Crimson Jazz Trio 「King Crimson Songbook, Volume One」(2005)

 キング・クリムゾンのジャズ解釈。ゲテモノと想像したが、これはこれ、で楽しめた。

 イアン・ウォーレスが立ち上げたため、少し無理があるけれどクリムゾン派生バンドとも位置付けられるとこがミソ。
 本盤が1stで、09年に2ndを発表後にウォーレスが他界、遺作となった。

 クリムゾンは誰のものか。ほぼ、フリップの所有物と言っていい。法的解釈でなく音楽性、って意味で。他のメンバーがそれぞれの時期で貢献はしてるけれど、フリップ抜きのクリムゾンはどこか虎の威を借る懐メロか商売目当てな香りがしてしまう。

 ピアノ・トリオ編成で、フリップは全く絡まず。アレンジは三人で行っており、録音はベースのTim Landers。ミックスはウォーレスが行う低予算で宅録めいた製作体制からしても、本盤を全く期待せず聴いた。

 なおメンバーのTim Landersはアメリカ人で80年代にBilly Cobham's Glass Menagerieのメンバー。元はスタジオ・ミュージシャンとしてアル・ディ・メオラやリー・リトナーなどフュージョンやポップスのアルバムに参加してきた。

 Jody Nardoneもアメリカ人。ピアノに歌もこなしブライアン・セッツァーの盤にクレジットあった。90年代後半からアルバムにクレジットあり、本盤発売時は売り出し中の立場だったのかも。

 そしてウォーレス。クリムゾン在籍は71-72年。実質は"Islands"(1971)のみ、ツアーで"Earthbound"(1972)ほかライブ盤に名前があるていど。雇われのイメージが強く、クリムゾンで商売されてもなあ。
 ・・・と思ったが。(1)のたるいイントロで「ケッ」と思ったが、途中でテンポアップするアレンジで、原曲をなぞりつつもストレート・アヘッドなジャズを提示するスタイルで「けっこう悪くない」と印象が良くなった。

 クリムゾンをジャズ・カバーに、何の期待を持つか。原曲をなぞるなら、クリムゾンを聴けばいい。崩しまくりのカバーならクリムゾンである必要はない。
 昔、渋さ知らズが植村昌弘のアレンジで"Red"をカバーしたように、原曲の味わいをたっぷり含みつつも、異なるダイナミズムを与えてくれるのが良い塩梅のバランス。それがぼくの好み。
 
 その観点で、この盤はけっこういい感じ。ピアノ・トリオ編成じゃ音が薄いかと思ったが、ベースやドラムのミックスを強めに立てて、鋭利ですっきりしたサウンドを作った。
 カチカチに原曲に引きずられず、アドリブ部分を織り込みジャズの要素も忘れてない。
 ピアノがあまり我を出さず、バッキングとメロディを滑らかに弾いてるのもポイント。
 クリムゾンの求道性がけっこう前に出た印象なのも、ピアノの鳴りが静かめなせい。ブルージーさやスイング成分は曲によって込め方が違う。(1)みたいに欧州ジャズっぽく仕立てたり、(5)はがっつりファンキーになってる。
 その点、クリムゾンとジャズの立ち位置バランス感覚にもバラエティさを持たせ、むやみにどちらかへ引きずり込もうとしてない。


 収録は8曲。1st"宮殿"(1969)から(1)(6)、"In The Wake Of Poseidon"(1970)から(3)。
 "Islands"(1971)から(5)、"Red"(1974)から(4)(7)。
 "Discipline"(1981)から(8)、"Three Of A Perfect Pair"(1984)から(2)。
 オールド・タイムなファンに応えつつ、まんべんない選曲。参加した"Islands"からは地味なところを選び、80年代クリムゾンへも目配りと、なんともバラエティに富んだ選曲だ。
 
 なお本盤でも"Red"をカバー。ピアノ・トリオで無理あるだろ、と思ったら。予想以上に和音感がピアノ一台とベース一本で出せていた。もちろんダビング無しだ。
 コンパクトな感じだが低音効かせて迫力も滲ませる。アレンジってすごいな。

 そりゃあ総じて、クリムゾンをまず聴いたほうがいい。でも本盤も素直に楽しめた。商売っ気やお仕事カバーさが希薄だから。

Track listing:
1 21st Century Schizoid Man 6:53
2 Three Of A Perfect Pair 6:11
3 Catfood 6:19
4 Starless 10:40
5 Ladies Of The Road 6:44
6 I Talk To The Wind 9:56
7 Red 5:59
8 Matte Kudasai 9:07

Personnel:
Arranged By - Crimson Jazz Trio
Drums [Drumset], Producer, Mixed By - Ian Wallace
Bass Guitar [Fretless], Engineer, Recorded By - Tim Landers
Piano [Acoustic Grand] - Jody Nardone

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