TZ 7077:Charles Wuorinen "Lepton"(2002)

 数値的だがメロディ感を失わない明瞭さがコンセプトという。それがプログレ的に盛り上がった。

 チャールズ・ウォリネンは38年NY生まれの現代音楽家で、本作は4曲を収録。69年と89年の旧作と、97年と98年の発売当時に比較的な新作を、本盤に収めた。
"Time's Encomium"はたぶん69年ノンサッチ盤LPの再録。あとは本盤が初音源化かな。この曲は彼の初期代表作っぽい。
 
 "Time's Encomium"が自らの電子音楽。"Lepton"はピアノ、チェレスタ、ハープの室内楽。"New York Notes"はピアノやパーカッションを含む七重奏の室内楽。"Epithalamium"はトランペット二本の楽曲で、どれもさまざまな団体や演奏家から委嘱作となる。きちんとビジネスが成立している点が興味深い。決して象牙の塔でこつこつと作曲ではない。

 ウォリネンの作品で特徴はWikiによると「音列やピッチの合理的な制御(略)は「フラクタル幾何学」の厳密な適用」という数学的なアプローチでらしい。すなわちセリー音楽のようにルールを決めた上でメカニカルな組み立てで作曲だろう。

 具体的には例えばマンデルブロ集合の採用。これは複素数の集合の一種で充填ジュリア集合の指標である。原点を含むカージオイドに無数の円が外接がマンデルブロ集合の面積の大半を占めている。
 ・・・もちろん何をコピペしてるか、全くわかっていない。数学は難しい。

 ということで本盤。(1)が顕著だが無機質なメロディが中心。けれどもどこか、楽曲に隙がある。突飛な跳躍を旋律が行いながらも、ぎりぎり情緒が小指の爪の先くらい残った。
 "New York Notes"が最も顕著だ。硬質なメロディだがアンサンブルが持つ音色の柔らかさが鋭さを和らげてる。特段のハイトーンや低音を使わず、不協和音もひどくないせいもあり。
 スピーディに進む旋律は緊張感は強圧でなく、ザッパ的なスリルで聴ける。指揮でクレジットのウォリネンはシンセも弾いてるらしく、ときどき電子音も登場。それがクラシック寄りの堅苦しさと、プログレ的な盛り上がりを作った。
 ハリウッドのアクション映画でBGMにも成立しそう。

 順番が前後したが、最初の"Time's Encomium"は古めかしい電子音自体が、今聴くとキュートだ。うねうねと動くメロディは唐突でとりとめない展開ながら、テクノ・アンビエントとしても聴ける。音色が尖っており、音量下げたほうが良いけれど。

 "Lepton"は"Time's Encomium"の世界観を、アコースティックな鍵盤のアンサンブルで作った。理知的なムードだし、硬い味わい。けれども音色は鋭角な当時の電子音に比べたら、チェレスタすらもわずかに柔らかい。
 混沌を美しく描いた。意外とじんわり、ポップさがにじむ。

 "Epithalamium"は古代ギリシア人の祝婚歌を指す言葉。厳かな旋律が時々震えながら、絡み合う。ハイトーンと低音の役割を二本のトランペットが吹き分けた。
 親しみを欠くが緩やかな旋律は、古代の神秘性と素朴さを表現してるようで、興味深い。これも面白く聴けた。
 
 セリー音楽は美しさに厳しい緊張を持ってるイメージあり。時に無機質さこそを追求してるような。だが本盤ではじんわりと親しみやすさをにじませ続けている。
 どの曲もジャズ的な躍動感は無いけれど、浮遊感が漂って悪くない。

Track listing:
 Time's Encomium
1 Part I 14:54
2 Part II 16:46
3 Lepton 9:05
 New York Notes
4 Part I 8:35
5 Part II 8:02
6 Part III 8:26
7 Epithalamium 5:49

Personnel:
Synthesized Sound - Charles Wuorinen(1~2)

Celesta - Sven Thomas Kiebler (3)
Harp - Virginie Tarrete (3)
Piano - James Avery (3)

Conductor - Charles Wuorinen (4~6)
Piano - James Winn (4~6)
Cello - Fred Sherry (4~6)
Clarinet - Todd Palmer (4~6)
Flute - David Fedele (4~6)
Timpani, Glockenspiel - Daniel Kennedy (4~6)
Vibraphone, Marimba - Jeffrey Milarsky (4~6)
Violin - Rolf Schulte (4~6)

Trumpet - Paul Christopher Gekker (7), Mark Gould (7)

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