ZZ Top 「Eliminator」(1983)

 固定観念をモノともせず、シンセを導入した大ヒット・アルバム。時代の変遷で価値観を変えて聴ける、希少なアプローチの盤と思う。

 ZZ TOPをリアルタイムで見たジャケットは、本盤だった。PVもたぶんテレビで見たはず。髭もじゃのオヤジがギターを弾き殴るロック。もともと僕はロックが苦手なので、当時はちんぷんかんぷんだった。汗と埃っぽく、洗練無し。ぶっちゃけ、頭がそんなに良くなさそう。背伸びしたい学生時代、もっと作りこまれたポップスに惹かれた。

 だがZZ TOPは本作で大きな挑戦、すなわちシンセを導入した。今ならわかる。同時代の空気を知ってる、排他的で保守的だった当時に本アプローチは英断だった。新しもの好きの産業ロックとは違う。地に足の着いたライブ活動をベースにして、根本的にアメリカのマーケットを前提としたZZ TOP。
 彼らにとって当時一般化し始めたとはいえ、ブルーズ・ロックに異質なシンセの導入は、大きな決断だったろう。

 そしてなんだかんだ言って、大ヒット。リスナーはそんなにこだわってない、ってことが証明された。いっぽうで、あまり大胆にシンセをばら撒かなかった慎重な注意深さも勝因だろう。
 しかし当時、中学生のガキには全く何もわからなかった。その後も、ロックをあまり聴いてこず本盤はさっぱり触れず。今になって、魅力が何となくわかってきた。とはいえ頭でっかち。体感的に本盤の魅力がわかってる気はしないが。
 なおヴァン・ヘイレンが"Jump"で大幅にシンセを導入し、キーボードのかっこよさを大々的にアピールしたのは本盤の翌年になる。

 さて、本盤。8thアルバムで前作"El Loco"(1981)から2年ぶり。ヒットって意味では"Fandango!" (1975)の8年ぶりだそう。確かに83年当時、音楽シーンは浮かれてたもんな。軽薄浮薄が幅を利かせ、英豪勢も派手にアメリカシーンに乗り込んでた。そんな中、地道に自らの持ち味を生かし音楽性をぶれさせなかったZZ TOPは偉い。
 シンセは遠慮がち。リフやオカズに鳴るが、決して目立たせない。彩りていど。だから保守的な人たちも素直に本アプローチを受け入れたのかもしれない。

 シングルは(1)(2)(3)(6)(8)と多数。マイケルの"スリラー"を筆頭に、当時の流行りに習ったアルバムを丁寧に売る戦略の一環だ。

 一通り聴くと、かなり楽曲ごとでアプローチが異なる。ブギまっしぐらからブルージー、ハードロック風から産業ロック寄りなど。
 メンバーは3人でゲストを入れず。鍵盤は誰だろう。ベースのダスティ・ヒルだってクレジットも見かけたが。

 とにかくシンセの使い方がうまい。プロデューサーは前からと変わらずBill Ham。
 スタッフもメンバーも変わらずに、新しいものを導入する選択は高く評価する。新人バンドじゃない、実績あるバンドだ。ストーンズですら、新たなスタッフに協力貰う必要あった。なのに。ZZ Topは自力で新機軸へ踏み出した。8年間売れずに冒険、があったのかもしれない。
 
 アレンジの根底はギターでダビングを重ね、決してライブでそのまま再現できる3ピースの音作りではない。例えば(6)でいぎたなくシンセがリフを刻んでも、あくまで主役はギター。
 冷静に聴いたらニューウェーブ寄りの突飛なアレンジとも思える。とはいえあくまでギターリフが唸り、ギター・ソロが暴れる音像の中では、音色のつぶし具合もいい感じ。あくまで骨太のロックが成立してた。

 味付け程度がシンセの役割。このさりげなさが、実ににくい。
 (1)や(7)でシンセが鳴っても、SE気分。(7)もリズム・ボックスがチャカポコ響いたって、チープにはならない。
 (8)の拍頭4つ打ちのシンセもホーン隊の代用ともとれる。実際はモロにエレクトロ・ポップの導入だが。
 でもこれは今の耳だからな。当時、すれっからしな感覚で聴いてたら反発してたかも。産業ロック、流行りに身を売ったと。

 そういう観点で、本盤はリアルタイムと今で大きく印象が変わる。もちろんリアルタイムで聴いた時点の年齢や音楽的な蓄積にもよるが。
 
 変わらぬ魅力を持った盤、ってのもある。ポップである以上、同時代性は絶対に避けられないパラメータとはいえ。だが新機軸は数十年たった今で古びる。さらに流行や価値観は変化する。リズム感覚もアレンジも。
 本盤は今だと、硬質な80年代的なアレンジやミックスをふんだんに取り入れた。(7)で延々と続くベース・リフも12"ミックスを意識に聴こえる。

 でも根底に流れる泥臭いロック。その確かな骨組みが、ちょっとくらい暴れても本盤の魅力を減じない。
 改めて、ZZ Topの確かさを痛感させる一枚だ。・・・でも、ぼくの好みならデビュー初期の泥臭い生演奏のほうがいいかも。と、小声で言ってみる。ああ、何と保守的な俺だろう。

Track listing:
1 Gimme All Your Lovin 3:59
2 Got Me Under Pressure 3:59
3 Sharp Dressed Man 4:13
4 I Need You Tonight 6:14
5 I Got The Six 2:52
6 Legs 4:35
7 Thug 4:17
8 TV Dinners 3:50
9 Dirty Dog 4:05
10 If I Could Only Flag Her Down 3:40
11 Bad Girl 3:16

Personnel:
Bass, Vocals - Dusty Hill
Drums - Frank Beard
Guitar, Vocals - Billy Gibbons

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