Elvis Costello 「North」(2003)

 グラモフォンからリリース、ジャジーな大人のバラードに振れたアルバム。

 コステロは上昇志向あるのかな。永遠のロッカーじゃなく、大人の音楽にも色気を出してたように見えた。古くは"King Of America"(1986)。ルーツ探しと合わせて、老成か成熟を狙ってたような。アメリカのラスベガスでディナーショーをやる、みたいなジャズ・ボーカル界の大立者を狙ってたわけじゃ無いと思うが。

 "The Juliet Letters"(1993)で、がっつり喉を震わせる大人の音楽を作って、以降はロックなアルバムとオーケストレーションで飾った盤を行き来してた風に見える。
 さらにこのころ、大規模な契約を結んでグラモフォンからもアルバム出せる体制を作り、おもむろにリリースが本盤。

 コステロは吐き出すような歌い方しかできないと思ってた初期だが、実は朗々と喉を広げる歌も行けるって実感が"The Juliet Letters"の頃。歌のうまさにしびれたが、本盤は少しメゲた。とうとうコステロもジャズ・ボーカル路線に走ったか、と。
 実際はオリジナル曲集、センチメンタルな風景を思い切り開放したアルバムながら。

 モノトーンのジャケットが寂しさを演出する。風が強く吹く寒い夜、孤独なムードだ。 
 本盤の直前に、"When I Was Cruel"(2002)の派生曲集な"Cruel Smile"(2002)。
 そして本盤の次が"The Delivery Man"(2004)でカントリーに燃えたのはいいけれど、そのあとが"Il Sogno"(2004)、"Piano Jazz: Costello/McPartland"(2005)とよくわからない盤。

 さらに"My Flame Burns Blue"(2006)と立て続けにリリースがあり、何をコステロがしたいのか、さっぱりわからなくなったのがこの時期だ。
 チャリティめいた緊急企画の"The River in Reverse"(2006)まで出て、このあたりからぼくはコステロをきちんと追えなくなった。

 本盤は盟友スティーヴ・ナイーヴを鍵盤に配置し、コンボ編成が基本となった。
 ギターを排し、ピアノを前面に置いた。あとはベースと、ドラム。
 ドラムはピーター・アースキン、ベースにマイケル・フォーマネク。一部のベースにブラッド・ジョーンズと、がっつりジャズメンで固めた。
 
 ソリストでは(2)でリー・コニッツ、(1)~(3),(9)(10)でConrad Herwig、(2)(6)(9)(11)でBill Wareなど、ホーン隊にもジャズ・ミュージシャンを配置してさりげなく豪華だ。

 曲によってはブラスや弦が甘く飾るけれど。基本はシンプルなアレンジにて、ひりひりした空気を出す。決して安易なオーケストレーション・アルバムではない。
 一曲目の冒頭でストリングスがきれいになるため、甘々なイメージが植え付けられてたな。

 ひさしぶりに聴き返して実感した。いかん、本盤を聴き誤ってた。確かにビートは静かで暴れはしない。しかしひねったコステロ節は健在だ。"The Juliet Letters"のようなコンセプトなしに、淡々とロマンティックに曲が並ぶ充実したソング・ブックだ。

 コステロは嫌味なくビブラートを効かせて、じっくりと歌う。むしろ"All This Useless Beauty"(1996)に直結、さらにあれほどアレンジに凝らず、生々しく歌う分だけ本盤のほうが良いかもしれぬ。

 メロディはきれいなものばかり。スタンダード集と言っても通じそうな、古めかしく美しさ。このメロディ・メイカーぶりを称えるべきだったか。
 そしてあまり楽曲や演奏で内にこもる雰囲気を感じ無い。パーソナルな世界を歌っているのに、なぜかぼくは聴いてて情感をむしろ抑えてる印象を受けた。

 PVがあった。ボロボロで草木と埃にまみれたピアノで、世捨て人のように歌う世界。それがイメージか。本盤に収録曲と、タイトル曲ながら本盤未収録だった2曲を貼っておく。
 


Track listing:
1. You Left Me In The Dark 3:28
2. Someone Took The Words Away 4:35
3. When Did I Stop Dreaming? 5:21
4. You Turned To Me 2:30
5. Fallen 3:11
6. When It Sings 3:55
7. Still 2:24
8. Let Me Tell You About Her 4:22
9. Can You Be True? 3:45
10. When Green Eyes Turn Blue 4:16
11. I'm In The Mood Again 2:35
12. Impatience 5:04

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