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Prince 「Xpectation」(2003)

 穏やかなフュージョン風インスト。ジャズ志向だがアドリブよりアンサンブルを重視した。

 03年1月1日にプリンスが当時の公式サイトNPG Music Clubから無料配信した。
 当時のメールは残っていないけれど正月早々、半信半疑でWebへアクセスして無事に落とせるかドキドキしてたことを思い出す。その時の日記がこちら。一番下に1月1日、本盤について書いていた。

 当時の発想では突飛なリリース形態の上、プリンスの思い付きでいつ「やーめた」となるかわからない。さらにWeb回線も細かったから、落とすのにけっこう時間かかったような。そもそもNPG Music Clubからして、運営も怪しかったし。セキュリティ的に危険というよりも、安定ダウンロードが保証されない危なっかしさって意味で。

 ピアノ弾き語り的な"One Nite Alone..."が02年の5月、3枚組Box"One Nite Alone... Live!"は、02年の年末。どんだけ出すんだ、と思ったっけ。
 本盤の内容は全曲がインスト。正直、拍子抜けだった。マッドハウスの新譜と考えればいいのだが。"N.E.W.S."(2003)がリリースは、同年の6月。ファンキーさ、ファンクネスとはちょっと違う。グルーヴィさはちょっと控えた。この当時のプリンスはインストのラウンジ音楽に傾倒してたのだろうか。

 "N.E.W.S."はベーシック・リズムのセッション音源へ、プリンスが山のように鍵盤やギターをダビングしたアルバム。だが本盤"Xpectation"はもっとコントロールされてる。
 John blackwell(ds)とRhonda Smiti(b)はそのままに、サックスは新鋭キャンディ・ダルファーを起用。さらにバイオリンでVanessa Maeをフィーチュアした。

 各曲のタイトルも謎めいている。リリース当時、発表されていたまま、2018年の配信時に正式タイトルとなった。語呂合わせでexをXと書くことを共通させ、思いついた単語を羅列しただけにも見える。
 タイトルはどれも精神世界的な文言だが、「ふと思い立って仮説と研究を重ね宇宙旅行へ旅立つ」ってストーリーをアルバムに込めたのかもしれない。
 
 曲はギターと鍵盤が並列しており、あとから膨大なダビングを施した。オーケストレーションではなく、単独の弦やサックスも重ねられており、譜面もしくはかっちり段取りを決めて録音したインストかもしれない。それはそれでプリンスらしくもない。
 なお鋭角的なドラム演奏だから、プリンスも叩いてる可能性あり。ネットに流れる情報では、彼が弾くのは鍵盤とギターだけと言われているけれど。

 (1)はディレイが揺れるローズの演奏をバックに、エキゾティックなバイオリンが絡む。穏やかで広がりのあるオープニングだ。
 すっとフェイドアウトして、同じ鍵盤が仕切り直す(2)へ。ただしドラムが軽く刻み、ベースも加わってサックスが乗る。(1)をさらにジャジーに仕立てた。ビブラフォン音色の鍵盤による静かなアドリブに行った。
 サックスからフルートにソロが回されるが、背後に数本のサックスがダビングされ、コンボ演奏めいてキッチリ構成されている。そもそもホーンはすべて、ダビングのようだ。

 間をおかず鍵盤とリズム隊、フルートとバイオリンが小気味よいメロディを奏でる(3)が始まる。今度もアドリブは鍵盤から。跳ねるフレーズは妙にこじんまり。フルートとバイオリンが同じ譜割でカウンターを入れた。正直、今一つ覇気がない。
 メロディは鍵盤とバイオリン、フルートで弾き継がれる構成は整っているけれど。アドリブはバイオリンにも回る。重音の部分はダビングだろう。一本のバイオリンがフワッと膨らんだ。
 短いサックスのフレーズから、再び鍵盤に、そしてサックスへ小刻みにアドリブが移った。ここでのアルトサックス・ソロは意外と尺を確保してる。

 ファンキーなイントロの(4)でギター風な鍵盤の登場。ワウを効かせた。アレンジをギターと鍵盤で、使い分ける趣向かな?エレピもきっちりバッキングあり。すなわちプリンスがダビングを行っており、ジャム・セッションそのままではない。
 ドラムが派手にフィルを入れ、マッドハウス直系の荒々しい流儀には、この曲が最も近い。
 サックスは数本ダビングされ、ホーン隊風に音を響かせた。アドリブは味付けであり、曲の肝はドラムのフィルとテーマ・リフの応酬だ。

 (5)はハイ・ポジションのベースがイントロを紡ぐ。鍵盤が一鳴りしてドラムも加わり、サックスへ。スムーズ・ジャズだな、いかにも。プリンスは怒涛のファンクとは別に、こういう滑らかな楽想も実は好きだったらしい。
 サックスがサブ・トーンを滲ませながらソロを取り、エレピがオブリを入れた。これは地味だがロマンティックな曲。

 (6)でバイオリンが復活する。ストリングス音色はシンセでなく、バイオリンの多重録音か。
 これもマッドハウス的に性急なテーマを持つ。鍵盤は和音キープ、ギターが目立つ曲だ。バイオリンと鍵盤がユニゾンで動き、ギターがカウンターを入れる。
 そしてサックスからギターのソロへ。短い曲のわりにめまぐるしく細かいアレンジだ。鍵盤を多用する本盤だが、ここでのギター・ソロはスピーディに跳ねてかっこいい。歪ませずブライトな音色で奏でた。
 
 (7)は乾いた鋭角なエイトビートのドラムに絡む、ギターやサックス。スネアのエレクトリック・ドラム風音色は、ダビングに聴こえてしまう。この曲は特にプリンスのドラムっぽい。
 ムードを単一にして、ファンクのままでサックスとギターがソロを取る。
 なお(7)や(8)はわざとアナログのスクラッチ・ノイズも足して、古めかしさを強調した。

 (8)は静かなギターを前面に出したジャジーな曲。鍵盤も含むリズム隊が、そっとグルーヴを零した。ベースや鍵盤が入れるオブリが効果的。
 ベーシック・トラックを作って、プリンスが鍵盤やギターをダビングかな。鍵盤の音色に共通性はあるものの、この盤の中では少し雰囲気が違う。本盤で最もセッションめいたアレンジだ。

 最終曲の(9)。8分と最も長く、ドラムのソロで幕を開けた。ベースが這い、鍵盤は短いフレーズでビートを強調した。アドリブは重たい響きのギター。小さくバイオリンがオブリを入れる。中盤でも鍵盤やギターが暴れた。
 ベースのランニングがジャズっぽいが、全体のイメージはファンク寄り。
 数本ダビングのホーン隊が加わり、バイオリンが炸裂するあたりはR&B風だ。いかにもアフターショーで盛り上がりが似合う。リフは各楽器が譜割を揃えた。

 個々に感想を書いたように、根底から滲むファンクネスにプリンス色を感じるものの、仕上がりは無記名なフュージョン寄りのスムーズなサウンドである。レコーディングとしては手をかけてるけれど、アイディア一発の作品、かな。

 2018年の配信まで公式にリリースされることなく、お蔵入りの音源になっていた。
 (3)や(4)は10年後、02~03年のアフターショーで取り上げられており。プリンスの中で本盤のことを全く忘れ去ってはいなかったようだ。
 Prince Vaultによれば、"Xenophobia"("One Nite Alone... Live!"に収録)を冒頭に置いた全10曲の企画もあったそう。この曲はスタジオ盤が未発表のまま今に至っている。せっかくなら10曲入りで、プリンスの編集による"One Nite Alone... Live!"とつながる形にて聴いてもみたかった。

 徹底的にコントロールされながらもアドリブ・セッションに思える本盤と、セッションが元ながら後付けで構築を重ねた"N.E.W.S."。
これら二つのアルバムが対比構造にも、なっていそう。

Track listing:
01 "Xhalation" -Something,such as air or vapor,that is exhaled
02 "Xcogitate" -To consider or think(something) out carefully and thoroughly
03 "Xemplify" -To illustrate or serve as an example 
04 "Xpectation" -The expected value of a random variable,Eager anticipation 
05 "Xotica"  -Curiosly unusal or excitngly strange
06 "Xogenous" -Drived or developed from outside the body,originating extenally
07 "Xpand"   -To increase the size,bolume,quantity,or scope of;enlarge
08 "Xosphere"  -The outermost region of a planet`s atmosphere
09 "Xpedition" -A Journey undertaken by a group of people with a definite objective

Personnel:
Prince - Key,G
Candy Dulfer - sax
John blackwell - ds
Vanessa Mae - vln
Rhonda Smiti - b

*加筆訂正の上、再アップ。

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