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Ducks: Live in NYC (2011:Ohm Resistance)

 若干籠り気味だがミックスのおかげでドラムも埋もれず、メリハリと迫力ある記録となった。

 ハンガリーのドラマー、バラス・パンディと共演を始めた初期のライブ音源。本盤の前に"Live at Fluc Wanne, Vienna, 2010/05/18"(2010)もLP限定でリリースされた。
 本盤はその4ヶ月後に行われたライブ音源。ミックスはNYで活躍するKurt Gluckの別名、Submerged。メリハリある硬質なミックスが行われた。

 ジャケットはアヒルを使いメルツバウの動物愛護シリーズと位置付けられるが、クレジット上は特にコンセプトや制作へ秋田昌美は絡んでなさそう。ライブのデータを元に、レコード会社側のスタッフが盤をまとめたっぽい。

 トラックは5つに切られたが、実際のライブ音源で区切りいいところにトラック入れたに過ぎない。長尺一本でなく、こういうほうがメリハリつけて聴けるので、ぼくは好み。
 メルツバウはラップトップと自作ノイズマシンで、アナログとデジタル双方のハーシュを重ねる。シンセなど音色も工夫つけた。
 パンディはドラムを乱打。クレジットには"any kind of drums, broken drumsticks fixed with tape, and cracked cymbals. Fuck your endorsement deals. "とある。折れたスティックのテープ補修や割れたシンバルを使うのは、パンキッシュな主張。エンドース契約で潤沢に機材が入る有名ドラマーへの皮肉も込めた。

  NYのLe Poisson Rougeにて、2010年9月26日のライブ。(3)で一区切り付き、観客の歓声が飛ぶ。盛り上がってる。

<全曲紹介>

1. 1 3:12

 いきなりハイテンションのタム連打とハーシュ・ノイズのそそり立ち。ノイズ成分を後ろに回し、ドラムを立てるミックスで迫力を強調した。かっこいい幕開けだ。
 若干のリズム変化はあるが、一定のビートでメカニカルに迫る。途中で連打がサンプリングされ、別のドラムが鳴ってるようにも聴こえる。ハーシュのうねりがドラムに混ざったか。

2. 2 9:11

 パンディの見せ場な(1)から、メルツバウのソロ、みたいな(2)につながる。
 どろどろと唸る低音へ、新たにいくつかのハーシュが突き刺さった。浮かび上がり、すぐに沈む。テンションは一定、じわじわと風景が変わっていく。
 明確な場面のつぎはぎでなく、緩やかな描写の変更だ。

 ひとしきりノイズが続いたあと、大きい波のようにドラムが加わる。シンバルとスネア・ロール、タムの一打。メリハリつけた太鼓でドラマ性を作った。
 メルツバウはいったん音を静め、仕切り直しで新たなノイズを産みだす。

 ドラムは叩きっぱなしではない。味付けとしてノイズに降りかかる。あくまで本トラックでは、メルツバウの濃密で細かく奥行き深い電子ノイズの網が広がった。先を見通せぬ吹き荒びが充満した。

3. 3 5:26

 シンセの電子音がぴゅぴゅっと飛び、ツーバス踏み鳴らしのドラム乱打で本トラックへ移った。メルツバウはシンセにじわじわと軸足をずらしていく。
 シンバルの拍頭が4拍子を刻み、ツーバスは8分音符で踏み鳴らし。合間にスネアが荒々しく打ち鳴らされた。

 パンディのドラムは常にハイテンションが続かない。息切れのようにスッと手数を落とし、緩やかな打音に変わる。いっぽうでメルツバウは音を足して分厚さを増した。
 一呼吸置いたパンディは、またテンポを上げる。変拍子や乱打に向かわず、どこか4拍子の明確なビート感が残るドラミングだ。

 ひとしきりパンディのドラムが続き、シンバル・ロールからタム回しへ。メルツバウの音も整理されていく。軋むうねりが細く鳴り、ざわついて終焉へ。 
 ここまでが一曲。歓声が沸く。

4. 4 3:48

 間をおかずパンディのタム・ロール。完全ソロでドラムが疾走する。やはり4拍子を意識してる。ときおり全休符を入れ、見栄を切るかのよう。観客の歓声が入った。
 パワフルなフロア・タムの低音が地を響かせる。

5. 5 21:59
 
 ドラム・ロールが続くなか、メルツバウのソロが入って曲が変わる。ここからアナログではB面。こちらも数トラックに切れるメリハリあるが、なぜか22分の長尺に仕立てた。
 アナログならトラック数は関係ないし、こっちもせっかくなら数本に切ってもいいのに。

 シンセのはじける発信音がメインで、メルツバウはハーシュを出さない。ドラムと電子音のシンプルな対比構造な音像となった。特にシンセがドラムへクッキリ絡んだり、やり取りあるわけではないが。
 逆にパンディもメルツバウに釣られず、マイペースで叩いてる。

 新たに涼しげな響きが一本。さらに一本。電子音が飛び出してきた。
 倍テンポでドラムが迫り、電子音の揺らぎと微妙にずらして煽る。シンセがうねり、ドラムが轟きグルーヴを作った。この辺が本盤の聴きどころ。6分ぐらいの箇所。
 リズミックなシンセの沸き立つタイミングが、ドラムと溶けて面白いモアレを作った。

 8分45秒。ハーシュが力強く溢れた。ドラムの明瞭なビートが小気味よく響き、爽快な流れを作る。祭り拍子みたいな明るいムードも。
 だが数分で2バスが目立ち、一転して風景は暗さを増した。この辺の変化も面白い。

 力尽きたパンディの間を取り、ハーシュが力を増す。デジタルのようにくっきりした風合いだ。律儀に4拍子を拍頭で刻むパンディ。メルツバウは奔放にノイズを降り注ぐ。フィルター処理され滝のように埋め尽くした。

 奔出するノイズとドラム・ロール。次第に寂し気な空気をまとった。17分過ぎ。轟音だとしても、どこか変化に力がない。
 最後に力を振り絞るかの如く、ドラムが暴れた。ノイズはシンセも含み分厚く広がる。ノイズが激しく空気を揺らし、切り落としで幕。

Recorded live in Le Poisson Rouge, NYC on 2010/09/26.
Mixed at Next Door To Revolution Sound, Brooklyn, NY.
Mixed By Submerged

Drums : Balazs Pandi
Instruments [Handmade], Effects [Various], Computers : Masami Akita

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