A Fault In The Nothing (1996:Ash International)

 持続と非轟音がテーマのノイズ・コンピ、かな。メルツバウは轟音提示して、自らのスタンスをブレさせないが。

 
 音そのもので主張の最たるものがノイズ・ミュージックとも思えるのに、実際はこの分野こそがコンセプトと時代背景がついて回る。単体で成立する商業音楽よりも、アートなど文脈や主張込みで味わうほうが、聴き手に引っかかりができやすいため。
 よっぽどテクノやエレクトロニカのほうが、音だけで勝負・・・いや、あのジャンルも色んな文脈込みのほうが面白いか。

 こんな書き出しなのも、実は・・・本盤の背景を何も知りません。たまたま手に取ってメルツバウが参加を理由に問答無用で聴いたため。
 ブラック/ホワイト・ホールと題された2枚組CD。コンセプチュアルなノイズが多く、何らか理由付けなコンピって推測するが、今一つわからない。参加ミュージシャンもいわゆるノイズ文脈より、音響系もしくは電子音に拘ったメンバーっぽい。
 
 日本からはメルツバウの他に池田亮司が参加。他にパナソニック名義の最終時期なPan Sonic,Ovalなどの名前が目を引いた。
 
 ここではメルツバウを中心に、ザクッと各曲へメモしておきたい。

<曲紹介>

Black Hole
1-1 –Bernhard Günter / John Hudak The Ant Moves / The Black & Yellow Carcass / A Little Closer 28:16
 
Sounds [Materials] – Bernhard Günter, John Duncan, John Hudak
Technician [Sound Treatments, Analogue Post-production], Composed By – Bernhard Günter

 しょっぱなから単調なノイズが30分弱続く構成。この編集が取っつき悪い。ひそやかなうねりが少しづつ変化していく電化系ドローン。ボリューム上げたほうが、細かなきらめきを楽しめるのだが。音へのんびり浸ってると、次なるメルツバウのつんざきに慌てふためく羽目になる。耳が死ぬから。

 ドイツのベルナード・ギュンターと、アメリカのジョン・ハダクのデュオ名義。実際は上述のようにジョン・ダンカンも演奏に参加してる。なぜ三人名義にしないのか。
 実際はセッションの要素は無い。ギュンターの作曲を音にするため、残る二人が手を貸した構図だ。

 ギュンターはノイジシャンというよりアート寄りのインプロ系として位置づけのよう。
 
1-2 –Merzbow Sound Check For Doushisha University Performance 5:16
 Noises – Masami Akita
 Recorded and mixed at ZSF Produkt Studio November 1995

 前置き無しにノイズから始まる。機械仕掛けでアナログっぽい激しい沸き立ちだ。
 クレジットには同志社大学でパフォーマンスのサウンドチェックから、と銘打たれる一方で、録音とミックスは自宅スタジオZSFで行われたとある。現場のPAチェックでなく、事前にどんな音を出すか自宅でチェックした音源、の意味か。

 同時期の音源ならば"Green Wheels"(1995)の頃。自作の金属ノイズマシンとEMS synth Aが音素材か。
 パワフルで持続性あるノイズが、みっちり続く。同じ音の継続でなく、回転や炸裂、振動に断続と音色やアプローチが変化し続けるバラエティさを持っている。

 幕切れは唐突。さらに前後、本音源の前置きや続きのテープも存在してるんだろうな。
1-3 –Ios Smolders Prélude À L'Après Midi D'Un Phone 7:12

 オランダ出身。無音で幕を開け、断続的なガリ音などと持続する静かな響きで緩やかに音が進行する。彼もギュンターと同じくアカデミックな教育を受けた、アート寄りの人。
 静かなノイズは、奇妙な奥行きとコラージュ感で不安をあおる。

1-4 –M. Behrens Intermatter 8:41

 音の耳ざわりは前曲から地続きかのよう。静かな電子音がゆっくりふくらみ、音色を崩すように変化していく。ダイナミクスよりも持続の過程で劣化する無常さを表現した。
 ドイツ出身、電子音楽家としてクラシック系のアプローチな人か。

1-5 –Anthony Manning Untitled 5:31

 英の電子音楽家。ハーシュな響きと思わせるが、余韻を持った揺らぎが無常に漂う。抽象的な震えをじっと観察してるかのよう。

1-6 –John Duncan Trinity 10:11

 (1)にも参加なノイジシャンの単独名義。静かな前半と、ハーシュ沸き立つ後半で二部構成にした。パワー・ノイズだが淡々と一つの音を出し続けた。わずかな変化を楽しませる人か。

1-7 –Edvard Graham Lewis Bing Before Bang (Etc. Après Ski) 2:02

 英出身でワイアーのベーシスト。ここではパンクでなくノイズを追求した。ハーシュ・ノイズをばら撒く。しかしどこか空虚さが漂う脱力があり。

White Hole
2-1 –Panasonic 0- 7:15

 フィンランドのPan Sonicは三人体制の音源。無音とわずかな電子音を静かに並べ、クールな世界観を作った。盛り上がりやドラマ性を削ぎ取り、密やかな空間を描く。

2-2 –Chris Watson Tarbet Gulley 4:46

 英ノイジシャン。唸り声で猫との格闘か。フィールド・レコーディングであり、風切り音が全編に響く。これも不穏な空間をそのまま切り取っており、物語性や主張は聴き取りづらい。
 なお彼はキャバレー・ヴォルテールのメンバーでもあった。81年に脱退。

2-3 –Disinformation Theophany (Electric Storm 135 kHz VLF) 4:31

 DJセット主体のノイズらしい。ターンテーブルからノイズを引き出してるのかな。タイトルからは特定周波数を発信機みたいなもので弄ってるようにも読める。
 実際の音はガサガサいう電子音が溢れ、音量を下げれば静かに。上げれば断続的なハーシュに聴こえる。

 イギリス出身のジョー・バンクスによるソロ・プロジェクト。

2-4 –Rehberg/Bauer Nix Zwei 5:35

 Peter Rehberg, Ramon Bauerのデュオ。たぶんイギリス出身で、MEGOなどから音盤を出すインプロ系電子音楽家、でいいか。ノイジシャンとはちょっと違うような意味合いで、この肩書を使っている。要はスカムな要素が少ない、と言いたいのだが。

 淡々と電子音の持続が流れる。ざらついた響きと、透き通る一本の線がまっすぐに繋がった。曲が進むにつれ音色は派手に変わっていく。この変化で開放感を表現か。漆黒のパワーだが。 

2-5 –CM Von Hausswolff Hzz (Poly Populated DNA Fuse) 3:31

 スウェーデンの現代音楽家。金物を叩く音と電子音をコラージュした作品。ノイズとも聴けるが、もっと知的なアプローチを試みてるっぽい。

2-6 –Ralf Wehowsky Deleted Beauty 7:28

 ドイツ出身の電子音楽家。静かな軋みと電子音の重ねで不穏な世界を描いた。ひそやかな理性と唐突な変貌の対比か。ストイックなノイズだ。

2-7 –Oval Smooth Space Audio 0.7b 2:56

 ドイツ出身。電子音のきらめきに着眼したエレクトロニカ。エレキギターとドラムのコラージュ、かな。メロディアスな断片がデジタル・ノイズと混在する。浮遊する危うさは小節線を全く無視した構造によるもの。
 アイディアそのものは曲中で大きく変化させず、3分ほどの作品に仕上げた。

2-8 –Daniel Menche Alpha Zilch 11:18

 アメリカのノイジシャン。多数のリリースで活発な活動を続けている。ここでは密やかなハーシュと、静けさの交錯で不安定な世界を描いた。場面ごとに音色を変えているが、あまり音を足さずシンプルな構造を狙ってる。

2-9 –池田亮司 Untitled 071295 6:01

 電子音の平たい川。冒頭はざわめきが入るものの、あとは酩酊感漂う高音がひたすら続く。倍音を読み取り、酔ってきた。この危うさがスリル。

2-10 –Achim Wollscheid 10 Out Of 60 9:57

 ドイツのベテラン、S.B.O.T.H.I.の主催者がハーシュノイズをばら撒いた。語りを右チャンネル、ノイズを左に定位させ奇妙な対比構造を作る。後半で日本語の語りも現れ、妙な意味性を持つのがスカム感あり。
 もちろん日本語のセリフは妙に思わせぶりだが意味はなさそう。沈黙について延々と語る一方で、反対側ではハーシュ。意味を分かった上でセリフをダビングか?少なくとも日本語の発音は妙に古めかしく、60年代あたりの音源をサンプリングにも思えるのだが。

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