杉本拓 「OPPOSITE」(1998)

 静かで抽象的なエレキギターのソロ。比較的、音がある。

 杉本拓はヴァンデルヴァイザー楽派に通じる、無音と小さな音に拘った作品が膨大にある。たまにBGMで流すと、空白の合間に音が出る特異な構造が、ランダムな水琴窟みたいで心地よくくつろげる。相対したら飽きるが。
 やはりライブで「いつ音を出すんだろう」「俺が動いてノイズを出しちゃまずいよな」と緊張してるのが、音楽へのめりこめる。

 疲れた耳に一番心地よいのは無音だ。静寂ではなく、あたりの音をかき消しはしない。ノイズの中で、ふっと流れる音。いつもではないが、たまにはそういう音楽が欲しくなる。

 といいつつ、本盤はまだ音の比率が多い。爪弾き、残響、余韻、静寂。ハーモニクスとプリペアードの異物感。それらが淡々と響く。小さな音で、でかいボリュームで、どちらで聴いてみるのも一興だ。
 小さい音なら瞑想と追求を音に求め、でかいボリュームだとアンプの唸りや空気のざらつきまでもが聴こえる気がする。そしてギターの弦が震え、プリペアードか何かに共鳴するか細い震えも。

 本盤は全20曲と短い作品をいっぱい収めた。作曲としてルールやロジックがあるのかもしれないが、ぼんやり聴いてるだけでは規則性まで頭に入らない。
 かき鳴らしでなく、爪弾き。ランダムな弦のはじきではなく、明確な譜面がありそう。

 東京のGalerie de Café Denで97年4月の24、25、29日に録音された。ライブなのか、観客を入れずに収録かは不明。2000枚限定盤で、マーケットプレイスでは3万円越えと、とんでもないプレミア値段のみ出品されている。
 しかしAmazonみたらMP3で容易に音源は入手可能だった。
 
 
 寛ぎの時間を過ごすには、意外と音が多い。変な言い方だが。杉本拓の入門盤にちょうどいいかも。無音と退屈を操る世界感のコンパクトなショーケースにもたりうる。
 もちろん音楽として、伸びるサスティンと無機質な音列が産む酩酊感も楽しめる。

Track listing:
1. Mirrors (1:08)
2. Bells of ... (4:05)
3. Flagments of Happiness (1:35)
4. Spoon River 1 (3:57)
5. Spring (3:22)
6. Midnoon (1:44)
7. Opposite (0:46)
8. Subtle (1:37)
9. Birds of Afternoon (1:32)
10. Stained Glass Windows (1:21)
11. A Narrow Path (1:32)
12. Transylvania (2:34)
13. Paris (1:31)
14. Spoon River II (3:17)
15. Monad (8:49)
16. Treading (2:22)
17. Pale Light (1:33)
18. A Day Book (2:04)
19. At the Corner (2:01)
20. To Ward (1:11)

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