高音で、60年代米アイドル・ポップ風のメロディを紡いだ。初期ザッパのルーベン&ジェッツみたいなR&B要素も感じるが。タイトルの"Suzie Sixteen"はスージー・クリームチーズにかけてる、とか。
 英語っぽいハナモゲラなボーカルと、猫の鳴き声を混ぜた津山の歌声がおもしろい。エコーをどっぷり噛ませて、サイケな要素を出した。

 一転してイギリス風味な(3)。初期ピンク・フロイドや、トラッドに影響受けたサイケ・バンドを連想する。男女デュオでしとやかなメロディを歌う。コットンはきれいな喉を披露するが、津山はつぶやき気味でヘロったムードが強い。数本のエレキギターと、シンセがヒヨっとオブリで彩った。
 基調はアコギの弾き語り風ながら、じわじわっとシンセが高まり酩酊感を強調がAMT風の味付けだ。単音リフからシンセが濃厚に充満する後半の即興部分がスペイシーで気持ちいい。
 
 (4)もアコギの弾き語りが基調。河端の尺八めいたフルートが強くサウンドを飾り、東のシンセが静かに彩った。
 サイケ・フォークな雰囲気で、津山がボーカルを載せる。でもメインはフルートかな。後半はコットンのハーモニーも加わった。
 サンフランシスコなアシッド・サイケともトラッドともとれる雰囲気。コラージュのようにところどころで楽想が変わっていく。

 (5)は25分にも及ぶブルージーなジャム。AMTの盛り上がり路線。タイトルはデッドにひっかけか。まずはコットンのボーカルを前に立てて、ジェファーソン・エアプレインあたりに通じるサイケ・ロックから幕開け。
 河端のギターが噴出し、一気に豪快な突き進むAMTのサウンドが始まった。みっちり詰まった音像が提示される。
 (2)~(4)の路線でまとめず、期待に応える(5)を同じアルバムに入れるあたりが、本項冒頭に書いた「サービス精神の発露」ってとこ。たぶん東京のバンドなら、こういうバランスはとらない。(2)~(4)の路線でまとめるだろう。一年に一枚、な限られたリリースでなく、年に何枚も出すスタイルなのだから。

 (6)も18分越えの長尺。河端のソロっぽい。
 エレキギターのディレイ処理が白玉中心にドローン処理された。これも英国趣味な感じ。70年代プログレのような。シンセも加わっているのかな?エレキギターの多重処理か、サンプリング・ループに音を重ねてるようにも聴こえる。
 残響の連続が壮大に広がり、酩酊感を含ませて高まっていく。これはこれで気持ちいい。緩やかな高音の万華鏡だ。

Track listing:
1 Daddy's Bare Meat 8:20
2 Suzie Sixteen 4:36
3 Hello Good Child 8:01
4 The Assassin's Beautiful Daughter 9:02
5 Dark Star Blues 25:13
6 The Transmigration Of Hop Heads 18:25

Personnel:
河端一 : electric guitars, electric sitar, hammond organ, electronics, voice, speed guru
津山篤 : monster bass, vocals, acoustic guitar, electric guitar, recorder, cosmic joker
東洋之 : synthesizer, dancin`king
小泉一 : drums, sleeping monk
Cotton Casino : vocals, beer & cigarettes

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