Ingrid Chavez 「May 19, 1992」(1991)

 ポエトリー・リーディングにプリンスが音を載せた異色の盤。

 イングリッド・シャヴェイズの1stで5曲にプリンスが関与している。曲提供というより朗読に音を載せており、普通の曲を期待したら当て外れ。ソウルフルな要素は皆無。

 そもそもプリンスの場合は音楽的な才能とは別次元も、ガールフレンドって要素がアルバム・リリースに係わる。プリンスからとシンガーがわ、双方の。本盤もそんな一枚ではないか。
 気まぐれのやっつけ仕事?アルバム一枚を作るほど、プリンスが乗らなかっただけ?ガールフレンドの関係が終わり、腰砕けのアルバムになったのか。
 
 86年頃にシャヴェイズのデモテープが、プリンスとのきっかけらしい。87年頃から活動を共にし、87年と89年に彼女のためのセッションが行われたと言われる。

 本盤に収録はすべて87年の録音。
 他にも"Crystal City Cry","Touch Of Love","Blue Boy","Standing In The Rain","Cross The Line"と6曲が未発表曲としてPrince Vaultに記載された。
 89年録音と言われる未発表曲"Seven Corners"は、ブートで流出あり。
 
 プリンスとのセッションだけで、アルバム一枚できるボリュームありそう。本盤の発売レーベルはペイズリー・パーク。いちおう最後までプリンスは面倒を見てる。
 ならばなぜ音楽も、プリンス色に染めなかったか。シャヴェイズが上昇志向で他のミュージシャンとの楽曲も入れたくなったか。

 本盤のプロデューサー・クレジットは、3種類ある。
 プリンスがペイズリー・パーク名義で、(1)(4)(5)(7)(11)。リーヴァイ・シーサーJr.名義が(10)。
 残る曲、もう一人の名義がMichael Koppelman。(2)(6) はシャヴェイズも共同プロデュースでクレジットあり。
 このKoppelmanは、90年代初頭のプリンス付きエンジニアを務めた。

 クレジットを信用するならプリンスが5曲のみだが。昔のTimesのごとくプリンス制作を他人名義で適当に割り振ったか。シャヴェイズが自由に動いたのか。どっちだろう。
 サウンドを聴くと、どっちにも取れる。ペイズリー・パーク名義はプリンス色が強いけれど、他の曲もプリンスが弾いてたっておかしくない。

 ちょっとサウンドが軽めだけども、この当時は単調な打ち込みにプリンスは傾倒してたしなあ。
 たとえば(4)。シンセが漂う軽みはビートのノリやアレンジの弾みっぷりから、プリンスっぽいと言える。浮遊感だって、いかにもプリンス。

 だがたとえばKoppelmanがクレジットの(8)。全くプリンスが関与無しと断言できるか。鋭角なビート、クリアなエレキギターは確かにプリンスっぽくはない。
 でも同じKoppelmanがプロデュースとある(10)のファンキーなノリは、プリンスの手すさびって可能性もありそうじゃない?

 しかしそもそも本盤の根底はポエトリー・リーディング。ラップのようなリズムやトラックへ引っかかるフロウのセンスは希薄。まったく無機質な朗読や、不思議ちゃん系の夢見心地な世界でもないが。
 シャヴェイズが自分の世界をきっちり構築している。バックの音楽はなんでもいい。エレクトロ・ビートの本盤はハマってるけれど、アコースティック・ピアノのインプロでも成立したろう。

 不思議な盤だ。なぜプリンスは最後まで、サウンド関与の味を残さなかったのか。売り上げを意識ならば、プリンスの影響力をとことん使えばいいのに。
 ヒップホップへ急接近するきっかけにもなってたかもしれない。シャヴェイズの語りはバックビート性が皆無、思い切りドライながら。
 
 いずれにせよサウンドはラウンジ系アンビエントみたいなもの。肉感的なファンクネスは極力抑えた。"N.E.W.S"(2003)などで見られるように、プリンスの寛いだインスト趣味が全開だ。

 

Track listing:

1 Heaven Must Be Near 7:07
2 Hippy Blood 4:55
3 Candle Dance 3:43
4 Elephant Box 3:51
5 Slappy Dappy 4:05
6 Little Mama 4:57
7 Jadestone 0:44
8 Wintersong 3:53
9 Spiritual Storm 1:41
10 Sad Puppet Dance 3:51
11 Whispering Dandelions 1:59
 
 たっぷり冒頭のインタビューでプリンスとの思い出を語ってる。英語力が無くて聴き取れない・・・無念。

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