TZ 7064:David Mahler "Hearing Voices"(2001)

 声を素材の、電子音楽めいた奇妙な世界が楽しい。いわば音でのタイポグラフィ。

 本盤を作ったDavid Mahlerはシアトルが拠点の現代音楽家。70年代から活動してるらしい。
 4曲入り。それぞれ一人のインタビュー音源を素材に、ずたずたにコンピュータ処理してパーカッシブな世界を作った。フレーズをコラージュだけでなく、言葉の一音、さらに子音だけなどを抽出して、電子音のように加工した。

 即興ではなさそう。ライナーに記載の譜面は、図形描画っぽい面持ちだが緻密に構成され、タイミングや構造を定義されていそう。そもそもこういう音楽は全く無秩序には作れないのかもしれない。サンプリングを波形編集したノイズではなく、コンセプチュアルに固められているため。

 素材となった人はそれぞれSandy Silva(ダンサー),Thomas Peterson(作曲家),Matthew Stadler(小説家),Sherry Markowitz(映像作家)。
 さらに曲の構成も、それぞれの創作物を意識して作ってるようだ。ダンサーの(1)はリズミックに打音が弾け、クルクルと小刻みに言葉が切り刻まれる。
 (2)は作曲らしく和音加工されたり、サンプリング・フレーズが音程のように左右チャンネルをパンしたり、掛け合いしたり。

 (3)はダブ風処理でタイプライター風のメカニカルさを出した。言葉をなんども繰りかえし、断続的に間を置く。考えながら文章を組み立てるように。
 ピッチを変えて言葉を飛ばすのも、物語でさまざまな人格を表現する作家の特性を表現かもしれぬ。

 (4)は雑踏風のノイズと言葉から意味を排除された子音のチラつき。ブラウン管時代に映像が上下したり乱れるさまを表現かな。音が伸ばされ、弾む効果はこの曲が最も派手だ。

 アイディアは面白い。ただ、いかんせん曲が長い。(2)は6分程度だが、他の三曲は10~16分。楽曲として、不必要とは思わない。構成や流れは無いけれど、必然性ある長さだし、アイディアの面白さで飽きずに聴ける。しかしせっかくのアイディアが冗長な気もする。

 こういうセンスなら徹底的にビート性を持たせるか、もしくは「働く人たち」みたいなオムニバス式に次々と曲を並べコミカルに仕立てるほうが、アルバムとして刺激が増した。
 本盤は根底に現代音楽寄りのまじめさがあるため、そこまでエンターテイメントになっていない。

 あとは職業から連想する発想が類型的に決めつけてないか。音加工やアレンジのアイディアが、"職業に関連"のルールがあるため、音楽的に頑なだ。それぞれの曲で違う声加工を使ってるが、音楽としてはもっと自由に混ぜこぜにして欲しかった。

 この辺が本盤は堅苦しい。アイディアや音の組み立て、流れの作り方は面白いのにな。
 ヒップホップ、もしくはテクノ的なかっこよさもそこかしこにあるけれど、そのノリは根底にあるアカデミズムに潰されてしまう。音色やアイディアはとても楽しいのに。

Track listing:
1 The Priest From Cape Breton 14:54
2 A Chorale That Ludvig Lindeman Wrote 6:35
3 Wagnerian Opera 16:17
4 Who I Just Adored 10:10

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