TZ 7186:Greg Wall "Later Prophets"(2004)

 クレヅマーにニューウェーブの要素をほんのり混ぜたジャズ。フリー要素もあり。ドラムが素直に4ビートを刻まないせいだが。

 作曲は2と6がトラッド、あとはグレッグ・ウォールのオリジナルを演奏してる。
 本盤のあと、このアルバム・タイトルをバンド名にして"The Kook Project"(2009)をTZADIKから発表した。

 ウォールは70年代後半からアルバム・リリースのあるベテラン。フランク・ロンドンと行動を共にしており、彼のバンドHasidic New Waveのメンバーでもあった。
 オーソドックスなジャズを踏み台に、サイケな色合いが持ち味か。
 ユダヤ教への熱狂を踏まえたスピリチュアル・ジャズの側面もあるはずだが、特にリズムがかっちりコントロールされて冷静な耳ざわりが特徴だ。浮遊する場面も酩酊感より、沈着な理性の香りが常に漂う。

 ベース無しの変則トリオで、鍵盤もエレピできらびやかなレイヤーを静かに広げた。
 本盤のゲストはビーフハートのマジック・バンドに所属したゲイリー・ルーカス(g)。3と8の2曲で加わった。3はウォールとデュオ、8はこのバンドとセッションの形で。
 なおドラムのアーロン・アレキサンダーは藤井郷子のNYオーケストラに参加しており、数多くの関連盤で演奏が聴ける。鍵盤のシャイ・バシャーは参加した音盤が20枚ほど。CM音楽などが主戦場のようだ。
http://www.aaronalexander.com/
http://www.shaibachar.com/

 リズムはテンポ一定だがパターンが不定形、鍵盤もリフでなくフレーズをばら撒く形。したがってアンサンブルはとてもスリリングな展開を見せる。フュージョンめいた構築美でなく、怪しげなムードでタイトなバランスを決めるのが本盤の魅力だ。
 クレヅマー要素は常に、ではなく断片的に。あまりユダヤ人要素に頼らず、もっとロマンティックな持ち味をサックスは聴かせた。
 音使いはフリーでなくメロディアスな比率が多い。明確なストーリー性は作らないが、大きなフレージングが印象にのこる。吹き倒すより、もう少しじっくりとサックスを吹いている。

 ルーカスが参加した音源も聴きどころあり。(3)はギターがサンプリング・ディレイを流しながら音を足すスタイルで、デュオながら音のレイヤーは多い。サイケなムードが一杯だ。
 鍵盤とドラムが加わった(8)では、より混沌としたアンサンブルを展開する。

Track listing:
1. The Bones Drew Near
2. Zekial Saw the Wheel
3. Among the Exile, by the River Khiver
4. Death and Resurrection
5. Malachi
6. Stoliner Nigun
7. Ofan (a wheel within a wheel)
8. Can These Bones Come to Life?
9. Lamentation

Personnel:
Greg Wall: Tenor Sax, Clarinet
Aaron Alexander: Drums
Shai Bachar: Keyboards

Gary Lucas: Guitar

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